MGC キャスピアン ハイキャパシティ
写真&解説 YAS
解説
MGCがガスブローバックガンとしてどうしても出したかったモデルが1911シリーズだ。
グロック17、P7M13と発売し、ガスブローバックのノウハウを蓄積したMGCが第三弾として投入したのが、当時コンペティションピストルとしても注目を集めていた1911ハイキャパシティフレーム。
ブローバックによる待望のシングルアクション化、容量の大きいハイキャパシティマガジンとすることで安定した動作を確保しつつ、多弾数化も可能なハイキャパシティシリーズはシューターのみならず、サバゲーユーザーからも大きな期待が寄せられた。
1993年9月、今回紹介するコンペンセイター付きのキャスピアン ハイキャパシティと、以前に紹介したスプリングフィールド ハイキャパシティの2モデルが同時発売された。
ところがこのハイキャパシティシリーズ、問題点もいくつかあった。
ひとつはハンマーが落ちている状態だと、バルブノッカーが内部に突出しており、この状態でマガジンを装填すると破損してしまう点。取説にこのことが書いてはあるものの、破損させるユーザーが後を絶たなかったという。
もう一つはグロック17から続くアフターシュートの発射方式だ。これはトリガーを引いてガスがブローバックユニットに流れると、まずスライドが後退を始め、ある程度スライドが後退してからBB弾が発射される仕組みで、スライド動作の慣性により、狙いを外しやすいという欠点があった。
後に改良が加えられたバージョン「ハイパーブロウバック」が発売されるが、この1993年暮れに発売されたウエスタンアームズのマグナブローバックは最初からこれらの点をすべてクリアしており、さらに内部パーツ構成もリアルであったため、これ以降MGCはセールスにおいて苦戦を強いられることとなる。
スライド、フレームともにHW樹脂製で、その重量はなんと1,118g。手にしたときの重量感とバランスはまるで実銃を彷彿とさせる。各部の質感も素晴らしく、さすがモデルガンのトップメーカー、MGCのこだわりを感じる完成度だ。
亜鉛ダイキャスト製のコンペンセイター。ポートから真鍮製のインナーバレルが見える。インナーバレルの内径は6.05mmのタイトバレルが採用されている。フロントサイトがかなり低くなっている。
フルアジャスタブルのボーマーサイト、サムガード、アンビのサムセフティ、オーバルホールハンマーが装備。エキストラクターや、ファイアリングピンの造形もリアルに再現されている。
トリガーは調整付きのスケルトンタイプ。各パーツの作りこみが素晴らしく、外観の完成度という点においては現在の視点で見てもクオリティは高い。ストロークが短く、切れの良いシングルアクションのトリガープルは1,170g。ハレットアクション時代のトリガーフィールに比べたら歴然の差だ。
チャンバーカバーはやや前方へ傾斜している。上部には CASPIAN 38 SUPERの刻印、スライド側面にはWEIGAND COMBAT HANDGUNSの刻印、グリップ上のフレームにはCASPIAN ARMSの刻印がある。
WEIGAND COMBAT HANDGUNSはアメリカのシューターでありガンスミスでもある、ジャック・ウェイガンドが1982年に立ち上げたブランド。
スライドは後退するがエジェクションポート内にはダイキャスト製のユニットが丸見え。WAのM92Fが発売されるまで、ガスブローバックはこれが当たり前だった。また、スプリングフィールドに搭載された固定ホップアップ機能はキャスピアンにはない。キャスピアンはシューティング向け、スプリングフィールドはサバゲー向けという味付けなのだろう。
インナーバレル、アウターバレル共に固定されており、ショートリコイルのギミックはない。
ダイヤモンドチェッカーグリップは樹脂製だが、これを木製グリップに変更すればさらに高級感が増しそうだ。ビーバーテイルのグリップセフティはコンペティションガンらしく固定されている。メインスプリングハウジングはストレートタイプ。大型のマグウェルで素早いマグチェンジにも対応するが、ハンマーを起こした状態でマガジンを出し入れしないと破損してしまうのが難点。
マガジン装弾数は20発。マガジン重量は226gだ。ステンレスの外装にアルミ製のガスタンクを採用しているので、亜鉛ダイキャスト製に比べると軽いが、冷えに弱い。マガジン外部にフォロアー突起はなく、付属の専用BBローダーで弾を装填する。
また、この個体には別途購入したものだろうかラバー製マグバンパーが付属していた。
ダブルカラム、ダブルフィードマガジン。
なおこの個体ではマガジン背面の解放バルブ上部に切り欠きのある改良型が付属していた。初期のマガジンはここに切り欠きがなく、ハンマーが落ちた状態でマガジンを装填するとバルブノッカーがマガジンの角に当たり破損しやすかった。
実際に室内6mほどで実射してみた感じ、ブローバックのスピードや強さはさすがに現代のガスガンに及ばないものの、作動性はよく、バシバシとブローバックし、最終弾を撃ち終えればホールドオープンする。
ただし、アフターシュートの影響もあって、A4ターゲット用紙の上端を狙って撃ってもA4用紙の下半分に着弾する。フロントサイトが低いのはこれを補正するためかもしれない。
初速は75m/s平均と高く、命中精度は6mの距離で12cm程度には集弾した。初期のガスブローバックガンとしては十分な性能だろう。
パッケージ内容は当時発売されたものと若干差異があるかもしれないが、MGCのパワーボンベは当時発売されていたデザインだ。
DATA
発売年 | 1993年9月中旬 1994年新春 (ハイパーBLK化) |
発売時価格 | ¥15,500 (スプリングフィールド ハイキャパシティ) ¥15,800 (キャスピアン ハイキャパシティ) ¥25,500 (ABSシューティングカスタム フルセット) ¥27,000 (ABSシューティングカスタム フルセット シルバー) ¥14,500 (スクワートガン ハイパーBLK化) ¥14,200 (エキスパートピストル ハイパーBLK化) |
全長 | 実測 261mm |
重量 | 実測 1,118g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガスブローバック |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 20発 |
平均初速 | 75.49m/s (0.2g / HFC134a / 26℃) |
撮影協力:ミリタリーグッズ.com
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