光学照準器を使いこなす 豆知識&用語集

光学照準器を使いこなす 豆知識&用語集

レポート:池上ヒロシ

スコープ&ドットサイト用語説明

倍率
ターゲットをどれだけ大きく見せるかという比率。拡大も縮小もしない、肉眼で見たのと同じ大きさが「1倍」で、そこから数字が増えればターゲットも大きく見えるようになる。サバイバルゲームなど、一般的なエアガンの使用方法では1~4倍といったあたりが最も使う機会が多い。それより大きな倍率は、特別に性能の良いエアガンで特別な狙撃を行う時や、遠距離での精密シューティング競技などの限られたシーンで威力を発揮する。



レンズ径

対物レンズの大きさ。これが大きいほど、スコープで見える像が明るくなる傾向がある。だが、あまり大きいと銃への取り付けに不具合が出ることがあるし、また倍率によってはあまりレンズ系が大きくても意味がない。



チューブ径

スコープの中間部分の筒状になったところ、マウントするときにリングで締め付ける部分の直径。かつては1インチ(25mm)径のスコープが主流だったが、今はそれより太い30mm径のスコープがほとんどだ。チューブ径の太さは、スコープ自体の頑丈さと、レティクルの移動量の大きさやサイドフォーカス機能の組み込みなどにメリットがある。



M.O.A.

角度の単位。「エムオーエー」と読むことが多い。射撃の世界では「100ヤード先で1インチ」となる角度を1M.O.A.として扱う。30m先なら8.4mm、10m先なら2.8mmとなる。



ミルドット
「MIL=ミル」もM.O.A.と同じく角度の単位だ。射撃の世界では「1000m先で1m」となる角度を1ミルとして扱う。「ミルドットレティクル」と呼ばれるレティクルでは、中心部周辺に等間隔に並んだ丸い点「ミルドット」が描かれている。ターゲットを最も拡大した時(パワーセレクターを最も大きな数字に合わせた時)に、ドットとドットの間隔が1ミル(1000m先の1m)になるように設定されている。大きさが分かっているターゲットをミルドットレティクルで見た時に、ドットいくつ分の大きさに見えるかによってターゲットまでの距離を計算することができる。



アイリリーフ

一般的な望遠鏡と違い、スコープは接眼レンズを眼から少し離した状態で使用するが、その距離が遠すぎても近すぎても見える範囲が極端に狭くなってしまう。適切にスコープを使える状態の眼と接眼レンズの距離をアイリリーフと呼ぶ。



作動幅

レティクルの移動量が、中心から上下・左右それぞれにどれだけの大きさが確保されているかを示したもの。「UP/45M.O.A. R/45MOA」と書かれていた場合、中心から上下方向にそれぞれ45M.O.A.、左右方向にそれぞれ45M.O.A.レティクルを移動できるという意味になる。



インパクトポイント

ズームを最大にしたときと最小にしたときとで、レティクルの中心が指し示す位置がどのくらいズレるかを示したもの。



F.O.V.
(フィールド・オブ・ビュー)
スコープで見える範囲がどのくらい広いかを表したもの。具体的には、100m先で視界の端から端までの長さを計測したものだ。倍率が小さければ広いし、大きければ狭くなる。



スコープの各部名称


エレベーション調節ノブ
上下調節をするためのダイヤル。

ウインデージ調節ノブ
左右調節をするためのダイヤル。

ディオプター
焦点合わせをするためのダイヤル。各個人で異なる視力に合わせてレティクルのピントをあわせるためのもの。

パワーセレクター
拡大/縮小をするためのダイヤル。

サイドフォーカス
ターゲットのピントを、レティクルと同じ位置に合わせるためのもの。高倍率スコープでは必要になってくる。

接眼レンズ
手前側、射手に向いている方のレンズ。

対物レンズ
奥側、ターゲットに向いている方のレンズ。

高倍率スコープだと対物レンズが大きくなる理由


一般的に言って、高倍率のスコープは先端がラッパのように広がっていて大口径の対物レンズを備えており、低倍率のものは筒の部分が真っ直ぐで対物レンズの口径もそれほど大きくない傾向がある。
スコープは、対物レンズで集めた光を一度一点に集めて、その後に適切な大きさに広げて射手の眼に届ける仕組みになっている(そのままだと上下逆転するので、もう一度上下逆転するという手順がある)。だから、大雑把に言えば対物レンズ大きければ大きいほど、射手の眼に届く光の量は増える。つまり、見える像が明るくなる。

ならば、対物レンズは大きければ大きいほど良いのか? そんな単純なものではない。人間の眼、具体的には瞳の大きさが決まっているため、求められる倍率によって適切な対物レンズの口径、言い換えると「それ以上大きくしてもあまり意味のない大きさ」というのが決まってくる。
「瞳径」という指標がある。対物レンズの直径を倍率で割ったものだ。日中にスコープを使用する場合、この数字が3~4程度あれば、十分に明るく見えると言われている(逆に3を下回ると、あからさまに暗く見えるようになる)。もちろん、レンズの枚数や質、コーティングの有無などによって変化するので、あくまで指標の一つだ。

ちなみにSURE HIT 1624IRは対物レンズ径24mm、最大倍率6倍なので瞳径は24÷6=4。SURE HIT 41650は対物レンズ径50mm、最大倍率16倍なので、瞳径は3.125となる。両方とも必要とされる瞳径を確保するためにちょうど良い対物レンズ径が採用されていることが分かる。スコープの形が違うのは、ちゃんと性能を確保するために考えられた設計の結果ということだ。

「パララックス」って何?


光学照準器の話をするときに良く出てくる「パララックス」という言葉だが、二通りの意味で同じ言葉が使われるため、ちょくちょく混乱の元になる(実際、2つの意味を混同したまま使用を続けて、書かれている内容が支離滅裂になっている専門書を見たことがある)。


比較的よく使われる例、つまり一般的な意味としては、「照準線と銃身軸線の差」だ。言い換えるとスコープの高さ/低さという意味になる。M16やM4などのアサルトライフルでは、ストック形状の関係で必然的にスコープを高くマウントしなければならない、つまりパララックスが大きくなる。一方、ボルトアクションライフルではスコープを低くマウントできるため、パララックスは小さくなる。

この意味でのパララックスの大小は、距離による着弾位置の上下変化に関わってくる。パララックスが大きい場合、近距離で狙った場所にどんぴしゃりで当たるように調節すると、少し距離が離れただけで弾は狙った場所よりずっと上に当たるようになってしまう。パララックスが小さい場合、照準線のすぐそばから弾が撃ちだされるため、距離による上下変化が少なくなるという利点がある。


もう一つの意味、これはあまり一般的とはいえないけれどスコープを正確に使おうとする場合には重要になってくるのだが、「レティクルが投影されている距離と、ターゲットまでの距離の差」を表すことがある。

スコープは、レンズの組み合わせによってレティクルを遠方に投影し、それをターゲットと重ねあわせることによって照準するものだということは既に述べたとおり。低倍率スコープの場合はそれほど問題にはならないのだが、高倍率スコープになってくると、そのレティクルが投影される距離とターゲットまでの距離の微妙な差が、レティクルははっきりと見えているのにターゲットがぼやけて見えてしまう問題、銃を固定したままスコープを覗く位置を変えるとレティクルがターゲットの上を動いてしまう問題として現れてくる。

そのため、高倍率スコープにはパララックスを調整するための「フォーカスノブ」がついている。かつてはメカニズム的な問題で対物レンズの近くにあるものが多く「フロントフォーカス」と呼ばれていたが、頻繁に調整する必要がある部分ということもあり、より手が届きやすいスコープの側面に設けられたものが増えてきており、それは「サイドフォーカス」と呼ばれる。

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2015/04/29

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