ICS 電動ガン CXP UK-1R / UK-1
レビュー: 金子一也 (Gunsmithバトン アキバ店長)
世界的エアガンメーカーが送り出した妥協なき自信作
今や世界のエアガン業界を牽引する存在となった大手台湾メーカーのひとつ、ICS社が、持てる技術力の全てを注ぎ込んで開発したニューモデル、CXP UK-1シリーズ。
同社の朱鎮堂社長自らが設計チームを率い、一切の妥協を排して完成させたという自信作を徹底レポートしてみよう。
ICS CXP-UK-1/UK-1R 電動ガンスペック & 弾速データ ※()内はUK1-Rの数値 | |||||||||||||||||||||
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実銃界のトレンド、KeyModハンドガードを標準装備
UK-1、UK-1RともにTANカラーのバリエーションモデルが発売されている。
外観上最も目を引くのは、実銃の世界で主流となりつつあるKEYMODタイプのハンドガードだろう。これまで流行していた、TROY社のBattleRailを始めとする、4面レールを配したスリムなハンドガードは、レールマウントの取り付けに際し、ハンドガードの内側にボルトの台座を用意しなければならず、レールマウントの位置を変更するには相応の手間とコツが必要となっていた。
これに対し、KeyModタイプのハンドガードは、鍵穴のような形をしたアクセサリーマウンティングスロットにをはめ込んだ専用のレールマウントを、ボルトを閉め込むだけで固定出来るため、任意の位置への付け替えが非常に簡単に行うことが出来る。また、構造を単純化したことでハンドガード全体の軽量化も同時に実現しているのも、特筆すべきポイントだろう。
VLTOR社とNoveske社が開発、発表したこの革新的なKeyModシステムは、詳細な規格がオープンソースとしてウェブ上で公開されており、様々なアクセサリーメーカーからこの規格に則ったKeyModハンドガードと、専用のマントレールが発売されている。今後しばらくはこのKeyModシステムが、あらゆるライフルのハンドガードに採用されて行くことだろう。
ICS製CXP UK-1には9インチの、UK-1Rには12.5インチの、UK-1タクティカルハンドガードと名付けられたKeyModハンドガードがそれぞれ装備されている。ガスピストン方式のカスタムM4で有名なPrimary Weapon Systems社が、2013年のSHOTSHOWで発表したKeyMod compatible handguardに似たスリムで美しいデザインは、肩付けして構えた時の、サポートハンドでの握り心地が素晴らしく、咄嗟に違う標的に狙いを付ける際のコントロールを容易にしてくれる。
製品には6コマのレールマウントが3枚付属しており、実物同様マウンティングスロットにはめ込み、ボルトを締め込むことで固定、緩めることで取り外すことがそれぞれ可能となっている。タクティカルライトやバーチカルグリップ等の取り付けを、体格や状況に応じて、それも簡単に位置の調整が出来るというのは、サバイバルゲームでの使用にあたっても非常にありがたい仕様と言えるだろう。
ハンドガードのトップレールに取り付けられたフリップアップ式のフロントサイトは、ICS社の独自デザインによるもの。サイト前方左右に張り出した突起を銃口側に押し出すと、スプリングの力でフロントサイトが自動で展開するという、他に例を見ないユニークな機能を持っている。この動作はハンドガードを握った手の親指で行えるため、構えを崩さずフロントサイトを展開出来るという点で非常に優れている。また、シャープなフロントポストは金属製で、エレベーションの調整がダイヤルを回すことで行える点も特筆に値するだろう。
アウターバレルの長さは、UK-1がハンドガードとほぼ同じ9インチ、UK-1Rがやや長い13.5インチとなっており、それぞれの先端に装着されたフラッシュハイダーは、SureFire社のFH762を模した形状のものとなっており、14mmの逆ネジで着脱が可能だ。
エアガンには関係ない話だが、SureFire社のFH762フラッシュハイダーは、5.56mm高速弾のリコイルを大幅に軽減する効果を持っており、驚くほどの撃ちやすさを実現してくれる。ただし、射撃時の燃焼ガスを凄まじい勢いで周囲に吹き出すため、並んで撃つには相当の覚悟が必要となるだろう。
オーソドックスな中に散りばめられた数々のカスタムパーツ
上下のレシーバーは極めてオーソドックスなColtタイプの形状を踏襲。それぞれが一体成型のワンピース構造となっており、高い剛性を実現している。マガジンハウジング部分の左側面には、両手にライフルを持って羽根を広げた天使のシルエットが、レーザー刻印で白く刻まれており、その下のモデルナンバーは、それぞれの機種によって固有の番号が与えられている。
ボルトリリースレバーは無可動のダミーだが、金属製の別体パーツ。ICS社の従来モデルでは逆転防止ラッチの解除装置になっていたボルトフォワードアシストアッセンブリー(ボルトの矯正閉鎖装置)は設計変更に伴い、今作ではダミーとなっている。実際の機能こそないものの、スプリング式で押し込んだ際の感触が楽しめる。また、ロアーレシーバー前後に差し込まれたテイクダウンピンは、実銃同様の脱落防止機能が備わっている本格派だ。
やわらかい曲線を描くトリガーガードは、MAGPULのそれに似ているだろうか。グリップもMAGPULのMOE-K2ピストルグリップに似た雰囲気だが、前面に節度のあるフィンガーチャンネルを設けるなど独自の工夫がなされており、掌に吸い付く握りやすさを実現している。
特に変わった印象の無いセレクターレバーについては、CXP UK-1シリーズ独自の機能が備わっているのだが、この点は詳しく後述しよう。
側面に白いスリットが入ったように見えるマガジンだが、これは内部に入れたBB弾が見える半透明の窓になっており、多弾マガジンの使用時に残弾が確認出来る。尚、ノーマルマガジンにもこの窓は付いているが、残弾の確認は出来ないので注意していただきたい。
アッパーレシーバー上に取り付けられたリアサイトは、前述のフロントサイトと同じ機構のフリップアップ式。左右のダイヤルでヴィンテージ調整が可能な上、ピープサイトを遠距離用と近距離用に切り替えられる本格的な仕様で、実銃用の樹脂製サイトに引けをとらない完成度となっている。無論、フロント、リアサイトともに取り外し可能なので、ピカティニー規格の各種サイトに載せ替えるのも自由だ。
左右にロック解除レバーが張り出したチャージングハンドルは、右利き、左利きを問わない使いやすさを実現。実際にコッキングするわけではないが、エジェクションポートを開いてのホップ調整の際に、ストレスの無い操作を可能としてくれるのは間違いない。
アッパーレシーバーとバッファーチューブの付け根には、スチール製の頑丈なスゥイベルブレートが挟み込まれており、ワンポイントスリングでの運用を有利にしている。
MAGPUL社のMOEストックに、Daniel Defens製バットストックのロック機構を組み合わせたような雰囲気のICSオリジナル、MTRストックは、ストック本体の前端下部のロックレバーを握りこむことで長さをアジャストが可能となっている。一般的なM4用ストックに慣れていると、その操作に一瞬戸惑うかもしれないが、ストックを掴んだ際、不用意にレバーを握ってしまい、銃口を地面にぶつけるといったアクシデントを未然に防いでくれるだろう。バッファーチューブは6ポジションのアジャストが可能な設計で、体格に合わせた最適なストック位置を得ることが出来る。
また、スリムなバットプレートには細かいリブの設けられたラバープレートが装着されており、高い滑り止め効果を発揮してくれる。
完全新規設計の分割式メカボックスに詰め込まれた先進のアイディア
ICS社のM4/M16タイプ従来モデルに採用されていた、リアルテイクダウンが可能な分割式メカボックスの機構は今作でも大きなセールスポイントになっているが、ICS創業者である社長自らが設計チームを組織し、二年間の歳月を費やして完成したという完全新規設計のメカボックスが、UK-1シリーズには搭載されている。
10万発以上の実射を数える耐久テストを苦もなくクリアーしたという新設計の分割式メカボックスは、従来モデルの設計理念を根本から見直すことで、徹底した合理化が図られたシンプルな構造を実現。金属粉末射出製法により製造され、精度を高めた完全新設計のベベルギヤ&ピニオンギヤの搭載は、従来モデルからギヤノイズを大幅に低減している。ピストン周りとギア周りをそれぞれ独立して分解、メンテナンス出来るICS社独自のメカボックスの完成度を、さらなる高みに押し上げている。
また、同社初の試みである擬似ブローバック機構の採用により、ボルトカバーがピストンと連動し、射撃時の振動を楽しむことが出来るようになったのは、撃ち味を重視するマニアにとって嬉しい改良点と言えるだろう。また、このギミックのために、独自形状の強化ピストンが投入されている。
そして、今回新規設計されたメカボックスに搭載された最大の特徴と言えるのが、上述したセーフティレバーによるデコッキング機能だ。
従来モデルではボルトフォアードアシストノブを押し込むことで行っていたピストンの開放を、セーフティレバーをセーフポジションに入れることで可能となるよう設計が変更されている。内部的には、セレクタープレートがセーフ位置に移動する際、メカボックスの左側面から突き出した逆転防止ラッチの軸に設けられたカムを押すことでセクターギヤが開放され、ピストンが前進するという仕組みだ。
サバイバルゲームでもシューティングマッチでも、ひと通りの射撃を終えればセーフティをかけるのは自然な流れであるため、その都度ピストンが前進位置にリセットされる。つまり、トリガーを引いてからBB弾が発射されるまでのタイミングが常に一定になるという点と、ピストンスプリングのへたりを最大限に防止するというふたつの効果が得られる改良点と言えるだろう。
これだけの新しいアイディアが詰め込まれた独自設計の分割式メカボックスでありながら、一般的なスタンダード電動M4と、およそ90%のパーツに互換性を確保しているというのも驚くべきポイントだろう。
剛性の高さと基本性能の高さが生む安定の動作と高い命中精度
当Airsoft通信で毎回使用している、埼玉県のインドアフィールド、トリガートークの35m屋内レンジに、UK-1とUK-1Rの両方を持ち込んでの実射テストを行った。
まずはUK-1を構えてみる。アウターバレルが9インチあまりと、CQBサイズのM4よりも若干短い全長は、細身のハンドガードと相まって見た目以上のコンパクトさ。トリガートークのAフィールドのように入り組んだサバゲフィールドで頼もしいプライマリーウェポンとなってくれるのは間違いないだろう。
これに対し、約13.5インチのバレル長を持つUK-1Rは、右手でグリップを引き付け、伸ばした左手でハンドガード先端を絞り込む、いわゆるコスタ撃ちのフォームがピッタリ決まる理想的なサイズ。実銃の場合、回転しながら撃ち出される弾丸と逆方向に捩れようとする銃を押さえ込むためにハンドガード先端を握るもので、反動の無いエアガンにはあまり意味が無いが、遠距離のターゲットに必中の一撃を送り込む際には有効な構えと言える。
UK-1、UK-1Rともに、バッテリーの収納スペースはKeyModハンドガードの内側となっており、今回のテストには、BATON airsoft電動ガン用リポバッテリーの、7.4v1200mAhセパレートタイプを使用した。収納スペースの関係から、厚みのあるバッテリーの使用は事実上不可能となるため、リポバッテリー専用モデルと考えて差し支えはないだろう。
ハンドガードへの収納方法だが、まずはセパレートタイプバッテリーの2枚のセルを、末端を銃口側に向け、アウターバレルを覆うように沿わせる。その状態で、バッテリー上端から伸びたコードをバレルナット手前で銃口側に折り曲げ、コネクターとヒューズをアウターバレルに沿わせることで、ハンドガードを無理なく取り付けることが可能となる。 やや窮屈な印象ではあるが、ハンドガード内側にバッテリーが干渉することはないので、落ち着いて取り組めば問題なく収納出来るはずだ。
放電レートの高いBATON airsoft電動ガン用リポバッテリーを使用していることもあるが、セミオートの切れは素晴らしく、ブローバックギミックの作動音との相乗効果か、バシッ! バシッ! と鋭く響く発射音が味わえる。
フルオートのサイクルは約17発毎秒と、標準よりもわずかに早く感じる回転数となっており、サバイバルゲームでの充分な制圧力を確保している。
実射性能は、0.2gのBB弾が35m先の等身大ターゲットの中央に吸い込まれて行く素直な弾道で、これは当Airsoft通信でご紹介している、Gunsmithバトンの調整済み電動ガンに共通する安定性である。フルオートでの連続射撃においても弾道の安定性が損なわれることはなく、一直線に連なったBB弾がターゲットに襲い掛かる様は爽快そのものだ。
なお、インナーバレルの長いUK-1Rの方が、初速の数値がわずかに高いのだが、35mレンジで撃ち較べた限りでは、UK-1との弾道の違いはほとんど見受けられなかった。
サバゲに、タクトレに、オールマイティなM4バリエーション
アメリカで盛んな3ガンマッチの流れを汲んだ細身のハンドガードに、各種アクセサリーを自由に装着出来る最新のマウンティングシステムを搭載した、KeyModハンドガード。
実銃の世界でも主流となりつつあるこのハンドガードをいち早く取り入れたICS社の意欲作、CXP UK-1とUK-1Rは、活躍の場所を選ぶことがないだろう。全国のフィールドやシューティングレンジで注目を集める、先進の1挺であることは間違いない。
万全の調整とスイッチの焼けを予防するSBD(ショットキーバリアダイオード)の追加、購入後3ヶ月の無償修理保証の付いたGunsmithバトンでの購入を、是非ともご検討いただきたい。
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