MGC グロック17
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
1980年代後半、本格的なガスブローバックの先陣を切ったのはタナカだった。以前紹介したコルトガバメントM1911-A1のデビューは衝撃的だったが、BB弾の発射とスライドの後退にそれぞれ別系統のガスを使うという2ウェイ方式だったため、トリガーが2段引きとなってしまった。最初はスライドがブローバックするというだけで大満足だったガンファンたちも、もっとリアルなアクションを求めるようになるのは当然の流れだったと言えるだろう。
そこに満を持して現れたのがMGCのグロック17だ。トリガーが通常通りの1段引きとなり、スライドが後退した後にBB弾が発射される、いわゆる"アフターシュート方式"のシステムだった。
1991年6月のおもちゃショーではMGCのブースでショーケースに入ったグロック17が4日間の会期中、ひたすら、合計約4万発も作動しているデモンストレーションが話題となった。
設計したのはミスタートイガン、小林太三さん。もはや多くを語る必要もないまさにトイガン界の偉人だが、そもそも、グロックという機種選定に小林イズムを感じずにはいられない。ガバメントのようにウルサ型のマニアが多数存在する定番モデルとは違い、当時、日本ではほとんど知られていなかったグロックをモデルアップすることで様々なメリットがあったと思われる。本体内にブローバックのメカを収納し、かつ作動に必要な強度を持たせるため、フレーム、スライド共に実銃よりかなり厚めに作られていたのだが、それに気付くガンファンはほとんどいなかったはずだ。後に東京マルイが発売したリアルサイズのグロック17を見て、なんて華奢で細いのだとろうかと感じたとしたら、それは完全にMGCグロックの影響だといえるだろう。
作動性能も素晴らしく、2ウェイ方式に比べガス消費量が少ない上に連射スピードも早かったため、またたく間に大ヒット、サバゲーでのサイドアームはほぼ全員がMGCグロック、などということも少なくなかった。さらにキャスピアンやサイドラーなど、MGCのお家芸ともえるシューティングマッチカスタムも製作され、G19やG18といったバリエーションも展開された。
1993年、弾を発射してからブローバックする"プレシュート方式"のマグナブローバックがWAから発売されると、MGCもこれに対抗し1994年初めに"ハイパーブロウバック"と呼ばれるプレシュート方式のメカと、可変ホップアップを搭載した改良型を発売する。ところが同年末MGCは活動停止を発表してしまう。
グロック17から派生した本シリーズは、ベレッタM93Rと並び、MGCのエアソフトガンを代表する傑作であり、いまなお多くのユーザーの手元に、そして記憶に残り続けている。
MGCのグロック17はアンダーマウントの無いGEN 2をモデルアップしている。グリップ部サムレストの凹みが無いのもGEN 2の特徴だ。
実銃のグロックはスライドもツヤ消しだが、MGCではなぜかヘアライン仕上となっている。また本文中にもある通り、実銃よりも全体的に厚みがあり実物のホルスターには入らなかったが、それでも本邦初のグロックトイガンの登場はガンファンの心を確実につかんだ。
実銃に比べるとマズル部が若干出っ張り気味だが、当時のガンファンには何の違和感もなく受け入れられた。
トリガーセフティもしっかりと再現。トリガーを引くとシアーを介してバルブを押す仕組みだが、かかる力が一定となるようクリックが仕込まれており、結果的に独特の引き味になっている。
エジェクションポートからは内部メカが丸見えだが、スライドの後退量はほぼフルストロークの45mm。タナカM1911のスライドストロークに物足りなさを感じていた向きには大きなセールスポイントとなった。
スライドを外すとシンプルなブローバックユニットが姿を現す。アウターバレルが簡単に取り外せるため、当時は金属製のカスタムパーツと交換するのが流行した。
ブローバックユニット後端から突き出ている真鍮製のピストンがスライド内後部の突起に連結し、ここを押し下げることでスライドが後退する。
実銃では一体成形のグリップがMGCではパネル別体となっている。これにより木製グリップなど様々なカスタムパーツが流通するという結果を生んだ。
マガジンボトムプレートをずらすとガスの注入口が現れるというデザイン。こういった細やかなこだわりが実にMGCらしい。
DATA
発売年 | 1991年8月上旬 (グロック17) 1991年11月下旬 (サイドラーカスタム) 1992年3月上旬 (キャスピアン) 1992年4月中旬 (グロック19) 1992年8月末 (グロック23) 1992年10月中旬 (グロック17L) 1993年1月 (グロック22) 1993年4月中旬 (タグバスター) 1993年秋 (キャスピアン ストレートフレイム) 1993年冬 (グロック18) 1994年初頭 (レースコンプ/ヘヴィーコンプ) 1994年夏 (フルオート) |
発売時価格 | ¥13,800 (グロック17) ¥17,500 (サイドラーカスタム) ¥14,000 (キャスピアン) ¥14,500 (グロック19) ¥12,000 (グロック23) ¥15,500 (グロック17L) ¥14,800 (グロック22) ¥19,000 (タグバスター) ¥15,000 (キャスピアン ストレートフレイム) ¥16,500 (グロック18) ¥19,500 (ヘヴィーコンプ) ¥31,000 (レースコンプ) ¥9,900 (フルオート) |
全長 | 実測 205mm |
重量 | 実測 539g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 15発+1 |
平均初速 | 64.8m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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