Hephaestus ガスガン AMD-65 GBB
レビュー: 金子一也 (Gun Shop BATON 店長)
ギリシャ神話の神の名を冠するメーカーが放つ限定カスタムモデル
クオリティの高い電動ガン/ガスガン用の各種カスタムパーツをリリースしていることで、コアなマニアの支持を得ている香港のメーカー、Hephaestus(ヘパイストス)。
耳慣れないその社名は、ギリシャ神話に登場する炎と鍛冶の神の名を冠したもので、その名に恥じない高い技術力を活かして製作された、高品位な製品を多数リリースしている。また、他社製品をベースに独自のカスタムを施した、コンプリートモデルのガスブローバックガンを数量限定で発売していることでも、世界中のマニアの注目を集めている、新進気鋭のカスタムメーカーである。
Gunsmith BATONではこれまで、HTs-14 GBB(OTs-14 Groza)、Tavor CTAR-21 と、2機種のHephaestus製限定カスタムモデルを扱っているが、どちらも一瞬のうちに完売となったことは記憶に新しく、また、以後の再生産が一切行われない本当の限定品である点から、マニア垂涎の希少品として、その価値を高めている。
今回のAirsoft通信は、そんなHephaestusが満を持してリリースした最新のコンプリートカスタム、AMD-65 GBBをご紹介する。
わずか400挺限りの限定生産品で、既にメーカー欠品となっているこの希少なモデルは、いったいどのような製品だろうか。
■スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
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独自の進化を遂げたハンガリー生まれのAKバリエーション
文字通り星の数ほどあるAKバリエーションの中でも、かなり特異なスタイルを持つAMD-65は、ハンガリー製のアサルトライフルである。
第二次世界大戦後、東側陣営の一国として旧ソ連からAKMの製造ライセンスを付与されていたハンガリーは、使い勝手を向上させるために独自の改良を施し、オリジナルとは一風変わったアサルトライフルを完成させる。
AKMのアッパーハンドガードを廃し、スチールプレス製のロアハンドガードに、バーティカルフォアグリップを装着したそのライフルは、AKM-63と呼ばれ、ハンガリー軍に正式配備されて行った。
AMD-65は、AKM-63の銃身を短縮し、大型のフラッシュハイダーを装着。さらにシンプルな折り畳み式ストックを新造することで、取り回しの向上を図ったバリエーションモデルで、士官や車輌・ヘリ搭乗員、特殊部隊などに配備されていたようだ。
ちなみに、AMD-65という名称は、Automata Modositott Deszant fegyver 1965 を略したもので、英語表記だと、Automatic Modified Paratrooper [weapon]となる。
フルスチール製で実感たっぷりに再現されたフォルムとティティール
Hephaestus製のAMD-65は、多くのガスブローバックガンを発売している台湾のメーカー、GHKの製品、AKMをベースにカスタマイズされたものである。
GHKは、同じ台湾のエアガンメーカーLCT airsoft社から外装パーツの供給を受けているとのことで、外観の完成度の高さには文句の付けようがまったく無い。
ただちょっと不思議なのは、LCT airsoft社から電動ガンのAMD-65が発売されているのに対し、Hephaestus社はGHK社製のAKMをベースとしてこのAMD-65を製作したという点だ。
LCTとHephaestusとの関係性がわからないため、このあたりの実情は不明だが、今後LCT製のAMD-65電動ガンに触れる機会があったら、両者をじっくりと見比べてみたいと思う。
では、フロント周りから各部を詳しく見て行こう。
バレル先端に取り付けられたフラッシュハイダーは、スチール削り出しによるもので、両側面が大きく開口されているという、他のAKバリエーションには見られない独特のデザインを忠実に再現。バレルをかなり短縮しているので、反動抑制のために大型のハイダー(マズルブレーキ)が必要だったのだろう。
その大型フラッシュハイダーは、画像のようにアウターバレル先端に刻まれた14mm逆ネジによって取り付けられており、自由に着脱が可能。現在Gunsmith BATONにて販売されているLCT airsoft製のPBS-4 サイレンサーを取り付けると、特殊部隊用ライフルといった雰囲気がさらに盛り上がるだろう。
また、実銃同様の構造を持ったフロントサイトまわりとガスパイパス部分の、ザラザラした鋳鉄の質感も実に魅力的だ。
他のAKバリエーションではアッパーハンドガードに包まれているガスチューブだが、このAMD-65はご覧のように完全に剥き出しとなっており、軽量化に貢献している。
また、銃身の短縮にともない、ガスチューブそのものがAKMよりも若干短く作られている。
トイガンであれば何の問題も無いが、実銃では恐ろしく加熱する場所なので、素手での使用にはかなりの注意が必要となることだろう。
ロアハンドガードに当たる部分は、実銃同様のプレス加工によるスチール製のものを装備。側面には放熱用の穴が開けられているが、やはり実銃では相当に加熱することだろう。
スリングスイベルを兼ねたハンドガードリテイナーはAKMと同一形状だが、左側面から下側に向かって、5個の穴が整然と開けられている。少しでも放熱効果を高めようとする、設計者の苦労が垣間見える部分だ。
ガスチューブの付け根部分に位置するリアサイトブロックは、アウターバレルが固定されることもあり、非常に頑強な造りとなっている。
タンジェント式のリアサイトは実銃同様に可動し、スムーズな調整が可能。リアサイトリーフ上面に刻まれた距離を表す数字も最大800mまでと、実銃AMD-65の特徴がしっかり再現されている。
フルオート時のコントロール性向上を狙って、ハンドガード下部に取り付けられたバーティカルグリップは樹脂製の極めてシンプルなもの。
緑がかったグレーで成型されており、ボルトでガッチリとハンドガードに固定されている。
下端部が銃口側に傾いたこのバーティカルグリップだが、実はトリガーの後ろにある本来のグリップと同じものを、前後逆に取り付けているだけという、他に類を見ない大胆な発想で作られているのだ。
その大胆さ故、カーブのきつい7.62mm弾用マガジンの抜き挿しには相応の慣れが必要となり、そのためハンガリーでは、装弾数20発のショートマガジンも製造されたようだ。
AKMの流れをくむレシーバーは、実銃同様にプレス加工で造られており、塗装ではない黒染め表面仕上げが、より本物らしい雰囲気を醸し出している。
レシーバー周りで特筆すべきは、電動ガンではダミーでしかなかった、ハンマーピン、シアーピン、トリガーピンが、それぞれ実際にレシーバーを貫通しているという点であろう。
これは、実銃に近い内部メカニズムを持つガスブローバックガンならではのもので、リアル派のマニアを引き付けて止まない大きな魅力と言えるだろう。
尚、画像中でリアサイトブロックの右下に見える、EAに続く4桁の数字は、限定生産された400挺すべてに異なる番号が割り振られたシリアルナンバーとなっており、希少な品物を所有することの喜びをより大きくしてくれる。
レシーバー左側面の後方に、初期のAK47に見られたようなスリングスイベルが設けられているのも、AMD-65の面白いところだ。
独特な折りたたみ式ストックがあまりにシンプルなため、スイベルを取り付ける部分がここ以外に無かったのだと思われるが、コンパクトなこの銃を運用するに当たり、決して悪いレイアウトでは無いように思う。
セレクターレバーとコッキングハンドルが備え付けられたレシーバー右側面も、ほとんどのパーツがプレス加工で造られている。
画像は、ストックを折りたたんだ状態を写したものだが、この状態でも射撃に関する操作は問題なく行えることがおわかりいただけるだろう。
AKM以降のモデルの特徴である、ダストカバーのリブもリアルに再現されていることが良くわかる、上からのアングル。
また、セレクターレバーのポジションを表す、1と∞の刻印も確認出来る。
ハンガリーの公用語はハンガリー語で、独自のアルファベットが用いられているのだが、国軍の正式採用銃にこうした刻印を入れているというのは、なかなかに興味深いところだ。
艶消しブラックで塗装されたボルトキャリアは、実銃と非常に良く似た形状で造られており、一体型のコッキングハンドルは強度的な不安を一切感じさせない頑強さを確保している。
コッキングハンドルを引き、ボルトキャリアを後退させると、ホップアップチャンバーが顔をのぞかせる。
ホップアップを効かせたい時は、ダイヤルを時計回りに動かすのだが、箱出し状態だと動作に難があるため、Gunsmith BATONではホップアップ調整がスムーズに行えるよう、新造パーツを組み込む改良を施している。
また、上の画像はボルトキャリアが後退し切った状態を写したものだが、実銃と比べてボルトストロークが短くなっていることにお気付きの方は多いことだろう。
ダストカバーを外すと、その理由が良くわかるのだが、ボルトキャリアの後方が延長されている上、レシーバー内部の後方にスペーサーが設けられており、ボルトの移動距離を制限しているのだ。
おそらくは低圧ガスでの作動性を考慮した、設計上のアレンジと思われるが、これによって射撃時のサイクルがアップすることは間違いないだろう。
尚、普段見えないリコイルスプリングガイドの形状までが実銃そっくりに造られていることは、特筆に値するポイントだが、実銃と違い、この状態で作動させると、リコイルスプリングガイドが破損する恐れがあるので、使用に当たっては注意が必要だ。
ダストカバーを外した状態でレシーバー内部をのぞき込むと、シンプルな構造のトリガーメカが収まっている。
面白いのは、コッキングした状態でトリガーを引くと、実銃のようにハンマーが落ちて、ボルトキャリアの後ろをカチンと叩くところだろう。
実際には何の役割も果たしていない、ただのダミーなのだが、マニア心をくすぐってくれる、何とも楽しいギミックだ。
マガジンハウジングを下から除くと、実銃であればボルトが組み込まれている部分に、シリンダーとローディングノズルの一部が見える。
画像右下に見える四角い穴は、マガジンから放出されたガスをシリンダーに導く入り口で、非常ににデリケートな部分だ。
鉄板を切って曲げただけ、といった趣のトリガーガードまわりと、スチール製のトリガー本体も、実銃の雰囲気を見事に再現。
樹脂製のグリップは上述の通り、ロアハンドガードの下に取り付けられているバーティカルグリップとまったく同じものを採用。
滑り止めの類は一切入っておらず、板のように薄いグリップは、お世辞にも握りやすいとは言えないが、それは実物をそっくり再現した結果で、これこそがAMD-65の持ち味と言えるだろう。
鉄の棒と板でポンと作ったような、なんともぶっきらぼうなバットストックも、AMD-65の大きな特徴のひとつだ。
一見頼りなさそうな印象を受けるストックだが、ストック本体、バットプレートともにスチール製で頑丈に造られており、強度的な不安は微塵も感じられない。
また、バットプレートにはラバーパッドが貼り付けられており、肩付けした際の滑り止め効果を発揮してくれる。
ただこのバットストック、構えた際に頬を乗せる部分が無いため、瞬時に狙いをつけるためには相応の慣れが必要となるだろう。
実銃の世界では、このストックに折り曲げた鉄棒を追加して、頬付け出来るよう改良したものも存在するようだ。
このバットストックがレシーバーの右側に折りたたまれることは先にご紹介した通りだが、ストックの付け根部分は上画像のように、レシーバーにヒンジが埋め込まれたような造りになっている。
上の画像はそれぞれ、ストックを伸ばした状態とたたんだ状態を写したものだが、レシーバー後方の下側に突き出したボタンを押し込むことで、ストックのロックが解除される仕組みになっている。
尚、このストックをはじめとする、スチール削り出しの外装パーツについて、Hephaestusは“QPQプロセス”という表面処理を施工している。これは、金属の耐摩耗性、耐食性、疲労強度を飛躍的に向上させる特殊な処理方法で、トイガンに採用されたという贅沢な例は他に聞いたことが無い。
このAMD-65で、QPQプロセスが施されているパーツは以下の通りである。
〔マズルブレーキ、フロントサイトブロック、ガスブロック&ガスチューブ、ハンドガード&ハンドガードリテナー、ダミークリーニングロッド、リアサイトブロック、フォールディングストック〕
マガジンはGHKのAKM用ガスマガジンがそのまま流用されているが、スチールプレス製のリアルな外装は、7.62×39mm弾を使用するカーブの強い形状がしっかり再現されており、銃本体に引けを取らないリアルな仕上がりを見せている。
ガスタンクを内蔵しているため、マガジン単体で700g弱と、なかなかの重さだが、実弾を装填した実物マガジンは、おそらくもっと重くなるだろう。
マガジン上面の後部には、空撃ちモードに切り替えるためのスイッチが設けられており、BB弾を装填しない状態でのブローバック動作が楽しめる。
ただこのスイッチが樹脂製の薄いパーツなので、不用意に力を入れて操作しないよう注意が必要だ。
マガジン背面を見ると、放出バルブと注入バルブが上下に並んで設置されている。ほとんどのガスマガジンは注入バルブがマガジン底面に設けられているのだが、GHK製のAKシリーズマガジンは、このちょっと変わったレイアウトを採用しているようだ。
迫力満点の荒々しいブローバックアクション
ブローバックの動作を確認するにあたり、マガジンにガスを注入し、まずは空撃ちモードを試してみる。
注入バルブは海外製品の例に漏れず、ガスが入っている感触の無い仕様だが、常温で保管したHFC134aガスボンベのノズルを10秒ほど押し付けたことで、動作に必要な量のガスが充填出来た。
空撃ちモードのマガジンをAMD-65本体にセットし、セミオートモードでトリガーを引くと、ドカッ! という炸裂音が響き、銃が前後に揺さぶられるような、荒々しいリコイルが発生した。
引き続き、セミオートで数発連射してみたが、動作が鈍くなる印象はほとんど感じられない。
フルオートでの連射となると、時期的なこともあり、さすがに回転速度が遅くなって来るが、ボルトがショートストローク化されていることも手伝ってか、意外なほど粘り強い作動を見せてくれた。
マガジンのスイッチを発射モードに切り替え、BB弾を装填しての実射テストでも、野性味を感じさせるような荒々しいリコイルは健在で、銃をしっかりホールドしていないと、射出されたBB弾が散らばってしまうほどだった。
おそらくは銃本体の軽さも、このリコイルの強さに繋がっているのだろう。
普段レビューしている電動ガンでは、決して味わうことの出来ない迫力だ。
全身鉄の塊といった印象を持つ、ハンガリー生まれのAKバリエーションを、ガスブローバックガンとして再現した限定生産のカスタムモデル、Hephaestus AMD-65 GBB。重量のあるボルトキャリアがガツガツと動くことで発生する強烈なリコイルは、マニアならずとも病みつきになるに違いない。
過去の例から言って、限定品と謳ってリリースした製品をHephaestus社が再生産することは、まず無いと見て間違いないだろう。
AMD-65ファンの方はもちろんのこと、生粋のAKマニアで購入を迷われている方は、出来るだけ早めのご決断をされるために、Gunsmith BATON店頭にて、その完成度をお確かめになっていただきたい。
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