平成22年 習志野 第一空挺団 降下訓練初め

平成22年 習志野 第1空挺団 降下訓練始め

2010年1月10日に千葉県船橋市の習志野演習場にて行われた第1空挺団の降下訓練始めの模様をレビュー。

習志野第1空挺団は陸上自衛隊の中央即応集団隷下に属する陸上自衛隊唯一の空挺(エアボーン)部隊。
以前は東部方面隊隷下だったが、2007年に防衛大臣直轄の機動運用専門部隊である中央即応集団隷下になった。
その背景には対テロなどの有事対応の必要性が高まってきたことに起因している。
団員総数は約1,900名、もちろん団本部は千葉県船橋市の習志野駐屯地にある。

降下訓練始めは、昭和44年に習志野演習場(習武台)において、1年間の降下訓練の安全を祈る「開傘祈願祭」として行っていた部内行事を昭和49年に一般公開したのが始まりで、昭和51年からは防衛庁長官の視察を受け、第1空挺団の年頭行事「降下訓練始め」として現在では防衛大臣を迎えての行事となっている。
今年の降下訓練始めは航空自衛隊の航空支援集団、陸自の第1ヘリコプター団、第1師団、東部方面航空隊、富士教導団、中央即応連隊の支援を受け、総参加人員約400名、支援航空機20機、支援車両53両での開催となった。

VIP達を載せたヘリ
習志野台地の静かな早朝、VIP達を載せたヘリが次々と着陸する。

警備する隊員招待席を警備する隊員。
この日は雲ひとつない快晴に恵まれた。
オーロラビジョン一般観客席右手にはオーロラビジョンが設置されていた。

UH-60ブラックホーク汎用ヘリ
米陸軍のUH-60ブラックホーク汎用ヘリが登場!!

米陸軍のお偉いさん神奈川県のキャンプ座間から米陸軍のお偉いさんが到着。
やはり、ACUはカッコいいですな。

各指揮官がジャンプ
上空にCH-47Jチヌーク輸送ヘリが飛来し、数名の各指揮官がジャンプする。

第一空挺団長の永井昌弘陸将補
この空挺隊員、実は第1空挺団長の永井昌弘陸将補。団長自ら落下傘で降下して登場!! 渋い。
50歳を超えてもなおこの体力、さすがは空挺隊員の鏡だ。
ちなみにこの丸い落下傘、フランス製のM696M1というもの。一般の空挺隊員も使用する。

CH-47チヌーク輸送ヘリ
そしてオーラ漂うCH-47Jチヌーク輸送ヘリが着陸すると...。

防衛大臣が登場
本日の一番偉い人、防衛大臣が登場し、団長がお出迎え。

北澤俊美防衛大臣北澤俊美防衛大臣が観覧席に着き、双眼鏡を構える。
もともと自民党出身で、細川護煕・羽田孜政権に参加後、民主党入りした。
偵察小隊が1400mから降下さて、ここから演習開始。
まずは偵察小隊が高度1400mから降下。
偵察小隊が使用している落下傘はMC-4と呼ばれる自由降下用の落下傘で、装備の重量は22kgもある。
偵察小隊のオフロードバイク偵察小隊のオフロードバイクが丘を一気に駆け上がる。ちなみにカワサキのKLX250がベースの偵察用バイク。
カワサキKLX250
偵察小隊はさらに丘を越えて前進し、偵察を継続する。

UH-1汎用ヘリコプター続いてUH-1H汎用ヘリコプターが飛来する。
スナイパーチームが4名搭乗
ヘリの側面にはスナイパーチームが4名搭乗している。

ギリースーツでカモフラージュフックで引っ掛けているだけ。
怖くないのかなぁ。

隊員はギリースーツでカモフラージュしており、ヘリから飛び降りてパタリと伏せると演習場のタンカラーの地面に溶け込むように見えなくなる。
ツーマンセルで二手に分かれ
ヘリから飛び降りた計4名のスナイパーチームは、ツーマンセルで二手に分かれて狙撃ポイントまで腰をかがめて移動する。

レミントンM24 SWS
狙撃ポイントまで移動すると射手と観測手にわかれてプローン(=伏射)でターゲットを追う。
レミントンM24 SWSベースのボルトアクションライフル「対人狙撃銃」で、7.62mm×51旧NATO弾を使用する。

OH-1観測ヘリと、OH-6観測ヘリ上空ではOH-1観測ヘリと、OH-6観測ヘリが敵陣地を偵察する。
AH-1J、通称コブラ攻撃ヘリ
その後すぐにAH-1S攻撃ヘリ、通称コブラが対地攻撃を仕掛ける。

C-130ハーキュリーズ輸送機さらに多くの空挺隊員を航空自衛隊のC-130ハーキュリーズ輸送機で降下させる。
C-1輸送機航空自衛隊のC-1輸送機も交互に空挺隊員を降下。
場内アナウンスでは、「コース良し、コース良し、用意、用意、用意、降下!、降下!、降下ぁーっ!!」と流れる。
青空に落下傘
ピーカンの青空に落下傘が映える!! 
着地した隊員は速やかに落下傘を外し、携行袋から銃を取り出し射撃できる体勢をとる。そして敵との遭遇に備えつつ、迅速に集結地で結集し小隊長の指揮下に入る。小隊長は隊員が集結次第、中隊長へと報告し、さらに中隊長から指示された目標地点を占領するため前進する。

稜線を超えてさらに前進狙撃チームは稜線を超えてさらに前進を開始。
ライフル小隊後方からはライフル小隊が前進してくる。
写真中央の隊員の折曲銃床式の89式小銃には2007年度予算で調達が始まった官給品である89式小銃用照準補助具と呼ばれるドットサイトが搭載されている。形状はAimpoint COMPシリーズやMD-33ドットサイトに近いチューブタイプだ。
89式小銃
89式小銃は口径5.56mm、全長920mm(折り畳み時/670mm)、重量3.5kg、作動方式はガス圧利用、給弾方式は箱弾倉。
写真はフラッシュハイダー部に空砲用のマズルブレーキを装着している。

配置に付く
丘の上に移動し配置に付く。ちなみに隊員の着ている迷彩服は1992年より陸上自衛隊に導入された迷彩服(2型迷彩と呼ばれる)で、現在では襟や袖の留めをボタンからベルクロに変更した3型迷彩と呼ばれる被服が導入されている。

01式軽対戦車誘導弾01式軽対戦車誘導弾で仮想敵戦車を狙う。
川崎重工業が開発し、2001年に制式となった。
赤外線映像誘導式による撃ち放し能力を有し、トップアタックモードと低伸弾道モードを使い分けることができる。
ま、いってみればアメリカのジャベリン対戦車ミサイルみたいなもの。
ヘリに吊り下げられた軽装甲機動車後方上空ではスリングによってC-47Jヘリに吊り下げられた軽装甲機動車を着地させる。
軽装甲機動車ライトアーマー軽装甲機動車は愛称ライトアーマーと呼ばれ、小松製作所が製造する。
戦闘重量5.5t、160馬力のディーゼルエンジンを搭載し、航続距離は約500kmを誇る。
120mm迫撃砲 RT軽装甲機動車と同時に120mm迫撃砲RTもヘリから一門投下され、さらに高機動車に牽引された数門を加え、迫撃砲陣地を構築する。
迫撃砲陣地
できあがった120mm迫撃砲陣地。偽装ネットでカモフラージュされている。通常弾での最大射程は約8,100mもある。

2機のCH-47チヌーク2機のCH-47Jチヌークが近づいてくる。
ファストロープで隊員が降下ファストロープで隊員が次々に降下する。
1機のチヌークに10名が搭乗している。
20名のライフル小隊チヌーク2機分、20名のライフル小隊が降下する。
丘を駆け上る隊員丘を駆け上る隊員。
ミニミ軽機関銃を抱え
重量7.01Kgもあるミニミ軽機関銃を抱えて丘を駆け上る隊員の顔には気迫が感じられる。
ちなみにミニミは口径5.56mm×45 NATO弾、全長1040mm、給弾方式は弾倉かベルト給弾、発射速度は750~1000発/分。

対戦車地雷を散布上空では機体側面にフロートを装着し対戦車地雷を散布するUH-1ヘリが飛来し地雷散布を行った。
散布地点に付くと上空からフロート内の対戦車地雷をバラバラと落とす。
射撃を開始丘の上の稜線に添って横一列に伏せ、敵陣地に向けて射撃を開始する。
使用するアサルトライフルは89式小銃折り曲げ銃床式
地面を掘って射撃の前にスコップを取り出して地面を掘っていたりした。
撃たれる隊員
あっ!! 撃たれた!? 右端の隊員が大きく仰け反って倒れる。

隊員2名がカバー隣の隊員2名がカバーしながら斜面下へ引きずり、後方の安全な低地へ連れてゆく。
救護班救護班を呼び、応急処置を行う。
負傷した隊員はヘリで後送その後、負傷した隊員はUH-1汎用ヘリでメディックに担がれ後送された。
もちろんこの一連の流れもデモンストレーション、つまり訓練だ。
.50口径M2ブローニング重機関銃
上空からはUH-1汎用ヘリに搭載された.50口径M2ブローニング重機関銃で敵陣地を掃射。

01式軽対戦車誘導弾 9mm機関けん銃敵陣地の戦車へむけて携帯式の01式軽対戦車誘導弾で応戦する。
この隊員はセカンダリウエポンとして、9mm機関けん銃を装備している。

9mm機関けん銃は、9mm×19拳銃弾を使用し、全長399mm、重量2.8kg、装弾数25発の、いわばマシンピストル。
ミニミの5.56mm弾を掃射
ソフトターゲットにはミニミの5.56mm弾を掃射する。空砲のマズルブレーキが付いたトコトコトコという軽快な射撃音。ちなみに、この隊員のヘルメットにぶら下がっているコンパクトなゴーグルは、以前ハイパー道楽でもレビューしたU.S.C.R.社 T3タクティカルゴーグル

AH-1Jコブラ攻撃ヘリ
一気に攻勢をかけるべく、上空からはAH-1Sコブラ攻撃ヘリが対地攻撃で地上戦力を支援する。

仮想的の74式戦車仮想敵の74式戦車はまるで意気消沈したかのように、砲身を下へ向け煙を吹く。

ヘリで一気に輸送隊員を地上のハーネスにつるしてヘリで一気に輸送する。つる下がったままでも各隊員はライフルを構えているのがカッコいい。

ライフルを構えている

車両部隊が前進
敵が劣勢になったのをきっかけに車両部隊も前進する。偽装された車両はもう高機動車だか、軽装甲機動車なのかもわからないほどに巧みにカモフラージュされている。
この日参加した支援車両は74式戦車×4両、89式装甲戦闘車×2両、96式装輪装甲車×4両、軽装甲機動車×17両、高機動車×15両、73式小型トラック(パジェロ)×7両、偵察用オートバイ×4両。

OH-1観測ヘリ、AH-1Jコブラ攻撃ヘリ、OH-6観測ヘリ、CH-47チヌーク輸送ヘリ
上空のヘリ部隊もいっせいに進軍する。頭の中ではワルキューレが流れている。写真左上から右へ、OH-1観測ヘリ、AH-1Sコブラ攻撃ヘリ、OH-6観測ヘリ、CH-47チヌーク輸送ヘリ。
この日参加した支援航空機はC-1輸送機×2機、C-130輸送機×2機、CH-47J輸送ヘリ×6機、AH-1S攻撃ヘリ×3機、UH-1H汎用ヘリ×4機、OH-6観測ヘリ×2機、OH-1観測ヘリ×1機。


ここまでで訓練展示はお終い。
最初の偵察小隊のパラシュート降下から実質わずかに30分の出来事であっという間だった。

防衛大臣からの訓示最後に北澤防衛大臣からの訓示。
「防衛省、自衛隊は新たな脅威や多様な自体に即応することが必要であり、第1空挺団の役割が今後も必要である。
団長の下、第一空挺団みなさんが一丸となって今年一年、訓練に精錬されることを、みなさんの益々の活躍と健康を祈念する。」と話した。
訓辞を聞く空挺隊員
整列して訓辞を聞く空挺隊員たち。

演習終了後、使用された戦闘車両が展示され一般に開放されていた。
74式戦車74式戦車。1974年制式。
乗員4名、重量約38t、全長9.41m、最高速度53km/h、行動距離約300km、105mm戦車砲×1、12.7mm M2機関銃×1、74式車載7.62mm機関銃×1、三菱重工製。
今となっては90式戦車やTK-Xと呼ばれる新型戦車に比べて古さは隠せない。
89式装甲戦闘車89式装甲戦闘車。愛称ライトタイガー。
乗員10名、重量26.5t、全長6.8m、最高速度約70km/h、移動距離約400km、35mm機関砲×1、74式車載7.62mm機関銃×1、79式対舟艇対戦車誘導弾発射装置×2、車体砲塔制作は三菱重工。
戦場で戦車に随伴しながら歩兵を輸送する目的の機械化戦闘歩兵車両だ。
96式装輪装甲車96式装輪装甲車。愛称クーガー。
乗員10名、重量約14.5t、全長6.84m、最高速度100km/h、移動距離約500km、96式 40mm自動てき弾銃または、12.7mm重機関銃×1、小松製作所製。
これも兵員輸送を目的とした車両で偵察任務などにも使用される。
軽装甲機動車。愛称ライトアーマー。
全長4.4m、全幅2.04m、全高1.85m、空車重量4.5t、乗員数4名、最高速度100km/h、ディーゼルエンジン160馬力、 行動距離約500km、小松製作所製。

米陸軍キャンプ座間からやってきたUH-60ブラックホーク汎用ヘリコプターも展示。クルーとともに記念撮影。

空挺館この日は空挺館の一般展示が行われていた。
もちろん観にいく。
もともと天皇や皇族が各種馬術や卒・終業式を観覧する為の迎賓館だったのを1962年に展示施設にしたもの。
訓練展示の場所とはちょっと離れていて、シャトルバスで移動した。
降下訓練塔同じ習志野駐屯地の敷地内で、降下訓練塔が近くに聳え立っていた。
コルト32オート、南部14年式、94式拳銃、9mm拳銃
展示内容は空挺団の歴史といった内容だが、武器の展示が少しあった。
拳銃はコルト32オート、南部14年式、94式拳銃、9mm拳銃の4種。
94式拳銃は日本軍の主力拳銃であった南部14年式が口径の割りに重たかったので、南部銃製造所に800g以内の重量で作らせたもの。昭和9年12月に日本軍の準制式となった。この銃には構造上の欠陥があって、左側面に露出したシアを押すと激発してしまい、自決した日本軍の将兵がこの銃を多く持っていたことから、アメリカ兵は「自決のためにわざとそう作った」と解釈し、この銃に「スーサイドナンブ(=自決用南部)」というニックネームをつけたとか。
コルト32オートは初代空挺団長の衣笠陸将補が米軍のウィリアム・ウエストモーランド大将からもらったもので、グリップに記念のプレートがはまっている。
また、南部14年式はハドソンの金属モデルガンということだ。

64式小銃の試作モデルとか、AR-18、中国版AK47の56式小銃
ライフル類は64式小銃の試作モデルとか、AR-18、中国版AK47の56式小銃などが展示されていた。

自衛隊関連グッズ自衛隊関連グッズの露店もいくつかあった。
食べ物の出店ちょうどお昼時に終わるイベントなので食べ物の出店もあった。
千葉衛(まもる)くんと千葉未来ちゃんたぶん千葉地連のキャラ、千葉衛(まもる)くんと千葉未来ちゃん。似たようなキャラで東部方面隊のイメージキャラクター「あづま君」というのにも似ているが、どうやら別のキャラらしい。

今回初めて降下訓練始めを観覧したが、午前中で一気に見られるので間延びせずにとても面白かった。
ただ、寒いので手袋、携帯カイロ、マフラーなどの防寒は忘れずに。あと、熱々のホットティーを魔法瓶に入れて持っていくと良いかもしれない。


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2010/01/10

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