MGC ウィルソンLE
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
MGCは、モデルガン時代から独自の作動方式を開発するのが得意なメーカーだった。中でも有名なのが「タニオ・アクション」で、オートマチックピストルのトリガーとスライドを連動させ、指でトリガーを引き続けるだけでカートリッジの装填、排莢をくり返し、まるでブローバック作動しているかのように見える、というものだった。
エアガン時代に入ってからは、ウィルソンLEをはじめとするGM-6シリーズのために「ハーレット・アクション(HARET ACTION:ハレット・アクションとも)」が開発された。ご存じの通り、スライド固定ガスガンの歴史はMGCのベレッタM93Rからはじまったわけだが、これはダブルアクションだからこそ出来た傑作であり、ガスブローバックがまだ影も形もなかった当時、スライド固定のガスガンでシングルアクションの1911系を製品化するためには、絶対に必要なシステムだったのだ。
実際の作動については写真とキャプションをご覧いただきたいが、ハーレット・アクションの実用化により、エアガンの世界にも本格的なシューティングマッチの時代が到来した。モデルガン時代、シューターワンシステムで栄華を極めたMGCは、シューティングマッチなどにも力を入れはじめる。だが結局はガスブローバックガンの登場によって、以後、ほとんどすべての1911系ハンドガンはガスブロへの道をたどることになってゆくわけだ。
当時1911カスタムで、シューターに絶大な人気を誇ったウィルソン。ロブ・リーサム、ブライアン・イーノスの二人のトップシューターが愛用し、その両名の頭文字をとってLEと名付けられた。
モデルガン時代から1911系カスタムはMGCのもっとも得意とするジャンルだった。ヒケもなくよく磨かれたABS製のスライドや、メッキパーツ満載の美しいフレームまわりなど、当時のMGCの高い技術力がよく分かる仕上がりだ。
コンペンセイターにスライドトップのグルービング、ツヤ消し面とポリッシュ面のコントラストが美しい。
上下左右フル可動のボーマーサイト。クリック感も小気味よく、エアガン用のサイトとしては最高の出来ばえ。
エジェクター背面の色が変えてあったり、可動する(機能的にはダミー)ファイアリングピン後端のディティールなど、現代のガスブロよりずっとリアルだ。グリップセフティは押し込んだ状態で固定されている。
トリガーを引いてハンマーが落ち、BB弾が発射された直後の状態。スライドは固定式なので動かない。
指の力をゆるめていくとトリガーが戻るが、それと同時にハンマーが少しづつ起きているところに注目。
トリガーが完全に戻ると、ハンマーも最後までコッキングされ、発射ポジションに戻る。これが「ハーレット・アクション」のトリガー&ハンマー動作だ。
その後、ハーレット・アクションを採用したモデルとしてブラウン・マキシコンポ、デルタ・エリート、センティミーター・カスタム/マスター、ナストフ.45/.38スーパー、ウィルソン・ツインコンプ、ボウランド・ロングコンプ、トロフィー・マスター、シリーズ'70、コルトM1991A1などが92年頃まで展開された。
マガジンはフォロアーが露出した装填しやすいデザイン。緑色のスーパーグレッツBB弾がMGCの純正だった。
ほとんど英語表記のパッケージ。カスタム箇所がすべて書き出されている。
パーツリストのページになぜか「LEGEND」と入っていたり、最後のページにハーブレイ改コマンダーからはじまるMGC製ガバメントの歴史が載っていたりと、なかなか興味深いマニュアル。
マニュアルPDF(1.1MB)
DATA
発売年 | 1986年12月下旬 (オール・シルバー・モデル) 1987年2月中旬 (ブラック・モデル) 1987年春 (フレーム・シルバー・モデル) |
発売時価格 | ¥13,000 (オール・シルバー・モデル) ¥9,800 (ブラック・モデル) ¥12,000 (フレーム・シルバー・モデル) |
全長 | 実測 245mm |
重量 | 実測 860g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | 54.6m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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