[パート1 日本の対空装備] [パート2 観閲行進] [パート3 対空戦闘訓練]
2010年4月29日、昭和の日、千葉県若葉区にある陸上自衛隊 下志津駐屯地にて創設55周年記念行事「つつじ祭り」が開催されたのでレビュー。パート2では実際の観閲行進による装備について解説する。
千葉県下の各市町村の旗をなびかせたパジェロベースの73式小型トラック。これに観閲部隊指揮官 高射学校副校長 住吉一俊 1等陸佐、高射教導隊長 菅田雅之 1等陸佐らが続く。
高射教導隊本部管理中隊所属の対空戦闘指揮装置。
師団高射特科連隊指揮所地域に展開し、目標情報の統合、目標の選定、対空戦闘の指揮・統制および戦闘記録や評価を行う師団対空情報処理システム「DADS」の中枢。
73式大型トラックに搭載され機動性に優れている。
高射教導隊本部管理中隊所属の無線伝送装置車。
高機動車に積載された、低空レーダ装置 JTPS-P18。
高射特科連隊の情報小隊に装備され、主として低空域の目標情報資料を収集する。師団対空情報処理システム「DADS」に対して、目標の方向、距離、識別及びジャムストローブを伝送できる。
73式大型トラックに搭載された対空レーダー装置 JTPS-P14。
続いて高射教導隊 第1高射中隊の車両が登場。
第1高射中隊は81式短距離地対空誘導弾(C)、通称「短SAM」を装備する。
これは81式短距離地対空誘導弾の射撃統制装置搭載車両。装置上面にはパッシブ式のフェーズドアレイレーダーが折り畳まれている。
81式短距離地対空誘導弾(C)、愛称「ショートアロー」、通称「短SAM」の発射装置。
短SAMは昭和56年(1981年)に制式化された国産対空火器。SKW-475の新型73式大型トラックに搭載されている。
主として師団作戦地域内の低空域を全般に対空掩護する。ひとつの射撃統制装置と二つの発射装置によりシステムとして運用される。
短SAM発射装置に搭載されたSAM-1C 訓練弾(電波弾用)。
もう一台の短SAM発射装置。SKW-462改良型73式大型トラックにやや形状の異なるもの。
短SAMの各発射装置は誘導弾4発と、予備弾2発を搭載し、同時に2機の目標に発射できる。
高機動車に搭載された93式近距離地対空誘導弾、通称「近SAM」。35mm二連装高射機関砲 L-90の後継として配備が進められている。
続いて第4高射中隊が行進する。第4高射中隊は純国産の中距離防空用地対空ミサイルシステム、03式中距離地対空誘導弾、通称「中SAM」を装備する。
最初に登場したのはその射撃用レーダー装置。
中SAMのレーダ信号処理・電源車。
03式中距離地対空誘導弾はその名の通り2003年度に制式化された。
03式中距離地対空誘導弾、中SAMの発射装置。発射装置には2段3列の箱形の収納内部に、最大6発の誘導弾を搭載し、射撃統制装置からの指令を受けてミサイルを垂直発射する。
中SAMは下志津駐屯地の高射教導隊のほか、千葉県 松戸駐屯地の第2高射特科群、兵庫県 青野原駐屯地の第8高射特科群にも配備されている。
中SAMのミサイルの運搬・装填装置。
キャニスターと呼ばれる長い箱状のなかにミサイル本体が納められており、発射機のものと交換できるようになっている。
次に登場してきたのは、第310高射中隊。第310高射中隊は改良型ホーク 地対空誘導弾を装備する。
73式大型トラックに牽引される、高高度の航空機を補足するパルスレーダーP-1(手前)と、低高度の航空機を補足するCWレーダー(奥)。
73式大型トラックに牽引される、ホーク誘導用の電波を照射する高出力イルミネーターレーダーP-3。
73式大型トラックに牽引される、改良ホークの発射機(LAU=LAuncher Unit)。
改良ホークミサイルを3基搭載できる発射機。
第3高射中隊の96式装輪装甲車。愛称は「クーガー」。平成8年(1996年)に制式化された。
第3高射中隊の87式自走高射機関砲で、愛称は「スカイシューター」。1987年に制式化。高射特科部隊に装備され、主として機動的に運用される部隊の対空掩護に使用される、スイスのエリコン社製35mm対空機関砲を双連し、射統装置を搭載した装甲装軌車。1輌あたりの調達価格は15億5500万円と90式戦車の11億2400万円より高い。
後方からみる87式自走高射機関砲。
車体部分は74式戦車をベースとし、速度53Km/hで機動部隊に随伴することができる。砲塔上部の後方にT字のパルス・ドップラー方式の索敵レーダーと、正面を向いた丸形の追尾レーダーを配置する。
最後に東部方面後方支援隊、高射教育直接支援中隊が登場。この中隊は各整備支援を行い、高射教導隊が保有する高射火器、車両等の整備を行う部隊。
以上が観閲行進での車両群となる。
このようにみると現用の陸上自衛隊の対空装備は低空近距離順に、近SAM、短SAM、中SAMとミサイルシステムによって陸自に与えられた防空範囲をカバーできるように構成されている。いずれは87式自走高射機関砲も近SAMにとって代わられると思われる。また2005年度から技術研究本部では81式短SAMをキャニスター発射方式にした短SAM(改II)を開発中で、これによりミサイルの素早い装填と交換が可能になるだろう。
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