マルシン ベレッタM92F エレクトリック・ドライブ・システム
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
この連載をやっていると、マルシンというのは本当に革新的なメーカーなのだな、とつくづく思わずにはいられない。これまでもいくつかマルシンの斬新な製品を紹介して来たが、今回は中でもとびきりエポックメイキングな製品だ。業界初の電動ハンドガン、ベレッタM92F エレクトリック・ドライブ・システム(EDS)である。
電動ガンが普及するにつれ、このメカをハンドガンにも内包出来ないものかと誰もが考えていたはずだが、いの一番に手を挙げたマルシンの電動ハンドガンを見たユーザーや業界関係者は例外なく息を飲んだに違いない。なぜなら、バッテリーがあまりにも巨大過ぎたからである。
電動ガンを設計する上で、バッテリーの収納がネックとなるであろうことは容易に想像出来る。だがマルシンが出した答えは、あえてバッテリーを本体に収納せず、まるでレーザーエイミングモジュールであるかのように装いながら堂々と外付けする、というものだった。あまりにも奇想天外、コロンブスの卵とも言うべき斬新な発想だが、実際にオプションでレーザーサイトを装着することも可能で、考えようによっては合理的と言えなくもなかった。また、全体的なデザインも決して荒唐無稽ではなく、ひと昔前なら現実にあり得るような形状をトレースしていたのはさすがマルシンだ。
しかし、そのままではホルスターにも入らず、また実射性能が低く、当時出始めたプレシュート式ガスガンを越えるほどのメリットがなかったため、ユーザーにはほとんど受け入れられなかったようだ。最終的には各ショップで在庫処分として格安で投げ売りされるという、残念な末路をたどる結果となった。
パッと見、レーザーエイミングモジュールを装着した92Fだと言われれば納得してしまうようなデザイン。しかし、当時であってもこのスタイルは若干時代遅れだったと言わざるを得ない。
発射機構自体はグリップ内にエアシリンダーを内蔵したマルシン初代M92Fのメカが踏襲されている。マルシンはM92Fのトイガンを初めて製品化したメーカーだけに、各部のディティールに手抜きはない。
ダミーライフリングの奥に真鍮製インナーバレルが見える。バレル下のバッテリーマウントには実際にレーザーサイト T-1を装着することが出来る。
トリガーと連動してハンマーが起きるがストロークはここまで。動きもパチン!とはいかず妙にネチっこく、電気スイッチトリガーであることがよく分かる部分だ。
トリガーを引くとバレルが後座し、マガジンからBB弾を装填、トリガーを引き切るとグリップ内の電動ユニットが作動し弾を撃ち出すセミオート仕様となっている。
バッテリーはこのように取り外せる。この個体はバッテリーが不良のため残念ながら実射テストが出来なかった。
バッテリーから延びたコードを本体側のコードと接続。
これで発射準備完了。コードがもろに露出したこの状態を見れば、ガンファンにウケが悪かったのも容易に想像出来るだろう。
7.2V 600mAhのニッカドバッテリーを使用する。発売から半年後にはバッテリーパックをベルトに取り付けるベーシックセットが価格を抑えて発売された。
マガジンは伝統的なワリバシスタイル。前作のエアコッキングガンやガスガンでは金属製のリップが装備されていたが、この製品ではプラ製に変わっている。
不思議なことに本体だけではなく、パッケージのデザインもどこかあか抜けない。
マニュアルにも外付けのコードがじゃまになるであろうことを想定して書かれている部分があり、メーカーとしても承知の上だったことが分かる。manual.pdf
(5.6MB)
その後1996年にはバッテリーが一体となった30連ロングマガジンを装備したフルオート仕様のU.S.N.9mm M9"ドルフィン"が発売された。
DATA
発売年 | 1993年12月 (バッテリーマウント付モデル) 1994年春 (ベーシックセット) 1996年春 (U.S.N.M9ドルフィン) |
発売時価格 | ¥18,800 (バッテリーマウント付モデル) ¥9,800 (レーザーサイト T-1) ¥14,800 (ベーシックセット) ¥14,800 (U.S.N.M9ドルフィン) |
全長 | 実測 225mm |
重量 | 実測 713g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 電動エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 16発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
■関連リンク
ビンテージ エアガン レビュー TOP
トイガン史 1963 ~ 1993 - あるガンマニアの追憶 -
モデルガン&エアガンとトイガン業界の歴史
考察 ブローバック・ガスガン