エルエス トンプソン改ポンプアクション
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
本コーナーではこれまで様々なエアガンを紹介してきたが、中には少々首を傾げたくなるような、まあ、あまり出来が良いとはいい難い物があったのも事実だ。
だが、ここまでヘンテコなエアガンは正直はじめてである。トンプソンなのにポンプアクション?しかもレシーバーが短すぎるし、グリップの形もなんだかヘンだ。いったい、何をどうしたらこうなるのか!
話を整理しよう。LSについては過去にウージーSMGの回でもふれた通り、様々な銃を1/1スケールのディスプレイキットモデルとして発売していた模型メーカーだった。
1980年代に入ると、それらをベースとしたつづみ弾のスプリングガンを発売、エアガンブームに押される形でBB弾仕様のエアソフトガンを次々と発売したが、どれも外観のディティールが素晴らしくリアルで、さすがはプラモデルのLSといわれるほどの製品ばかり。
中でもエアコッキングガンのトンプソンM1921は秀逸で、MGCのモデルガンをもしのぐほどのリアルさを誇っていた。当時、エアガンとしては唯一のトンプソンだったこともあり、かなりの注目を集めたものだ。
しかし、トンプソンに限らずLSの製品は全体的に強度が低く、サバゲーでのハードな使用には耐えられなかった。価格帯は安かったが、買ってすぐに壊れてしまうようなエアガンではファンが離れてしまうのも当然だ。
くわえて、世はまさにケースレス多弾数エアコッキングガンの全盛期をむかえており、実銃と同じコッキング方式のままでは他社に太刀打ちできない。そこでLSが出した答えが、このトンプソン改ポンプアクションだったというわけだ。
他にもM16をポンプアクション化した製品もあったが、トンプソン改の奇妙キテレツぶりは群を抜いている。シリンダーより後ろのレシーバーはバッサリと切り捨てられ、バレルを被う形で設置されたフォアエンドのおかげで、せっかくの冷却フィンもほとんど見えない。
見れば見るほど摩訶不思議な形をしているが、模型メーカーのプライドをかなぐり捨ててここまで変身したにもかかわらず、結局、LSは1992年に倒産してしまう。願わくば、ここまで変わり果てた姿となる前に、美しいトンプソンのままで終焉をむかえてほしかったものだ。
なにごとも付け焼き刃や急場しのぎで苦難を乗り切ることはできない。そんな教訓を我々に教えてくれたエアガンだったのではないだろうか。
元の姿を想像し難いほど大改造されたLSトンプソン改 ポンプアクション。レシーバー後端が短くなっており、金型自体を改修したのだとすれば実にもったいない。とはいえ、しばらく眺めているとこれはコレでありというか、自由な発想力も感じる。
インナーバレルはアルミ製。フォアエンドはアウターバレルを包み込むような形で設置されており、内部のスチールパーツからだろうか、赤サビが出ている。
リアサイトはLSオリジンルデザイン。せめてここは実銃トンプソンの簡易型を再現してほしかった。
ピストルグリップは約200発ほど入るBB弾のリザーブタンクとなっている。ちょっとした工具なども収納可能だ。
フォアエンドは元々のコッキングハンドルとスチール板で連結されている。作動はスムースで剛性も強い。
なぜかマガジンがバレルと平行に収納できるようになっており、ピストルグリップまで折り畳める。まるでフランスのMAT49みたいだが、よく見るとグリップは64式小銃に似ている。まさに時空を超えたデザイン。
マガジンキャッチは存在せず、プラ爪の弾性でマガジンを固定する。
マガジンはリザーブタンクに約300発ほどのBB弾が入り、下部の突起を操作してマガジン本体へBB弾を移動させる仕組み。
本モデルのバリエーションとしてハンドガンサイズまで切り詰めたミニトンプソン(3,300円)、500連ドラムマガジン装備のトンプソン改ドラムタイプ(5,800円)、トンプソン改ホールディングストック付き(5,800円)も発売された。
DATA
発売年 | 1986年秋 (キット) 1988年春 (完成品) |
発売時価格 | ¥4,800 (トンプソン改ポンプアクション・キット) ¥5,800 (トンプソン改ポンプアクション・完成品) ¥3,300 (ミニトンプソン) ¥5,800 (トンプソン改ドラムタイプ) ¥5,800 (トンプソン改ホールディングストック付き) |
全長 | 実測 493mm(ストック伸長時) |
重量 | 実測 936g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 25発 リザーブタンク内約300発 |
平均初速 | 62.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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