MGC ベレッタ M92F
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
1985年、米軍がトライアルテストの結果ベレッタM92Fを採用、ハリウッドアクションや香港ノワールなどで主人公たちがM92Fを使うようになると、日本のガンファンたちはますますM92Fエアガンの決定版を熱望するようになった。
しかし、当時の市場にあったガスガンはマルシン製品だけで、リアルさや実射性能の点ではすでに時代遅れの感が否めなかった。そこに満を持して登場したのがMGCのベレッタM92Fであり、そのリアルさにはすべてのガンファンが狂喜乱舞したと言っても過言ではないだろう。
機構的には、リキッドチャージマガジンによるバレル後退式のスライド固定ガスガンだ。基本的にはM93Rとほとんど変わらないが、外観のリアルさは群を抜いており、いま見てもホレボレするような雰囲気と圧倒的な存在感を放っている。
装備の目玉だったのはダブル・ボア・サイクロンバレルで、S&W M645から採用されたライフリング入りのインナーバレルだ。バレル内で空気がBB弾を一定に保持し、浮いたような状態で撃ち出すため命中精度が高い、というのがウリだったが、実際にはほとんど効果がなかった。それどころかパワーロスが大きく、社外品のカスタムインナーバレルに交換するユーザーが後をたたなかったようだ。
それでも、リアルなM92Fを市場に投入したという功績は大きく、かなりのヒット作となった。こうしたMGCの快進撃は、この後、WAがマグナブローバックを発売するまで続くことになるのだ。
トイガンM92Fのスタンダードフォルムとも言える、説得力に満ちあふれた外観。当時としては最新の米軍制式採用の軍用ピストルであり、映画『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』『男たちの挽歌』など、多くの作品に登場した憧れのヒーローの銃でもあったのだ。
オリジナルのインナーバレルは真鍮製のサイクロンバレルだが、この個体では社外品のカスタムパーツに交換されている。発売当初から、サイクロンバレルの性能に不満を感じるユーザーは少なくなかった。
こちらは編集部所有のダブル・ボア・サイクロンバレル。内径6.2mm、マズルから21mmが内径7.2mmとなる段付きバレルとなっており、さらに右回り12条のライフリングが切ってある。
一体成形とは思えないほどに絶妙な形状のエキストラクターに対し、ファイアリングピンブロックのモールドは雑な造形で少々残念。
セフティレバーが収まるスライドの溝にはミーリングマシンのツールマークが再現されている。MGCはモデルガン時代からこういう部分の表現が上手かった。セフティレバーにはデコッキング機能がない。
フレームにはパーティングラインが残っているが、後に発売されたM92Fのモデルガンでは金型の構造を見直し、パーティングラインが出ない成形方法に進化している。
M93Rから続くMGCのお家芸、バレル後退式の発射メカニズム。ただBB弾を装填するのではなく、チャンバーの方からBB弾を「迎えに行く」という逆転の発想。このタニコバイズムこそが、最盛期のMGCを支える原動力だったと言っても過言ではないだろう。ハンマーはカスタムパーツに交換されている。
スライド内部は空っぽで、ハンマーに打撃されたファイリングピンがノッカーを勢いよく下降させ、マガジンのバルブを叩くというシンプルなメカニズム。
スチールプレス製のリキッドチャージマガジン。前面にはフォロアーを引き下げる突起があり、MGCらしいリアルさと実用性を兼ね備えたバランスの良さ。
イラコバさんのイラストと解説で楽しく読ませるMGCならではのマニュアル。装弾数が22発から21発に訂正してあるところなど、製品に対する責任感が感じられる。マニュアル.PDF (1.3MB)
DATA
発売年 | 1990年7月中旬 |
発売時価格 | ¥15,000 ¥17,500 (ヘヴィーウェイトモデル) |
全長 | 実測 219mm |
重量 | 実測 695g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式スライド固定ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 21発 |
平均初速 | 54.2m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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