2011年11月19、20日に静岡県駿東郡小山町の旧新宿区立足柄学園にて、第1回目となるフラッグハント カップが開催された。さっそく取材してきたのでその模様をレビュー。
そもそもフラッグハントとはなにか?
2011年の夏にフラッグハント協会が発足、このとき初めて「フラッグハント」という言葉も生まれた。この協会はサバイバルゲームの愛好家によって立ち上げられた団体で、エアソフトガンを使用した新たなシューティング・スポーツとして「フラッグハント」を考案した。
協会は広告代理店や弁護士、マスメディア関連などの本業をもつ十数名のメンバーで構成されている。
オフィシャルサイトによるとフラッグハントとは、
スリル、インテリジェンス、チームワークを兼ね備えたスタイリッシュなエクストリームスポーツ。
とある。
エクストリームスポーツは米国ではBMX、マウンテンバイク、スノーボードやフリークライミングなど、極限にチャレンジするエキサイティングなスポーツの1ジャンルとして確立しており、プレーヤーのファッションなどにも注目が集まる。またサバイバルゲームのベースとなったペイントボールは米国ではプロリーグまである人気スポーツに発展した。
マニアックな要素の強かったサバイバルゲームからミリタリー色を廃し、厳密なルール化を図って、女性や初心者でも気軽に参加できるスポーツを目指しているということだった。
バスケットボールコート約2面分の競技フィールドに「エアバンカー」と呼ばれる1m立方の障害物を100個ほど設置し、2つのチームによってお互いのコート端に設置されたフラッグを奪い合うという内容だ。
いってみればサバイバルゲームのフラッグ戦と同じ。
エアバンカーはその名の通り、丈夫なビニール製で中に空気を入れて膨らましている。
ペイントボールに使用するバリケードと似ているがフラッグハント専用に特注したものだそう。
BB弾が当たると弾き、ボンッと大きめの音がする。
ゲームフィールドは約24m×34m。ほぼバスケットボールコート2面分の広さ。両陣営に設置されるエアバンカーは反対称となっている。10人を1チームとして、赤チームと青チームに分かれ、弾に当たりヒットされたプレーヤーはコート外の退場エリアで待機する。ヒット判定はサバゲーと一緒で、全身、銃などの装備、跳弾もヒット扱いとなる。
今回フラッグハントの大会が開催された場所は静岡県駿東郡小山町。東名高速道路、御殿場インターから10分ほどのところにある富士山の裾野。空気が澄んでいて晩秋のすがすがしさ。
本大会は首都圏や関西などから12チーム、120名が参加した。主に20代30代の男女が中心。なんと4割が女性という比率で明るく華やかで、ちょっと胸がキュンとなっちゃいそうな甘酸っぱい雰囲気。いつものおっさんだらけのサバゲーとはかなりノリが違うなぁ(^_^;。
旧新宿区立足柄学園の校舎跡地を利用して土・日の2日間にわたり開催された。
初日は風雨でゲームが中断になる場面もあったが、翌日には晴天に恵まれ、全試合を消化できた。
メイン会場は廃校敷地内のバスケットボールコート。天井があり雨天でもゲームが可能。
左から東京マルイ広報の島村氏、駿東郡小山町町長の込山正秀氏、そしてフラッグハント協会会長の湯村氏。
メーカー、協会、地方自治体がタッグを組んだイベントだ。
フィールド脇にズラっと並べられた電動ガンは東京マルイの貸し出しによるもの。モデルはMC51で、ゼンマイ給弾の500連多弾マガジンと東京マルイ製のプロサイトが装備される。
黙々と貸し出し電動ガンのメンテを行う東京マルイスタッフ。
また東京マルイは新商品のブースも出展。
年末商品の次世代電動ガンSCAR-Hや、ガスブローバックのXDM-40のほか、ステアーHC、電ブロ18C、G36Cボーイズ、プロハンター、銀ダンなどのラインアップも展示していた。
ちなみに広報の島村氏、小学校の時に林間学校でこの校舎に泊まりに来たことがあるんだって。
大会本部は校舎内の受付に設置されて校内スピーカーでアナウンスしており、学園祭の雰囲気を彷彿とさせる。
ゲームフィールドまでの渡り廊下、並んだ水道の蛇口、下駄箱、何とも懐かしい。
地元小山町の自衛隊・迷彩グッズ専門店、Militantさんもブースを出展。
陸上自衛隊富士学校のPXにもお店を出しているそう。
また地元小山町の居酒屋や飲食店が出店をだしており、焼き鳥や暖かいモツ煮込み、ホットドッグやお好み焼きなどを販売していた。
また地元青年団のボランティアなども多く協力していて地方自治体一体となった取り組みになっていた。
競技開始前に各チームがフィールド外に集合、提供された電動ガンを受け取る。
自前の電動ガンの使用はできない。
続いて試射レンジへ移動し、試射を行う。
ドット調整やホップ調整を行うが、電動ガンの取り扱いが初めてというプレーヤーも多かった。
フィールドに各チームが1列に集合し、主審を含めた審判4名からの説明を受けて、各チームがスタートエリアに着く。大会はAリーグ、Bリーグ2つによるリーグ戦を行い、各リーグのトップ同士が決勝戦を行うというもの。
主催の株式会社リクルート じゃらんリサーチセンターの松岡さんも審判で参加。
松岡さんも協会メンバーとともにフラッグハントの普及活動に取り組んでいる。
YouTubeでの解説動画はこちら。
スタートエリアは3m×3mのエリア。
ここに自軍のフラッグも設置されている。
スタートの合図とともにダッシュで散開。フィールドが狭いので最初の位置取りが重要。
1試合は10分で行われる。ペイントボールのスピードボールのような非常に素早い展開になる。
思い思いのエアバンカーに身を隠して敵を伺う。射撃モードはセミオートオンリー。
姿勢を低くしないと高さ1mのエアバンカーでは頭を撃たれてしまう。膝を着くのでニーパッドはあった方が良いだろう。
中にはプローンで敵を狙撃するプレーヤーもいた。
エアバンカーは巧みに配置されていて、様々な方向に視線を配らせないと敵からの攻撃に晒されてしまう。
フルサイズの電動ガンMC51のパワーだと競技フィールドのどの位置にでも6mmBB弾を撃ち込める射程があり、エアバンカーを利用した隠れ方や移動方法はサバゲーとはまた違ったものがある。
ちなみに意図的な曲射はルール上禁止されていた。
リーダーの指示によって、チームの10人をどのように配置・移動させるかというのも戦略上重要なポイント。
ピンクのスカートにスパッツ姿、毛糸のニット帽の女子も。ミリタリーテイストは感じさせないウエアはさすが。敵味方識別用のビブスとサンセイのフルフェイス・メッシュゴーグルは貸し出しされたもの。
フラッグは最終局面で走り込んで奪取する場合が多いが、その際も審判による厳格な判定が行われる。
審判はフラッグ判定のほか、ヒット判定や、フィールドエリアからプレーヤーが出ていないかの確認も常に行っている。例えば興奮していて弾が当たってもヒットと叫ばないプレーヤーはホイッスルを吹いて強制退場させる。
第1回フラッグハント カップin小山町の優勝チーム「左手は添えるだけ、右手は握るだけ」の皆さん。
このチームはペイントボールやサバゲー経験者も混じっていて、とても強かった。おめでとうございます!!
こちらは激しい戦いの末、惜しくも決勝戦で敗退したが、準優勝のチームB-6の皆さん。良い試合でした。
公式リーグ戦を行っている間の待ち時間を利用して廃校社内での攻防戦が行われた。
こういう配慮は良いよね。
校舎は3階建。まるでホラーゲームの舞台のようだ。ワクワク!!
食堂や厨房、階段や廊下など廃れた校舎内は雰囲気抜群。
防御側1チームに対して攻撃側が2チームで編成。防御チームのひとりが持っているブザーを鳴らせば攻撃側の勝ち。
校舎内でサバゲーって多くの人が夢見たシチュエーションじゃない?
廃校攻略ゲームでは自前のエアガンを使用するプレーヤーもいた。
この方々はハイパー道楽のイベント告知を見て参加したというサバゲチーム、タイタンズの85式さんとjackerさん。
いつもご覧頂き、ありがとうございます!!
ゲーム終了後にあーだったね、こうだったね~とか仲間で盛り上がるのはサバゲーもフラッグハントも一緒。
小山町といえば足柄山、足柄と言えば金太郎、ということで、迷彩のバンダナと前掛けに身を包み、マサカリならぬM4カービンを担いだ金太郎とリアルすぎる熊。
危ない、熊さん、金太郎に撃たれちゃうよ!!
え? フラッグハントの稽古中!?
閉会式では上位チームやMVPの表彰。
小山町長から直々に賞状を授与された。
また、参加者全員に参加賞として景品も配られた。
参加された各チームの皆さん、お疲れ様でした!! 写真クリックで拡大。
第1回のフラッグハント カップを取材してみての感想を。
全体的に運営がしっかりしていて、協会、企業、地方自治体が一体となって作り上げた大会と実感できた。とても盛り上がった良いイベントだったと思う。第1回でこれだけの大会を開催するにはさまざまな苦労があったことだろう。ゲームの進行、判定などもスムーズで問題は感じられなかった。
ただ気になったのは初心者が多いせいか、銃の扱いが危うかったこと。サバゲーではマズルコンシャスを徹底する動きがあるなか、不用意にトリガーに指をかけたり、人に銃を向けたり、レンジ以外での試射をしたりというシーンが多く見受けられたので、このあたりは大会開始前だけでなく、終始運営側やメーカーが注意するなり徹底した方が良いと感じた。
地方開催と言うことで参加がおっくうになる場合もあるだろうが、地方自治体にお金を落とすための宿泊や飲食ということを考えると妥当と感じる。また協会では都内近郊に、例えばフットサル場のような手軽に楽しめる施設としてのブラックハント・フィールドを作りたいという意向もあるようだ。
会社帰りにちょっと仲間でフラッグハント、いずれそんな日が来るかもしれない。
費用は1チーム8万円、1人当たり8,000円と、宿泊、飲食、交通費を考えるとそこそこの値段になる。
気軽な値段ではないが、年に数回程度ならばちょっとした温泉旅行感覚で行けるかもしれない。
サバイバルゲームのスポーツ化というコンセプトはこれまでなかったわけではない。
ペイントボールのネックだった道具の問題を電動ガンで代替し、審判の導入による徹底したルール化、少人数チーム制によるフェアプレーでゾンビ問題をクリア。初心者向けのテイストでプレーヤーの拡大を狙い、旅行会社や地方自治体と連携してビジネスモデルとしても回りそうな気もする。
少なくともミリタリー業界がなしえなかった展開を、スパッと成し遂げるその行動力には感心する。
ショップや業界団体やトイガンメーカー主体ではこうはいかないだろうなぁ...。
あとアイデアとしてフラッグハント専用の低価格な電動ガンをマルイが開発したら面白いと思う。
女性でも簡単に扱える1.5kg以下の軽量なセミオートオンリーのマシンピストルサイズの電動ガン。大容量のリポバッテリー、装弾数500発。もちろん形状は架空のものでOK、シンプルなドットサイトが標準装備。0.2g弾に合わせて固定ホップでも良いと思う。オシャレでカラフルなフラッグハント専用ウエポンとして定価2万円以下で発売したら後押しになるんじゃないかな。
スリル、インテリジェンス、チームワーク! そしてスタイリッシュ!!
エキサイティングなエクストリームスポーツ、フラッグハントの今後の発展に期待したい。
フラッグハント協会 オフィシャルサイト