G&G 電動ガン L85 A1 / L85 AFV
レポート:戸井源太郎
台湾のトイガンメーカー、G&Gがリリースする、英軍が1985年に制式採用したブルパップ式ライフル、L85(SA80)の電動ガンをリポートさせていただきます。L85といえば、実銃は故障が多くていろいろ問題となっているということをご存じの方は多いかと思います。またL85には日本のトイガンに限っての話ですが、変なジンクスがあるのをご存じでしょうか?
サバゲ黎明期、1980年代中ごろから90年代初期にかけて、L85をモデルアップしていた国内メーカーが何社かありましたが、なんと90年代にすべてが倒産してしまったのです。このことから日本ではL85をモデルアップすると倒産するとまことしやかに囁かれ、すでに都市伝説となっているのです。
日本のトイガンメーカーから、フランスのFA-MASやオーストリアのステアーなどのブルパップをはじめ、ヨーロッパ主要国の制式採用銃が電動ガン化しているのに、なぜかイギリス軍のL85が無いというのは、未だに根強くこのジンクスが信じられているのだろうと想像できます(笑)。
そんな日本のトイガン業界のジンクスなんて関係ない海外メーカーではL85の電動、ガスガンが各社からラインナップされています。
今回紹介するG&Gの電動ガンL85シリーズ、その性能は興味のあるところです。今回はベーシックなL85 A1と、車載用のコンパクトモデル、L85 AFVの2本立てでリポートします。
日本の都市伝説もそうですが、実銃のL85の評判もあまり良いとは言えません。
L85はL1A1(FAL)を更新する形で1985年に制式採用されました。発射機構をトリガーの後方にまとめ、コンパクトサイズでありながら長銃身を維持するブルパップ方式を採用しています。本体はプレス鋼板で、グリップやハンドガードにはプラスチックを使用し、生産性の高さとコストを低く抑えています。
しかし軍で採用してみると、すぐにジャムなどのトラブルが多発しました。そのためイギリス軍では大規模な改修が行われ、L85 A1となりましたが、それでもなお調査では99発に1回はジャムるそうで、根本的な問題は解決しなかったみたいです。
一説にはコッキングハンドルの取り付け位置とその形状に問題があるといわれています。排出されたカートがハンドルに当たり、最悪の場合、排出されたカートがエジェクションポートに戻ってきて挟まるとか...。
1991年にイギリス軍はドイツのH&K社に改修を依頼し、各パーツを見直し再び大規模な改修が行われました。その結果、ジャムも25,000発に1回程度に抑えることに成功しました。
イギリス軍はすでに配備中の20万挺にこの改修を施し、L85A2として採用しています。しかし1挺につき、日本円で約75,000円もの出費となったそうです。
イギリス特殊部隊のSASは、L85にさっとと見切りを付け、M4を使っているようですが、それでもイギリス軍は愛国主義からか、ダニエルディフェンスのRISを採用したり、光学サイトをACOGに変更したり、マグブルのEMAGを使ったり、シュアファイアのハイダーに交換したりと懲りずにL85を愛し続けているようです。
※注釈、L1A1はFN FALでベルギー製、採用拳銃のL9A1はブローニングHPでベルギー製、L105A1はSIG 226でドイツ製、L131A1はグロックでオーストリア製とイギリス製の銃器はスターリングが退役した現在、L96のアキュラシーインターナショナルとL85のみです。
G&G 電動ガン L85 A1 / (L85 AFV) スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
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パーツリスト L85 A1/A2 パーツリスト L85 AFV パーツリスト L85 CARBINE |
イギリス軍が採用しているL85 A1の独特なブルパップスタイルをG&Gでは忠実に再現しています。実銃と同様にボディはスチールプレス、グリップ、ハンドガードなどにはプラスチックを採用し、実銃と見紛う出来栄えです。主要個所もほとんどメタル製で、その重量は3kg超え、手にするとずっしりときます。外観の完成度は文句なしといえるでしょう。ちなみに実銃は4.7kgとかなりの重量です。
L85 A1はいわゆるスタンダードモデルで、キャリングハンドル兼用のリアサイトを標準装備しています。またL85シリーズは射撃ごとにコッキングハンドルが可動する電動ブローバックモデルになります。
L85 A1のフロント部分はプラ製ハンドガードで、イギリス陸軍採用モデルです。
L85 AFVはショートバレルバージョンで下部と左側にレイルを装備しています。下部のレイルにはフォアグリップを付けたほうがいいですね。
トリガーの上にみえるフレームの「ピン」のようなボタンがマニュアルセフティです。左側面に出っ張ると「ファイヤ」状態です。ピンを押し込んでセフティが掛かります。なおセフティを解除する場合は反対側から出ているピンを押します。
グリップは角度が浅いスッキリとしたモノ。またグリップの底部はキャップになっており、小物を収納することができます。
トリガー、グリップの後にマガジンを挿入するブルパップスタイルです。
実銃も電動ガンもマガジン後部のストックを兼ねる部分に機関部(メカボックス)が搭載されています。銃を構えた時に頬が当たる部分がプラ製のチークパッドになっています。
マガジンキャッチは左側のみに設置されています。個人的には使い勝手が悪いと感じました。
同じく左側にセミ・フル切替のセレクターがあります。「R」がセミオート、「A」がフルオートになります。
機関部の右側になります。エジェクションポートとボルトリリースレバー(G&Gではダミー)が配置されています。ここからもわかるようにアンビ(左右兼用)が全く考慮されていない作りとなっています。
多くの電動ガンと同様にエジェクションポート内にHOPダイヤルを搭載しています。
バットプレートはラバー製となっています。主要メカが後部に集中搭載されているため、リアヘビーになりがちですが、このラバー製バックプレートのおかげでグリップし、しっかり肩付けができます。
L85 A1のコッキングハンドルはシンプルなスティックタイプとなっています。実銃ではこのハンドルに排莢されたカートが当たるのがジャムの原因といわれています。
L85 AFVには改良型の握りやすい大きなコッキングハンドルを採用しています。
L85 A1のフロントサイトは着脱式です。フロントサイトは上下左右調整可能となっています。
L85 A1はキャリングハンドル兼用のリアサイトを標準装備しています。このキャリングハンドルは着脱式となっています。
リアサイトはL型ピープ式。距離に合わせてピープ穴の大小を切替可能です。
L85 A1のプラ製ハンドガード内にバッテリーを収納します。
まず、ハンドガード右側前方、フロントサイトの下にあるネジを外します。
ハンドガードの上部カバーを開きます。
最初に外したネジが左側のスリングスイベルに繋がっています。それを外せば、ハンドガード下部が取り外せます。コネクターはラージになっていますが、変換コネクターが同梱されています。バッテリースペースからして最初からミニコネクターが接続されていても良いと思います。
L85 AFVのバッテリーは本体内に収納します。その収納方法は、まずフロントブロック部分にあるカバーを開けるのですが、非常に固くて素手では無理でした。マイナスドライバーを差し込んでテコの原理で開けました。次にカバーに隠されていたネジを外します。
あとはフロントブロックを取り外します。ここも素手で引っ張っても外せません。ハンマーの柄で軽く叩いて外しました。
L85 A1、AFVともに、キャリングハンドル、SUSAT光学照準器は着脱式となっています。銃本体上面には搭載用のレイルがあります。
キャリングハンドル兼用のリアサイトは本体前からレールに沿って載せ、レールにある丸い窪みに併せて、リアサイトのネジでロックします。
L85 AFVに標準装備されるL85用のSUSAT光学照準器。堅牢な作りの3倍固定スコープです。上面にはアイアンサイトも装備します。
SUSAT光学照準器も前からレールに沿って前から搭載します。
L85本体への搭載はサイドのレバーによりロックします。
SUSAT光学照準器をロック後、レバーの反対側にあるスクリュー2ヵ所でがっちり固定します。
SUSAT光学照準器の右側にはダイヤルがあり、イルミネートのスイッチになっています。
SUSAT光学照準器はあまり見かけないピラー式のレティクルとなっています。実銃もこのようなレティクルのようです。狙い易いかは微妙です。
イルミネートのスイッチを入れるとピラー先端部が赤く光ります。ダイヤルで3段回調光になっています。
SUSAT光学照準器のゼロイン用に専用のレンチが付いています。
ウィンデージ、エレベーションはこのレンチで調整します。
マジガンには「5.56mm×45」と刻印が入っています。装弾数450発の多弾倉マガジンが標準装備しております。ん? このマガジンはちょっと長くない?
目の錯覚ではありませんでした。M4系の多弾倉マガジンは300発、G&Gは450発なので、その分、長いみたいです。東京マルイのスタンダード電動ガンのマガジンと比較してみましたところ、2cm程度ロングサイズとなっています。もちろん東京マルイのマガジンも共用できました。
外観は重量感、素材、リアルさと、申し分ない完成度ですが、実射性能はどうでしょうか。早速試射してみました。
L85の電動ガンは、発射するごとにコッキングハンドルが前後に稼動する電動ブローバック仕様となっています。リアルなアクションが楽しめますがリコイル(反動)はありません。
主要メカが後部に集中するので、リアヘビーかと思いましたが、意外とバランスが良く自然に構えられ、肩からズルっと抜けることはありませんでした。
弾は東京マルイのベアリングバイオ0.2gBB弾でテストを使用しました。過去にリポートしたG&G製品では、HOPを最弱にしてもHOPがかかりすぎでBB弾は急上昇していきましたが、L85は0.2gBB弾で適正に調整することができました。
フルオートで連射したところサイクルはブローバック機能のせいか、非常に遅く感じました。計測してみると秒間9発強になります。実銃は秒間10.16発~12.92発なので、実銃より遅いというのは意外です。バッテリーも疑いましたが、電圧をチェックしても問題はありませんでした。
そしてここで問題が発生。フルオートでは問題ないのですが、セミでは発射できません!
しかもL85 A1もAFVもどちらも同じ症状です。どうやら、カットオフレバーかタペットプレートあたりの動きが原因のように思われます。ネットで調べても同じ症状の方が多くいるようなので、根本的な設計ミスなのかもしれません。メーカーが出荷前に作動チェックすればわかることですが、メーカーで検品をしてないのか疑問に思います。
L85は左利きやスイッチなどは、まったく考慮されておりません。スイッチするとコッキングハンドルが顔に当たりそうですし、実銃なら薬莢が頬に直撃になります。
またトラブルが発生しました。L85 AFVのトリガーを引いてもまったく反応がありません。調べてみると埃などが入らないためのダストカバーが原因のようです。通常、ダストカバーはM4などと同様に閉めた状態でも射撃すれば、ボルトの後退動作で開放されるようになっています。
L85 A1では問題なかったのですが、AFVのほうはカバーがキツ過ぎ、それがストッパーとなって作動しなかったみたいです。かなり負荷がかかってしまいバッテリーが加熱していました。ダストカバーを開放しておけばフルオートでは問題なく射撃できます。それにしても個体差がありすぎます。
追い打ちをかけるように、さらにトラブルが起こりました。今度はAFVがブローバックしなくなりました。
L85はブローバックさせるために、コッキングハンドルがピストンに連結されたロッドにより前後に可動する仕組みとなっています。それが、射撃中にロッドと連結しているパーツが外れたようで、ブローバックメカが動かなくなりました。パーツリストのL85AF-06_3のイモネジか、L85AF-03_20のクリップが原因だと思われます。エジェクションポート内の上にそのロッドがみえます。
射撃の模様を動画でもどうぞ。
G&G L85 A1、L85 AFVの実射テストはトラブル続きで予想以上に時間がかかってしまいました。
今回のテスト、最初は、無骨なスタイルを素材も含めて完全再現してあり、外観だけでなく、質感、剛性と非常によくできており、期待も高まっていましたが...。
L85 A1、AFVともに工具がなければバッテリー交換ができないため、非常に面倒でテンションダウンです。
実射性能は予想以上の飛距離とまとまった弾道で素直にテンションアップ!
しかしフルオートは快調ですが、セミオートがまともに撃てません。ダストカバーの件もあり、基本的システムが機能しないというのは問題外です。実射の弾道がよいだけに残念でなりません。
トドメにフルオートで連射中にブローバックギミックが動かなくなり心が折れました。
G&G製品は外観の完成度、素材、実射性能は他製品に比べて良いほうだと思います。外観がよくできているだけに期待してしまいますが、そこは中華製であることを認識して、過度な期待を抱かず、英国紳士のように優しい眼差しで接してあげましょう。
先日、M1ガーランドのリポートでも述べましたが、これらの不具合はパーツのバリやパーティングラインの処理、検品でクリアできるレベルだと思います。それにしてもL85に関してはトラブルが多すぎました。
L85という銃は、実銃と日本のトイガンメーカーだけでなく、海外メーカーであってもジンクスが健在のモデルなのかもしれませんね。
協力:七洋交産、ビレッジ2、衣装協力:S&Graf
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