エルエス S&W M745
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
過去にも何度か触れたが、エルエスはもともとプラモデル模型のメーカーだ。エアガン業界に参入後は、価格帯の低い入門用エアコッキングガンを中心にラインナップしていたが、一方で当時最新のガスフルオートユニットを搭載したAK-74やAKM、ステンマークⅡ、L85-A1、あるいはコンバットセットと呼ばれるバヨネットやサバイバルナイフ、手榴弾のプラモデルシリーズ、はたまたM72-A2ロケットランチャー、M88バズーカといった大物ネタまで、ユニークで幅広いラインアップを有していた。
S&W M745は、過去にもMGCのガスガンを紹介している。あちらはハイエンドモデルともいうべき高級品なので、エルエスのエアコッキングガンと比較するのは酷なのだが、見比べてみると面白いと思う。
本エアガンはもともと1986年発売のエアーハンドガンシリーズ、S&W M645のキットモデルから発展している。内部メカを理解するという意味では、自分で組み立てるキットモデルはかなり有意義な製品だったはずだ。
1989年になるとエルエスはニューエアハンドガンシリーズとしてクオリティアップしたP220やガバメントを展開。次第に完成品モデルも多くなっていった。これら背景には東京マルイの1900円シリーズの人気拡大も影響しているだろう。
肝心の実射性能だが、スライドの引きが少々重く、命中精度もあまり良いとはいえなかった。狙って当てる、という感覚が実感できるのは、せいぜい3mまでといったところだ。やはり同じエアコッキングガンでも、マルイのシリーズには一歩及ばず、といった感が拭えない。
ちなみにこのシリーズのM745とM645のトリガーは同じダブルアクションの位置にある。
いうまでもなく、実銃のM745はシングルアクションなのでトリガーはもっと後ろにあるのだが、エルエスではダブルアクションのM645と共通のフレームを使用しているため、ここは仕方のない部分だろう。
このM645/M745シリーズは後にウッドクリップバージョンや、フレームシルバー&ホワイトグリップ装備のスペシャルなどバリエーションも展開された。
エルエスがなぜM745(とM645)をモデルアップしたのかは分からないが、当時の専門誌でたびたび紹介されたシューティングマッチ用のカスタムガン人気が影響しているのだろう。
また、ハイエンドモデルのMGCに対し、エルエスのような安価なエントリーモデルが同時に存在していたというところに、当時のガンファン層の厚さを感じる。
.45口径の大迫力がうまく再現されたアウターバレル。インナーバレルはアルミ製で、実際のマズルは約4cmほど奥まった部分にある。
ノバックタイプのリアサイト。ダブテイルで固定されており、横方向の調整が可能だ。ハンマーは起きるがコッキングはできない。元が組み立てキットのため右側面にはプラスネジが露出しているのが残念。
スライドは引けるがストロークは約30mmほどしかない。当時としてはエアコッキングガンにフルストロークをもとめるガンファンはあまりいなかったのだ。
下からフレームを見ると左右別体のモナカ構造なのがわかる。ABSパーツは成型時にゆがんでしまうため、どうしても合わせ目にスキ間が目立つ。
本文中にもある通り、エアコッキングガンなので作動自体はシングルアクションなのだが、トリガーはダブルアクションの位置にある。プラ製とはいえ、フレーム側面のヘアライン加工やグリップパネルの木目調がこだわりを感じる。
当時のエアコッキングガンとしては典型ともいえるわりばしマガジン。プラの弾性を利用したリップが付いているが、フォロアーにロックがないためちょっと触っただけでBB弾を一気にバラまいてしまう。
パッケージ写真のトリガー位置はなぜかシングルアクションに見える。写真を加工したのか、はたまた現物のトリガーを後ろに固定した状態で撮影したのか定かではないが、エルエスとしてはその違いを認識していた、ということになる。
照準の合わせ方に「8m以上の時」という想定が。標的紙にさえ当たるかどうかだと思うが、なかなか強気ではないか。マニュアル.PDF (451KB)
DATA
発売年 | 1986年末 (M645 キット) 1987年夏 (M745 キット) 1888年夏 (M745 ウッドグリップ) 1989年春 (M645/M745スペシャル) |
発売時価格 | ¥2,000 (キット/完成品) ¥3,200 (シルバー完成品) ¥3,500 (M745 ウッドグリップ) ¥3,200 (M645/M745スペシャル) |
全長 | 実測 217mm |
重量 | 実測 280g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 17発 |
平均初速 | 47.6m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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