レビュー: 金子一也
独自のアイディアを盛り込んだ品質の高い製品群で、世界中のマニアの信頼を得ている台湾のカスタムパーツメーカーMODIFYが、ついに完全な自社オリジナルのエアーコッキングガン、MOD24を発売した。
もともとは精密金属部品の専門メーカーであるMODIFYは、ラジコンカーや時計の部品等も幅広く製造している、40年の歴史を持つ老舗企業。
フリクションロスを極限まで減らしたギヤセットや、軽量な樹脂製のエアーシールノズル等、豊富な電動ガン用パーツに隠れている印象はあるが、エアーコッキングガンであるマルゼンAPSシリーズ用の各種カスタムパーツもリリースしており、ピンポイントを狙う精密射撃ファンからの人気も高いメーカーなのだ。
そのMODIFYが満を持して発売した初めてのエアーコッキングガン、MOD24。エアガンとしての完成度がどれほどの物なのかを詳しく紹介して行こう。
おそらくは商標の事情から、製品名はMOD24となっているが、言うまでも無くRemington社製ボルトアクションライフルのM24をモデルアップした製品である。
同社の誇るベストセラースポーツライフルのM700をベースに、軍用銃として必要な改良を施した銃がM24で、スナイピングに必要なスコープ、バイポッド等の用具一式全てを含めた、M24 SWS(スナイパーウェポンシステム)というのが正式な名称となっている。
米陸軍スナイパーが現在も実戦で使用しているのを始め、我が国の陸上自衛隊でも、対人狙撃銃として正式採用されているのは広く知られているところだろう。
M24で撃ち出される.308ウインチェスター弾は、7.62mm NATO弾として有名な弾丸。充分な弾頭重量と火薬量による長い射程距離と強大な殺傷能力を誇り、1kmを超えるスナイピングで恐るべき威力を発揮する。
イラク等、近代の戦場でも活躍しているM24だが、構造上連続射撃が出来ないことから制圧力不足が問題となり、大口径セミオートマチックライフルにその座を譲りつつあるのが現状だ。
しかし、ボルトアクションというシンプルかつ頑強な構造が生む信頼性の高さは揺ぎ無く、今後も世界各地の戦場で使われ続けて行くことだろう。
MODIFY MOD24 スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
|
|
エアガンとしてのM24は、中華メーカーのクラシックアーミーとスノーウルフからそれぞれ発売されているが、マルイ製VSRとマルゼン製APS-2の構造をベースにしたレプリカ品で、いずれもM24のフォルムを正確に再現するには至っていなかった。
また、国内ではCAW社から素晴らしい完成度の製品が発売されていたが、現在は生産されておらず、入手は難しい状況になっている。
そもそも現用のボルトアクションライフルはほとんどエアガンとして発売されていないので、MODIFY製MOD24の発売はサバゲでスナイパーを務めているゲーマーたちにとって、待望のリリースと言えるだろう。
全体のフォルムは、実銃の無骨な雰囲気を忠実に再現していて迫力満点。M24ライフルのファンにとって非常に重要なレシーバーの長さも、実銃のサイズをきっちり再現している。
樹脂製のストックは全体に細かいシボ加工が施されており、表面が荒々しい実物よりも若干上品な仕上がりといった印象。
ゆるやかなテーパーがかけられた美しい仕上げのアルミ製アウターバレルは、ストック先端内側から若干浮いた形で固定されており、実銃のフローティングマウントを再現している。
マズル部分のキャップは逆ネジで外れるようになっているが、一般的な規格のネジ径ではないため、サイレンサー等のアダプターが発売される可能性が考えられるところだ。
アウターバレルとストックの隙間から控え目に立ち上がっている金属製の板はホップアップの調整用レバーで、軽いクリック感のある適度な重さで、微妙な調整がやりやすい仕様。
ストックのフロント下部分にはスゥイベルスタッドが2箇所設けられており、スリングスゥイベルの取り付け位置を好みに応じて選択可能だ。スナイパーライフルはスリングの使い方が戦術に大きく影響するので、こうしたポイントは非常に重要と言えるだろう。
マガジンは実銃とは異なる着脱式のボックスタイプを採用。エアガンとしての作動の確実さと外観の再限度のどちらを優先するのが正解なのかは実に悩ましいところだが、見た目がリアルに出来ていても、銃としての機能が損なわれているのでは本末転倒という物。
M24最大の特徴とも言えるロングストロークボルトアクションの再現を優先し、給弾方式を堅実なマガジン式としたMODIFYの選択は正しいと言えるはずだ。
また、そのボックスマガジンにはLEDによる発光ユニットが内蔵され、暗所で蓄光BB弾を使用することでトレーサーと同じ効果を楽しめるといううれしい機能が盛り込まれている。
金属製のトリガーガードは形状、剛性共に実銃そのものといった仕上がり。インナーマガジンフロアーも金属製で、実銃の形状を忠実に再現している。MOD24ではこの部分にマガジンとしての機能が無いため、本来ならトリガーガード内にフロアーリリースボタンは省略されているのだが、いかにも開きそうな雰囲気のモールドが施されている。
トリガーガードの流麗な形状に目を奪われる上の画像だが、トリガー前部に見えるふたつのイモネジに注目していただきたい。トリガー付け根の右側に見える黒いネジはトリガープルの重さを、その下にある少し大きめのイモネジは、トリガートラベルをそれぞれ調節するための物なのだ。
MODIFYが独自開発したこのトリガーメカニズムは、トリガーまわりを一切分解することなく、トリガーの重さと引きしろを調節することがが可能となっている。
一撃必倒を旨とするスナイパーにとっては、実にうれしい機能である。
ボルト(シリンダー)を包み込むメインレシーバーはMODIFYが得意とするCNC加工で製作されており、従来の中華製ボルトアクションライフルとはひと味違った高級感に溢れている。そのレシーバー上部にガッチリ取り付けられた専用設計のマウントは、20mm幅のピカティニーレールとなっており、搭載出来る光学機器を自由に選ぶことが出来る。
これはメーカー独自のアレンジなのだが、エアガンとして使用する上では、歓迎すべき変更と言って良いだろう。
M700から受け継がれた美しい形状のボルトハンドルも、ダイキャスト製ながら実物の造型が見事に再現されており、手のひらへの負担が少ないスムーズなコッキングの感触が存分に楽しめる。
また、ロングアクションを再現したボルトの後退距離はおよそ90mmにも及ぶため、素早い連射を送り出すにはかなりの慣れが必要となるだろう。しかしこのライフルを選ぶユーザーに、ストロークの長さを苦にする方はいないはずだ。
実銃に採用されているHSプレシジョンPST011アジャスタブルストックを、その機能まで再現した樹脂製ストック。バットプレート部分のアジャストスクリューを回すことで、最大50mmまでの無段階調整が可能となっている。
これだけの調整幅があれば、幅広いユーザーが自分に合ったポジションでのスナイピングを楽しめることだろう。
また、硬質ゴムのバットプレート背面には、MODIFY社のシンボルマークと社名のロゴが誇らしげにモールドされており、この製品に対する同社の自信と熱意を現しているように思える。
画像には無いが、発売時には黒いストックに加え、O.D、タンと3つのカラーバリエーションが同時に発売されるのも嬉しい限りだ。
実銃のレプリカとして文句なしの完成度を誇るMODIFY製MOD24。エアガンとしての機能をつかさどる心臓部には、Gunsmithバトンが積み上げて来たエアガンチューニングのノウハウがフルに投入されている。
MODIFY社の新規開発によるコンパクトにまとめられたホップチェンバーは、バトンチューンでより確実なホップ回転をBB弾に与えている。
また、インナーバレルのセンターを出す工夫が成されており、サバゲーでのハードな使用でも常に安定した弾道と命中精度が得られるよう作られている。
最大距離40mのインドアレンジで実射すれば、0.2gのBB弾がレンジ末端の壁面に当たるまでスーッと素直に飛んでいく。その印象は国産の製品、はっきり言ってしまえば、東京マルイのVSRシリーズやL96と撃ち較べても何ら遜色が無い。
また、Gunsmithバトンならではの『エアコキ☆流速チューン』を施工済みのお得なコンプリートカスタム、MOD24流速SPも41,990円で同時発売。重量弾にも強力なホップをかけることができ、ロングレンジでの集弾性を大幅に向上する流速チューンは、スナイパーライフルにこそ必須のチューニングであろう。
エアーコッキング式のボルトアクションライフルとして、現時点では最高の回答を導き出しているMODIFY製MOD24。
一撃必殺のスナイパーを自認するゲーマー諸氏にとっては、絶対に見過ごせない製品と言えるだろう。