ファルコントーイ H&K MP5K エレクトリック
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ファルコントーイはMP5を一貫してモデルアップし続けてきた。1984年に登場した初代MP5Kは、変則的な作動機構を持ったカート式エアコッキングガンだった。その後、MP5シリーズはガスガンとなり、最終的には今回紹介する電動ガンへと発展していったわけだ。
エアガンの進化形態としてはきわめてまっとうな順序ではあったが、ファルコントーイが電動ガンを設計する際、他のメーカーと違ったのは空気を圧縮するための機構だった。当時すでに大ヒットしていたマルイの電動ガンは、通常のエアシリンダーとピストンを備えており、BB弾の発射機構そのものは手でコッキングするエアガンと基本的には同じだ。
そんな中、後を追う形で1994年に発売されたファルコントーイ初の電動ガンは、「バルグシステム」と呼ばれる、蛇腹状のシリンダーをそなえた独自のデザインだった。これは、「ふいご」のように伸び縮みする蛇腹状のパーツでエアを押し出し、BB弾を発射するというものだ。
通常のシリンダーに比べて、バルグシステムにメリットがあるとすれば、つねに最大限のパワーが発揮できる、ということだろうか。ピストンとシリンダーのギャップというものは、どんなに密着させてもゼロにはならない。快調に往復運動をさせるためには、どうしてもわずかなギャップが必要となる。また、Oリングは劣化する物なので、たくさん撃てばシリンダー内径とのギャップが増え、そのぶんパワーロスが大きくなっていく。
しかし、ピストンを持たないバルグシステムなら、理論上はシリンダー内のエアーをすべてBB弾の発射エネルギーに変換できる。業界内でも一貫して他メーカーとは一線を画す製品作りに邁進して来た、ファルコントーイらしい発想ではないだろうか。
もちろんデメリットもある。柔らかい材質で出来たバルグが切れてしまうと、通常のピストンよりパワー低下が激しく、最悪の場合、発射機能そのものが停止してしまう。
ファルコントーイはこの電動MP5シリーズの発売を最後にトイガン製造から撤退、このバルグシステムはTOPの64式小銃に引き継がれたが、その後、他の電動ガンに採用されたという話は聞かない。可能性を持っていたシステムだけに残念である。
ファルコントーイ製MP5の魅力のひとつが、グリップにフィンガーチャンネルのある旧タイプのレシーバー。マルイのエアコッキングMP5A3も旧タイプだったが、クルツモデルとしては今でも唯一の存在だ。以前紹介したファルコントーイ製のエアコッキング版と比べても、全体的な質感や仕上げがかなりグレードアップしている。
ファルコントーイ初の電動ガンはまず最初にMP5 SD3が発売され、その後このMP5Kがラインアップに加わった。
マガジンハウジング左にはASGK、FTCの刻印などが入っている。
アウターバレルはフロントサイトベースと一体の金属製。マズルにはネジが切ってあり、別売のサプレッサーが装着可能だった。
ドラム式のリアサイトはベースも含めて金属製。実際に回転して上下方向の調整が可能。旧型レシーバーなのでセレクターレバーは左側のみだが、Eがセミオート、Fがフルオートでの射撃ができる。
コッキングハンドルは機能的にはダミーだが、後退させてロックすることが可能。
もちろんチャンバーもダミーだが、スチールブルーの別パーツが入れられており雰囲気はバツグン。
バッテリーは単3乾電池を7本使用する。レシーバー上部ののスペースに5本と、バーチカルフォアグリップの中に2本セットする。
マガジンはスチールプレス製。なぜかブルーイングが真っ黒ではなく青みがかっており、なかなか美しい。
ファルコントーイのお家芸ともいえる金属製の機械式マガジンリップ。装弾数は55発だったが、当時ターゲットというショップ(現TOP JAPAN)から1000発のドラムマガジンを装備したナイトメア・シールズというカスタムモデルが販売されていた。
ダンボール製のシンプルなパッケージ。電動ガンの文字をもっと大きく目立つようにすれば良かったでのは、などと思ってしまうのだが…。
SD3用のマニュアルが付属していたため、バーチカルフォアグリップ内にバッテリーを入れる旨の解説がない。分解図からはシリンダーが蛇腹状のバルグシステムであることが分かる。マニュアル.PDF (13MB)
DATA
発売年 | 1994年 |
発売時価格 | ¥23,350 (MP5 SD3 フルセット) ¥19,800 (MP5 K フルセット) |
全長 | 実測 325mm |
重量 | 実測 1,195g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 電動エアー |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 55発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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