ASP SVU
レビュー: 金子一也 (Gun Shop BATON アキバ 店長)
ロシア生まれのブルパップスナイパーライフル SVU
SVU(ロシア語:Snayperskaya Vintovka Ukorochennaya)は、旧ソビエト軍が1963年に制式採用していたドラグノフSVDを、ブルパップタイプに改良したスナイパーライフルである。
車両やヘリコプターを使った特殊作戦に従事することの多い、旧ソビエト軍の特殊部隊、スペツナズの要求を受けて開発がスタートしたこのコンパクトスナイパーライフルは、ロシア自由化後に正規実用型が完成。第一次チェチェン紛争での使用をはじめ、様々な紛争地帯でその姿が確認されている。
その開発にあたり、多くのパーツをSVDからそのまま転用しているため、製造コストを低く抑えることに成功。また、フルオートでの射撃も可能なトリガーメカニズムが後に組み込まれている。
特殊作戦用ライフルとしての性格上、システムの一部として開発された大型のサプレッサーは、銃弾の発射音と、マズルフラッシュを大きく抑制するのはもちろんのこと、バットストックとの組み合わせにより、リコイルエネルギーの40%までを吸収するという。そのバットストックはラメラースプリング(多重構造の板バネ)を介してレシーバーに取り付けられており、弾性を有するという特殊な構造を採用している。
ちなみにSVUという呼称についてだが、シリーズ中、セミオートオンリーの初期型がSVUで、セミ、フルオートの切り替え機構を搭載したモデルはSVU-A(Aは、自動の略)。重心バランスの適正化と、より正確な射撃を可能とするための折りたたみ式バイポッドを装着した現行型が、SVU-ASと呼ばれている。
今回、香港のASP社が製品化したSVUはバイポッドを備えており、セミ、フルオートの切り替え射撃も可能なので、正確にはSVU-ASということになる。
電動ガンとしては世界初のモデルアップである、このASP SVUがどのような製品なのか、以下に詳しく紹介して行こう。
ASP SVU 電動ガン スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
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電動ガンとして世界初の製品化
SVUの原型となったドラグノフSVDは、いくつかの海外メーカーから電動、ガスブローバック、エアーコッキングと、多くの製品がリリースされているが、このSVUがトイガンとして製品化されたのは今回が初めてだ。
実銃のSVUは、ロシア製銃器特有の荒々しさに加え、いかにも“SVDを改造しました”という雰囲気を漂わせているが、ASPのSVUは、始めからこの形でデザインされていたかのような、洗練された完成度の高さを感じさせる。
まずはフロントまわりから詳しく見て行こう。SVUというスナイパーライフルのシステムの一部として同時開発されたという大型のサプレッサーは、実銃よりほんの気持ち程度長い印象だが、太さと形状は良く再現されている。
銃身先端部との接続は14mm逆ネジ仕様になっており、社外品のマズルデバイスを装着することも可能だ。
サプレッサー先端部の内側は空洞になっているが、実銃ではここに、放出される発射ガスを制御するマズルブレーキが内蔵されている。簡単な形状なので、実銃画像を参考に手を入れてみても面白いだろう。
また、サプレッサー内部には吸音用のスポンジが内装されており、サウンドサプレッサーとしての機能も再現しているのが好ましいところだ。実際の消音効果については、後半の実射テストにて確認しよう。
サプレッサーが装着されている銃身先端部に設けられたフロントサイトは、スコープ使用時を考慮した折りたたみ式。上下左右に調節可能な実銃の構造を、別体パーツの組み合わせで上手く再現している。
特徴的な筒状のフロントサイトフードは、上面に穴が開けられており、フロントサイトポストへのアクセスが可能だ。
特異な構造を再現したレシーバーまわり
ブルパップ化に伴い、マガジンハウジングの前方に移設されたグリップは、下部が膨れた独特の形状を忠実に再現。細身のトリガーと、中央にリブが設けられたトリガーガードも、実銃そっくりに造られている。
トリガー右上に見える丸い突起は、機械的にトリガーをロックするセーフティスイッチだが、これはASPの独自アレンジだ。実銃にもトリガーをロックするセーフティは付けられているが、構造そのものが異なっている。
また、実物のSVUでは、レシーバー左側面に沿わせたトリガーバーを保護するためのカバーが設けられているのだが、ASPのSVUは電気接点にてトリガーのオンオフを行うため、このカバーが省略されている。
トリガーまわりの上には、光学機器を取り付けるためのサイドレールが、やはりレシーバー後方から移設されている。サイドレールは、アウターバレル基部のブロックと一体になっており、強度的な不安は一切感じられない。
やはりPSO-1スコープを取り付けたいところだが、様々な種類の製品が市場に出回っているため、互換性については各々検証が必要となるだろう。
先端部に滑り止めのリブが設けられたナイロンファイバー製ハンドガードは、基本的にはSVDと同一のものだが、上述のサイドレールとトリガーまわりを避けるために、付け根側の下部が大きく切り欠かれている。
また、ハンドガード内部はバッテリー収納スペースになっており、BATON airsoft電動ガン用リポバッテリーであれば、7.4v1200mAh[30C](セパレート)、または、Eライン7.4v1200mAh[20C]セパレートが対応可能だ。
レシーバー先端上部、SVDではタンジェントリアサイトがあった部分に新設された、SVU専用リアサイトは、折りたたみ式の構造と、上下調整機構を再現。サイトの胴部を回すと、棒状のピープサイトが上下に動き、着弾点を修正出来る仕組みだ。
実銃ではこの胴部に、距離を示す刻印が刻まれているが、残念ながらこれは省略されている。
後方に見えるコッキングハンドルは、ボルトカバー(ダミーボルト)と一体になっており、強度的な不安を感じさせない。また、このレバーを後方に引くことでエジェクションポートが開放し、ホップアップ調整ダイヤルにアクセス出来る構造だ。
レシーバー右側面は、SVDそのものといった趣。細長く、湾曲したセレクターレバーや、ダストカバーのロックレバーは、プレス加工でリアルに再現されている。面白いのはセレクターの位置を示す刻印で、フルオートのABと、セミオートのOДの位置が実銃と逆転している。つまり、上からセーフ、セミオート、フルオートという、西側諸国の自動小銃のような配置になっているのだ。
メカボックスの機構上、やむなくこうなってしまったと思われるが、電動ガンとしての使い勝手は向上していると言えるだろう。ちなみに、セレクター部分の表示の配置は、バイポッドの付属しないSVU-Aに準じているようだ。
マガジンは装弾数180発の多弾タイプを採用。詳細は不明だが、他メーカーのSVDと互換性があるとのことだ。海外メーカーの電動(エア)ガンは予備マガジンの確保が難しいため、既にSVDを所持しているユーザーにとっては嬉しい情報だろう。
ダストカバーの左側には、ナイロンファイバー製のチークパッドが固定されており、安定したサイティングと、頬付けの際の火傷(電動ガンでは起きないが)等を防止している。備え付けの前後サイトで狙うには、このチークパッドでは若干高いようなので、やはりスコープの使用を前提とした設計なのだろう。
尚、実銃ではこのチークパッドの右下に、スリングスゥイベルが設けられているようだ。
レシーバー後端の、SVDではグリップが接続されている部分には、やはりナイロンファイバー製のバットストックが取り付けられている。実銃がレシーバーに対して垂直であるのに対し、ASP製SVUのバットストックは下端部が後方に延びた格好になっているが、これはモーターを内蔵するための改変だろう。下端部下面には、モーターの位置を調節するためのイモネジが顔を覗かせている。
スナイパーライフルとしての重要な装備であるバイポッドが標準装備されているというのもまた、ASP製SVUの大きなセールスポイントのひとつだろう。実銃SVU-ASが備える折りたたみ式バイポッドを、その構造まで見事に再現。バレルの中ほどに固定された基部パーツから、わざわざバイポッドのヒンジを前方に伸ばしているのは、バレル先端部に加重がかかることを避けるための工夫だろう。
収納時、スチール製のフックで固定されているバイポッドは、ヒンジ部分の節度あるロック機構で制御されており、勝手に動いてしまうような心配は不要だ。
ただ、上述した基部パーツから伸びるステーはスチール製で頑丈なものの、前端のヒンジ部分を支えるコの字状パーツがダイキャスト製であるため、若干の強度的不安があるのは否めない。バイポッドを展開した状態で、ドスンと地面に置くようなことは避けた方が良いだろう。
スナイパーライフルの名に恥じぬ実射性能
細長いレシーバーに収められたメカボックスは、他社製のドラグノフ系電動ガンにも見られる4枚ギヤを使用するタイプを採用。構造的にはReal Sword社製のメカボックスに酷似している。各パーツの精度に問題は無いが、ギヤの枚数が多いこともあり、基本的な内部調整は必須となる。650mmというインナーバレルの長さも、国内の規制値に合わせた最適な初速を得るためには、適正な長さにカットする必要があるだろう。Gunsmithバトンでは、これらの問題点を解消すべく、全ての製品に、1挺ずつ調整&チューンを施した上で出荷しているのだ。
実射性能のチェックは、GunsmithBATON八王子駅前店内の26mシューティングレンジにて実施。ベテランチューナーの手が入ったASP SVUの弾道と集弾性を確認してみた。
まずストックを肩付けして構えてみると、やはりチークパッドに対して、フロントサイトとリアサイトが若干低く、少し顔を傾けた状態で狙う必要があった。
下端部が後方に反ったバットストックにも若干の不安があったが、構えた際の違和感は特に無く、自然に肩付けすることが出来た。
180連装の多弾マガジンに、0.2gのBLS 高品質バイオBB弾をジャラジャラと流し込み、ゼンマイを巻き上げてSVUにセット。バッテリーはBATON airsoft製の7.4v1200mAh[30C](セパレート)をチョイスした。
まずは飛んで行くBB弾の軌跡を見ながらセミオート射撃を行い、適正ホップが出たところで、サイトを通した26m先の直径30cmのスチール板を狙ってみた。
顔を傾けての、やや不自然な格好で狙いをつけ、慎重にトリガーを引き絞る。すると、メカボックスが収まったレシーバーの上に顔を載せているためであろう、キュバッ! という作動音とともにBB弾が発射され、カーン! というヒット音を響かせて、ターゲット中央のLEDランプが赤く点灯した。
おそらくは実銃を撃っても、ボルトの作動音が耳元で響くのだろう。少なくとも射手にとっては、サプレッサーの恩恵はあまり感じられなかったが、26m先の30cmプレートを、アイアンサイトで無造作にヒットすることが出来た。
次にバイポッドを展開した状態で、30cmプレートの上に設置してある15cmプレートを撃ってみたが、銃が安定していることもあり、難なく連続ヒットすることが可能だった。スナイパーライフルとして充分以上に戦える性能だ。
フルオートに切り替えての連続射撃でも、弾道がバラつくことはほとんど無く、制圧射撃もこなせる実力を見せ付けてくれた。
海外製品、しかもまったくの新製品でありながら、調整&チューンでこれだけの性能を引き出せるのは、これまで膨大な数の中華電動ガンを調整販売して来た、GunsmithBATONならではの技術と言えるだろう。
ちなみにここでサプレッサーの消音効果を確認すべく、レシーバーを身体の後ろに突き出させ、グリップを握った右手をわき腹に引き付けた格好でBB弾を発射してみた。
メカボックスの作動音が目立たない状態での発射音は、バスッといった音で、さほど低く抑えられているようには感じなかった。しかし、サプレッサーを外した状態で撃つと、バチンという軽い破裂音がするので、消音効果は確かに発揮されているようだ。
ロシア軍特殊部隊が使用しているというコンパクトスナイパーライフル、SVU。その発売を待ちに待っていた露軍マニアの皆様は元より、一風変わったライフルをお好みの方々にとっても、たまらなく魅力的な1挺だろう。
GunsmithBATONではこの新製品の試射が可能なので、その出来栄え気になった方は、是非とも店頭まで足を運んでいただきたい。
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