JAC 電動ステアーAUG/A1
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
今回紹介するのは、JACがBV式ガスガンとして発売したステアーAUGを電動化した最初の製品だ。設計はタニオコバの小林太三氏で、小林さんならではのユニークなメカが内蔵されている。エアシリンダー内のピストンを電動でコッキングする、という概念はマルイと同じだが、その駆動方法がギアではなくクランクなのだ。
電動工具のリョービと技術協力したという独特なメカで、イメージとしては蒸気機関車の車輪を思い浮かべてほしい。メカボックス内にあれと同じ車輪のような円盤状のパーツがあり、その外周部分に装着された駆動バーが回転に連動してクランク状に動く。もうひとつの支点を介してクランク運動が水平運動に変換され、ピストンをコッキングするのだ。
なんとも独創的な機構だが、撃ち味も本当に蒸気機関車のようで実に面白かった。フルオートでは「ガッシュン!ガッシュン!」という音とともに連射されるのだが、発射速度がきわめて遅く、セミオートガスガンで連射した方が早いくらいのスピードだった。
しかし、いくら撃ち味が楽しくても、実射撃性能では当時フィールドを席巻しつつあったマルイの電動ガンに敵うはずもなく、営業的には失敗作となってしまった。そして発売からわずか半年後の1994年、JACは倒産してしまう。
しかし、外観はとてもリアルなもので、各部の荒々しい質感などは実銃を彷彿とさせる出来ばえだった。何より、常に斬新なメカニズムを現実化し続けた小林さんの情熱が感じられる作品であり、これは間違いなくエアガン史上に残る怪作だと言えるだろう。
トイガン初のフルサイズ版ステアーAUGという事で、鳴り物入りのデビューをした前作のBV式ガスガン(1989年12月17日発売)に、電動ユニットを組込んだのがJAC電動ステアーAUG/A1だ。重量感や質感など実銃にせまる迫力だったが、サバゲーでの使い勝手とは必ずしも一致せず、JAC後期の迷走ぶりを象徴するような製品だった。
実銃同様にトリガーを途中まで引くとセミオート、引き切るとフルオート射撃となる。射撃に連動してイジェクションポートのダミーボルトが前後するボルト・ブローバック機能を搭載している。
金属製のアウターバレル。これ以前に発売されていたマルゼン製ブラックステアーを見慣れていたガンファンの目にはかなり太く映った。
光学照準器には亜鉛合金の湯ジワが目立つが、これがかえって実銃の荒々しさを表現しているようで評判は決して悪くなかった。スコープは素通しの透明プラ板仕様でサークルが描かれていた。
レシーバー側面のバレルロックボタンを押すと、インナーバレルごとアウターバレルをすっぽりと抜き出す事が出来る。バレル内のメンテナンスがやりやすく、電動ガンとしては画期的なデザイン。
映画『ダイ・ハード』の悪役カールがガシャンと組み立てたあのシーンを再現したくて買ったというファンも多い。
チャンバー部分にスリットが開けられ、そこから内部に突き出した鉄製の爪状パーツがBB弾を引っ掛ける事でホップをかける。SSシステムと呼ばれるJAC独自のホップ機構だが、鉄の爪がBB弾を削ってしまい、弾道は安定しなかった。
チャージングハンドルの後ろに見えるのが内蔵バッテリーで、取り外しが出来ない。今の感覚では信じられないが、充電は銃ごと行うという事になる。後に発売されたカービンモデルではレシーバーを取り外して8.4Vのニッカドバッテリーを取り外すことができた。
ゴム製のバットプレートを外すと本体内蔵バッテリーの充電コネクターが現れる。下側のコネクターは外部バッテリー用。上のU字状パーツはピストンリリースで、これを引くとコッキングされたピストンが前進位置に戻る。
シースルーマガジンには60発のBB弾が装填出来る。前作のガスガン用を流用したため仕方ないのだが、電動ガンとしては決して多くはない装弾数だ。
「注意!雨天時に屋外で使用しないで下さい!」や、「0.3gのBB弾がベスト」など、時代を感じさせるマニュアルだ。ちなみに、次期電動ガンとして94年3月にM76 SMGが発売予定されていたが、それを待たずにJACは倒産してしまう。
マニュアル.PDF (1.14MB)
DATA
発売年 | 1993年12月中旬 (ステアーAUG/A1) 1994年2月 (ステアーAUGカービン) |
発売時価格 | ¥34,900 (ステアーAUG/A1) ¥35,900 (ステアーAUGカービン) |
全長 | 実測 798mm |
重量 | 実測 3,840g |
バレル長 | 280mm(インナー) / 534mm(アウター) |
発射方式 | 電動 |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 60発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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