
東京マルイ FA-MAS 5.56 F1
写真&解説 YAS
解説
戦後のエアガンの進化を振り返ると、いくつかの大きな出来事があり、今回紹介するのはその中でもエアガン史に最も偉大な功績を残した製品といえる。
1991年に東京マルイが発売した電動ガンの第一号機、FA-MAS 5.56 F1。
当時、電気を使用したモータードライブ方式のガスガンはWA ヤティマチックやヨネザワ MPL、MGC MP5KA4がすでに発売されていたが、東京マルイの電動ガンはガスを一切使用せず、バッテリーでモーターとギアを回し、ピストンをコッキングして圧縮エアーによる発射システムを採用した。
電動ガンのコンセプト自体は本製品以前からあり、個人レベルでのカスタムガンは作られていたが、メーカー量産品としての電動ガンはこの東京マルイのFA-MASが世界初となる。東京マルイはラジコンメーカーでもあったため、その技術を生かした製品だった。
1991年当時はガスガンが隆盛を極めていた。サバゲーでは巨大なエアータンクを背負い、ガスホースをエアガンへ繋ぎ、BV式ガスガンにカウンターウエイトを効かせ、高い圧力を掛けて重量弾をバラまいていた。
一方で電動ガンのメリットはホースのない軽快なスタイル、ガスに比べてコスパが良く、冬でも安定した作動を得られる点だったが、当初はホップアップ機構が無く、威力の弱い電動ガンに懐疑的なサバゲーマーも多かった。
しかし、1993年になると可変ホップアップ機構を搭載したFA-MAS スーパーバージョンが発売、固定式インナーバレルと相まって遠くまで真っ直ぐ飛ぶ弾道を実現した。当時その弾道性能に衝撃を受けたのを今でも覚えている。またゼンマイ給弾式の多弾数マガジンや、M16やMP5といった人気モデルが発売されると、電動ガンは瞬く間にフィールドに普及していった。
現在ではガスブローバックやHPAといった機構が再び脚光を浴びることも増えたが、東京マルイが築いた電動ガンのシステムは、電子制御やブラシレスモーター、リポバッテリー化といった進化を遂げながら現在もなお、世界中のサバゲーフィールドで活躍している。
フランス軍が採用するブルパップライフル、FA-MAS。当時国内ではほとんど無名のモデルで、トイガンとしても初のモデルアップとなった。
亜鉛ダイキャスト製のフラッシュハイダーとアウターバレル。インナーバレルはアルミ製。フロントサイトは通常用と、夜間用・グレネードサイトの二つがある。
リアサイトも二つあり、グレネード用はフリップアップさせることができ、通常/夜間用リアサイトはピープを切り替えたり上下調整できるなど、凝った造りになっている。
大きなキャリングハンドルの下には可動するコッキングレバーや回転するグレネードサイトがある。
折り畳み式の金属製バイポッドが標準装備なのも5.56 F1の特徴だ。
FA-MASではブルパップというレイアウトを活かしてストック内に電動ユニットを内蔵した。第一号機と言うこともあり、メカボックスが組み込みやすいモデルを選択したようだ。
東京マルイの電動ガンが優れていたのはメカボックスと呼ばれるピストン、ギア、モーターが一体となったユニット式であることだ。これによって多くのモデルが比較的容易に電動ガン化できるようになった。FA-MASではEG560モーターが一体となったメカボックス Ver.1がストック内に収納されている。続くM16、MP5シリーズではモーターをグリップ内に固定するVer.2となった。
もちろんタペットプレートによる可動ノズル給弾、カットオフレバーによるセミオート射撃など、画期的な構造もすでに確立していた。
本個体は東京マルイからお借りしたものだが、スーパーバージョン発売後の金型を使用して製造された製品のようで、ホップアップ機構は付いていないが、ダイヤルの穴は設けられていた。FA-MAS 5.56 F1は1996年まで可変ホップアップ化されなかった。
セレクタースイッチはストック下にあり、OFF、S(セミオート)、F(フルオート)射撃の切り替えができる。
また、逆転防止ラッチを解除してスプリングを開放するためのラッチレバーも備えていた。
トリガー前のセーフティレバーを回してハンドガードを取り外す。
ハンドガード内部にラージタイプのニッカドバッテリーを収納する。
付属する標準マガジンはスチールプレス製。スプリング給弾で装弾数は60発。のちにゼンマイ給弾式の300連多弾数マガジンもオプションで発売され一気に火力がアップした。付属のBB弾は0.2g。
8.4V 1300mAhのニッカドバッテリー『ハイパーコマンド』。ラジコンのバッテリーを転用したサンヨー製で、タミヤラージコネクタ―仕様。全長154mm、重さは328gもあった。フルセットには専用の充電器が付属し、6~7時間で満充電となる。
実射は0.2g弾、東京マルイ純正の8.4V 1300mAh ミニS ニッケル水素バッテリーにて行った。
初速は約73m/sの0.53Jほど。経年劣化もあるかもしれないが、現在の長物電動ガンからするとやや低めの初速。回転数はそこそこ高く、秒間約15発となった。
ホップアップがないので、遠距離では弾は山なりに飛んでいくが、室内8mで3cmに集弾するほどの高性能だ。トリガーレスポンスはいかにも初期の電動ガンといったトリガーを引いてから弾が発射されるまでが長いウィキュパン!という音。ピアノ線で引くタイプのトリガーのストローク長も懐かしい。
パッケージ。世界初の新機構でセミフル切り替えなどセールスポイントが細かく記載されている。マルイが加盟するASGKの認証シールも貼られている。
東京マルイの電動ガンのヒットを受け、グンゼ、JAC、マルシン、ファルコントーイ、トイテックといった国内メーカー各社も電動ガンを開発、発売するが、マルイの特許登録された電動ユニット自体の完成度の高さや、FA-MASの発売から5年間で25機種という、怒涛のラインアップといった牙城を切り崩すには及ばず、これらメーカーは電動ガンの製造から撤退することになった。
FA-MAS 5.56 F1とスーパーバージョン共通の取説。取扱説明書.PDF (10MB)
すでにM16とMP5シリーズが発売されていた1993年頃のカタログ。FA-MASカービンの発売も予定されていたが、このモデルは発売されなかった。
DATA
発売年 | 1991年4月26日 FA-MAS 5.56 F1 1993年7月1日 FA-MAS スーパーバージョン 1996年9月11日 FA-MAS 5.56 F1 HOPUP化 |
発売時価格 | ¥26,800 5.56 F1 フルセット ¥19,800 5.56 F1 本体セット ¥31,800 スーパーバージョン フルセット ¥24,800 スーパーバージョン 本体セット ¥24,800 5.56 F1 HOPUP版 |
全長 | 実測 760mm |
重量 | 実測 2,891g(バッテリー含む) |
バレル長 | 488mm |
発射方式 | 電動 8.4V 1300mAh ニッカドバッテリー |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 60発 |
初速 | 平均初速ː73.03m/s = 0.533J 回転数:880rpm = 14.7発/秒 ※気温20度、0.2g弾、8.4V 1300mAhニッスイ使用 |
撮影協力:東京マルイ
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