MGC S&W M645

MGC S&W M645 / M745

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

ベレッタM93R以降、数多くのモデルが発売されたMGCのスライド固定式ガスガン。そのシリーズ中、最高傑作との呼び声も高い1丁が、このS&W M645だ。

ヒケのない平滑なスライドとフレームにほどこされた、上品なメッキとヘアーライン。各金属パーツもよく磨かれた上でメッキされており、作動はシルキータッチのようなスムースさ。マガジンはメッキではなく高価なステンレス板からのプレス成形で、実銃と見まごうばかりの出来ばえだった。
 
ヘンな表現かもしれないが、モデルガン以上にここまでリアルなエアガンは、他に類を見ないと言っても過言ではないだろう。事実、モデルガン化も熱望されていたし、個人レベルでモデルガン化のカスタムをするエンスージアストも実在するらしい。

M645のヒットを受け、その後、M745もラインナップに加わった。実銃のM745はシングルアクションだが、M645と同じダブルアクションのまま製品化されたのには驚いた。ここはMGCらしからぬ点だが、コストを考えると仕方のないところかもしれない。

M645のインナーバレルには、らせん状のライフリングが刻まれた「サイクロンバレル」が初搭載された。M745バリエーション、その後のベレッタM92FH&K P7M13にも採用されたが、後の専門誌のコラム(月刊Gun 1989年5月号のカレイドスコープ)ではBB弾にライフリング回転を与えることはないという高速度撮影による検証結果が掲載された。

当時MGCは自主規制で0.4Jのパワーを遵守していたが、さらにライフリングからのパワーロスにより初速が上がらないこともあり、パワフルな他社製品に比べると"命中精度は高いが非力なハンドガン"、というイメージがついてしまったのは残念だ。にもかかわらずヒットしたのは、やはりアメリカのTVドラマ、「マイアミバイス」の影響が大きいのは間違いないだろう。

M645とギャルコのショルダーホルスターがあれば、誰でもすぐに気分はドン・ジョンソン。マルイやマルゼンなどからもM645は発売されたが、MGCのこのリアルさは、他の追従を決して許さなかった。

実射性能だけではなく、製品のリアルさとイメージ戦略でヒットしたエアガンとして、オールドガンファンの記憶に残る1丁だ。

上はM645ピンポインター、下がノーマルのM645
上はM645ピンポインター、下がノーマルのM645
上はM645ピンポインター、下がノーマルのM645。S&W社初の.45DAオートとしてはもともと大型のM645だが、ピンポインターではコンペンセイターの追加などによりさらに大型化している。マズル部のインナーウエイトの効果もあり、フロント部に重量感があるのもリアリティを感じる部分だ。

上はM745ピンポインター、下がノーマルのM745
上はM745ピンポインター、下がノーマルのM745
上はM745ピンポインター、下がノーマルのM745。M745自体がM645の競技用カスタムという位置づけなので、ノーマルというのもヘンかもしれない。

M745ピンポインターのスライド側面
M745ピンポインターのスライド側面。金型がよく磨かれているため、平滑性とツヤが素晴らしい。漆黒のABS樹脂は、HW材などよりずっと実銃のスチールブルーに近いと思うのだがどうだろう。

IPSCの10周年記念刻印
M745には、スピードシューティング競技IPSCの10周年記念刻印が入っている。ロゴマークの下に小さく見えるDVCの重ね文字は、ラテン語でスピード、パワー、アキュラシーを意味している。

M645のマズル
M645のマズル。MGC固定スライドガスガンの最高傑作と呼ぶにふさわしい、端正で美しい銃口ではないか。インナーバレルはライフリング入りのサイクロンバレルで、180mmで1回転のツイストで12条となっている。

アルミ製のコンペンセイター
アルミ製のコンペンセイター。M645、M745ともに形状は同じ。メーカー純正のカスタムパーツとしてはかなり仕上の良い高級品だといえるだろう。

M745にはトリガーストップが装備
M745にはトリガーストップが装備されている。レットオフの位置にピッタリと合わせることで、トリガーのオーバードライブを防ぐことができる。

M645のリアサイト
M645ピンポインターのリアサイト
M645、M645ピンポインターのリアサイトまわり。ピンポインターにはウイチタサイトが搭載され、ハンマーはM745の物に換装されている。

M745のリアサイト
M745ピンポインターのリアサイト
M745、M745ピンポインターのリアサイトまわり。M745はノバックサイト、ピンポインターはM645、M745ともにアンビセフティ。

M645のセフティレバー
M645のセフティレバー。MGCではデコッキング機能が再現されていないため、コック&ロックが可能。グリップのS&Wロゴマークは途中のロットからなくなったようだ。

ピンポインターのセフティレバー
ピンポインターのセフティレバー。M1911タイプのセフティーに換装され、本来のコック&ロック仕様となっている。

マガジン
とても仕上の良いステンレス製マガジン。ピンポインターにはマガジンバンパーが装着されている。装弾数はどちらも15発。

パッケージ
モデルガン時代のMGCはイラスト中心のパッケージが多かったが、この頃から製品そのものを見せる写真のパッケージに変わっていった。

マニュアル
イラコバさんの楽しいイラストが満載のマニュアル。もちろん、表紙ページにはドン・ジョンソンが描かれている。マニュアル.PDF (16MB)

DATA


発売年 1988年11月16日 (M645)
1989年9月13日 (M745 D.A.)
1990年春 (M445 ブラックモデル)
1990年5月中旬 (M645/M745ピンポインター)
発売時価格

¥15,000 (M645)
¥25,000 (M645ピンポインター)
¥17,000 (M745)
¥25,000 (M745ピンポインター)
¥12,000 (M445 ブラックモデル)

全長 実測 212mm (M645/M745)
実測 262mm (M645/M745ピンポインター)
重量 実測 682g (M645)
実測 736g (M645ピンポインター)
実測 691g (M745)
実測 752g (M745ピンポインター)
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガス
使用弾 6mmBB弾
装弾数 15発
平均初速 46.8m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/12/06


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