APS airsoft DRAGONFLY BSP (グロック CO2 ガスブローバック)
レビュー: 金子一也 (Gunsmithバトン アキバ店長)
Gunsmithバトン特注カスタム CO2ガスブローバックのグロックが登場
今や世界一ポピュラーな銃となった感のあるオーストリア生まれのオートマチックハンドガン、グロック17。様々な国の軍隊や法執行機関に制式採用されていることからも、その優秀さがうかがい知れる。
また、一般市場では数限りないカスタムパーツが発売されており、自分好みのスタイルにカスタマイズ出来るという点でも、爆発的な人気を誇っている。
今回レポートをお届けするAPS aisoft社の最新製品、DRAGONFLY BSPは、このグロック17をモチーフに開発された、CO2ガスブローバックガンである。
パワーソースにCO2を使うハンドガンとしては、マルシン工業のFN Five-seveNが既に発売されており、季節を選ばない安定した動作で人気を博しているのはご存知のことだろう。
本格的なガスブローバックハンドガンとしては国内で2例目となる、このDRAGONFLY BSPがどのような魅力を秘めているのか、詳しくご紹介しよう。
APS ガスガン DRAGONFLY BSP スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
|
|
個性と実用性を両立したカスタムスライド
DRAGONFLY(蜻蛉:トンボ)という名称がどこからつけられたものかは不明だが、APSではガスブローバックハンドガンのシリーズに昆虫の名前を冠しているので、その流れに沿ったものだろう。
全体に渡ってカスタマイズが施されているのだが、まずはスライドから見て行こう。
海外ではメタルスライドを搭載した形で販売されているDRAGONFLY BSPだが、今回ご紹介するモデルは、Gunsmithバトンで販売するにあたり、ABS樹脂のスライドが新たに作り起こされた特別仕様の製品だ。
そのスライド表面は、SIG SAUER P226シリーズのそれに良く似たデザインとなっている。このデザインは、コンピューターによる解析の結果、強度が必要な部分は厚く、不要な部分は薄く造られた、合理的な設計によるものとのことなので、このDRAGONFLY BSPでも耐久性が期待出来るかもしれない。
左側面、スライドキャッチレバーの上あたりには、蜻蛉の意匠をあしらった「DRAGONFLY」のロゴが、側面、エキストラクターのモールド下には、Cal 6mm、その下にDRAGONFLY-XVL 00001と、それぞれ刻印が入っているが、そもそもスライドがオリジナル形状であるため、かえって雰囲気を盛り上げているように思う。
また、両側面の前後には斜めのセレーションが設けられており、コッキングや、ジャムクリアの際の操作を容易にしている。
スライド上面に目を移すと、フロントサイトとリアサイトを結ぶライン上に、幅11mmほどにわたって細かい溝が刻まれている。これは、サイティングの際に、スライド上面に光が反射することを防ぐためのもので、直射日光下等での射撃を助けてくれるだろう。
フロント、リアの両サイトは、赤と緑のアクリルファイバーがインサートされた集光タイプが採用されており、ターゲットへの素早いエイミングをサポートしてくれる。
腕を伸ばして狙ってみると、フロントサイト幅に対して、リアサイトのノッチがやや広く作られていることがわかる。近距離の比較的大きなターゲットに対して、素早く狙いがつけられるセッティングだろうか。
また、リアサイト下に見えるスライドプレートには、蜻蛉の羽を目に見立てたマーキングが施されていて、DRAGONFLY BSPという銃の個性を主張している。
スライドを引くと現れるアウターバレルは、チャンバー部分まで一体になったアルミ製で、作動時に響く金属音が耳に心地よい。マズル先端部分の内側にはネジが切られており、別売りのサイレンサーアダプターを装着することで、14mm逆ネジの各種サイレンサーが使用可能だ。また、サイレンサーアダプターには、銃口先端部に突き出すネジ部分を保護するため、ローレット加工が施された金属製のカバーが付属する。クリス・コスタを始めとする有名インストラクターが使用するグロックには、同様のマズルアダプターが着けられていることが多いので、サイレンサーを使わずとも、プロっぽい雰囲気が盛り上がることは必至だろう。
本格的なスティップリングが施されたフレームまわり
スライドまわりをレポートしたところで、フレームをご紹介したいのだが、まずはグリップの仕上がりに注目したい。
握った手のひらに痛みを感じるほどに鋭く、細かくスティップリング(Stippling)※が刻まれているのだ。グリップ前面、フロントストラップのフィンガーチャンネルは先端部を軽く丸めた上で、もともと入っていたと思われる凹モールドの底面にまで、丁寧な作業が施されている。これを金型成型で作れるはずがないので、おそらくは1挺ずつ手作業で行われているのだろう。フレームに対するスティップリングのパターンは、グロックのカスタムで有名なZEV Technologiesのパターンを踏襲しているようで、素のままでは滑りやすいグロックのグリップに、これ以上ないほどの握りやすさを与えている。
また、これもZEVを始めとする多くのカスタムメーカーが採用しているグロックへの定番加工だが、削りまれたトリガーガードの下面と、フレーム前端部の左右にもスティップリングが刻まれている。これらの加工で、サポートハンドが高く握れるようになり、両手での構えが抜群に安定するのだ。
※Stepping(ステッピングとも言う)
素晴らしい仕上がりのグリップ底部には、樹脂製のマグウェルを装備。素早いマガジンチェンジを可能にすると同時に、サポートハンドの安定性も生み出してくれる。
曲面と平面の組み合わせで構成されたマグゥエルのデザインは、実銃パーツメーカーの製品には見られない独特のものだ。
シルバーメッキ仕上げのマガジンキャッチは、後方に伸びたワイドタイプとなっているのだが、このタイプの採用にともない、グリップのキャッチボタン周辺が深く削りこまれている。この加工によりボタンが押し込みやすくなり、ノーマルとは比べ物にならないほどスムーズなマガジンリリースが可能となっている。市販レベルでここまでの仕様を実現するとは、APS社の生産効率が心配になって来るではないか。
また、スライドストップレバーが最初からロングタイプになっているのも特筆すべきポイントだろう。全弾を撃ち尽くしてホールドオープンしたスライドを、グリップを握った右手の親指で操作出来るというのは実に嬉しい限りだ。
フレーム前部下側、ダストカバー部分にはピカティニーレールが設けられており、各種タクティカルライトの取り付けが可能。グロックの純正フレームは、スロットが前方に1本あるのみだが、DRAGONFLY BSPには4本のスロットが刻まれている。やはりグロックのカスタムパーツで有名なLone Wolfのフレームを意識したデザインだろうか、さほどの実用性は無いが、アグレッシブな雰囲気を醸し出すことに成功している。
上の画像はDRAGONFLYのトリガーまわりだが、一般的なグロックのそれと異なっている部分がおわかりだろうか。
グロックのトリガーには、いわゆる「つっかえ棒」であるトリガーセーフティのパーツが取り付けられているのだが、DRAGONFLY BSPにはそれらしいパーツが付いていない。トリガー下にちょこんと突き出しているのはトリガーストップで、トリガー側面に見える胴部が赤いボタンこそが、トリガーセーフティなのである。
画像は、ハンマーがコックされた状態を写したものだが、トリガー横ボタンの赤い部分が見えている状態であれば、フレームの切り欠きがあるため、トリガーは引ける。つまり射撃可能ポジションである。そしてこのボタンを押し込むと、反対側に突き出したボタンがフレームに引っかかり、トリガーが引けなくなるわけだ。
昔ながらといった構造のセーフティだが、右利きであればトリガーにかける人差し指で簡単に解除出来るし、ホルスタードロウの際に瞬間的に解除することも難しくは無いだろう。また、コッキングインジケーターの役目も果たしてくれるので、慣れてしまえば単純で使いやすいセーフティとして受け入れられるはずだ。
マガジンの形状は一般的なガスハンドガンのものとほぼ変わらないが、CO2ガスボンベを挿入することから、内部構造は大きく異なっている。あくまでDRAGONFLY BSP専用設計なので、他メーカーのガスガンに使用することは出来ないし、他メーカーのマガジンを使用することも不可能だ。
マガジン底部にあるスプリング式のロックボタンを押し込みつつ、やや厚みのあるマガジンベースプレートを前方にずらすと、真鍮製のボトムスクリューが現れる。このスクリューを付属の専用ドライバーもしくはコインを使って外し、CO2ガスボンベをセットするのだ。
ボンベは容量12gのものを使用するが、マガジンへの挿入の際、向きを間違えてセットしたままボトムスクリューを締めこむと、その1回でマガジンが破損してしまう。ガスボンベの先端がすぼまっている方がボトムスクリュー側に来るように、底面が丸まっている方からマガジンにセットするよう、厳重に注意しよう。
向きに気を付けてボンベを挿入した後、先に外したボトムスクリューを元通りに締め込んで行くと、いっぱいに締め込むと同時に「シュッ」という音がかすかに聞こえて、ボンベのセットが完了となる。
当然のことながら、一旦このようにセットしてしまえば、ガスボンベが空になるまで取り出すことが出来ない。ボンベをセットした状態でも、しばらく放置した程度ではほとんどガスが漏れることは無いが、基本的には、一度セットしたら撃ち切ってから保管するのが理想的な管理方法だろう。
CO2ガスボンベには高圧で危険というイメージがついて回るが、気温等の環境による圧力変化がほとんど無く、仮に異常な高圧になったとしても、安全封板が破れてガスを放出する仕組みになっている。通常の使用でボンベが破裂するような事故が発生しないことは、自転車のパンク修理やアクアリウムの水草育成に広く使われていることでもおわかりいただけるだろう。また、国際線、国内線を問わず、飛行機内への持ち込みも認められていることからも、その安全性が伺い知れる。
俊敏な動作と命中精度を高次元で両立するCO2の安定性
全身に施されたカスタマイズは、より正確な射撃を行うためのものだが、銃そのものがしっかり動作し、ちゃんと当たらなければ、ただの飾りでしかない。CO2ガスをパワーソースとするDRAGONFLY BSPがどのようなパフォーマンスを見せてくれるのかを、埼玉県のインドアフィールド、トリガートークのシューティングレンジにて実射テストを実施した。
CO2ガスボンベをセットしたDRAGONFLY BSP専用マガジンに、0.2gのBATON airsoft プレシジョンバイオBB弾を装填し、銃本体に挿入。スライドを引いてチャンバーにBB弾を送り込む。高圧ガスを使うからには、相当強いリコイルスプリングを使っているかと思いきや、一般的なガスブローバックガンとほとんど変わらない軽さでスライドを引くことが出来た。
CO2仕様のガスガンということで、まずは初速が気になるところだが、APS airsoft社で日本向けのデチューンを施して出荷しているので、法定初速を超えることはないはずだ。
弾速計のセンサー部分に銃口をあてがい、恐る恐るトリガーを引くと、弾けるような発射音とともに、強く鋭いリコイルが手首を襲った。テスト当日は12月ということもあり、肌寒い環境だったが、真夏の炎天下にガスブローバックガンを撃った時のような、思わず目をつぶってしまうほどの迫力があった。
しかし、その迫力とは裏腹に、弾速計に表示された数値は87.3m/sと、0.8ジュールにも満たない初速を示している。続けての計測でも、85~88m/sの範囲を超えることは無く、1発を撃った後で4~5発を連射し、6発目を測るという変則的な方法をとっても、初速が大きく下がることは無かった。
さらに、CO2ボンべを入れた専用マガジンを食器乾燥機で温めたものと、冷蔵庫で冷やしたものの初速も測ったのだが、89m/sを超えることはなく、82m/sを下回ることも無いという、CO2ならではの安定性を発揮。これならば、これからの寒い時期はもちろん、真夏の炎天下でも変わらぬ、確実な動作が得られるだろう。
初速の安定性がわかったところで、次は射座の台にレストしての依託射撃による、5mの距離からの命中精度を確かめてみる。銃を安定させた状態で撃てば、射手の腕前に左右されない、製品本来の集弾性がわかるわけだが、10発を撃ち込んだ結果、もっとも離れた2発の着弾点を結んだ距離が約22mmという、ストックガン(市販状態の銃)としては充分な命中精度を持っていることが実証された。
フロンガスを使うガスブローバックガンをこの時期に10発も続けて撃つと、ガス圧の低下によって初速が下がり、1発目と10発目の着弾点が大きくズレるものだが、CO2ガスは先のテストの通り、初速が安定しているので、1発目と10発目の着弾点が上下約20mmの範囲にまとまっている。シビアな競技射撃にも充分使える基本性能の高さだ。
また、銃口を下に向けた状態から一気に振り上げてトリガーを引いても、銃口から生ガスが吹き出すことは一切無いという部分も、スピードシューティングにおいて有利に働くポイントだろう。
フルサイズ電動ガンに匹敵する遠射性能
近距離でのテストを終えたところで、今度はトリガートーク2階のシューティングレンジにDRAGONFLY BSPを持ち込み、40mの距離での弾道チェックを行ってみた。一般的なガスブローバックハンドガンの有効射程は、マガジンが温まった状態で20mといったところだが、CO2ガスを使うDRAGONFLY BSPの遠射性能はどのようなものだろうか。
0.2gのBATON airsoft プレシジョンバイオBB弾を再度専用マガジンに込め、40m先の等身大マンターゲットの中心あたりを狙う。まずは1発撃ってみたところ、いわゆる鬼ホップ状態の飛び方となり、遠距離にあるターゲットを狙い撃つことは困難であることがわかった。そこで、同プレシジョンバイオBB弾の0.25gに切り替え、先と同様に撃ったところ、発射されたBB弾は30m以上を直進し、そこから弾道がホップして、40m先のマンターゲットの頭部付近に、バチーン! と大きな音を立てて着弾した。
その凄まじい遠射性能にしばし呆然とさせられたが、初速は85m/s前後なのに、何故これほどまでに良く飛ぶのかは、CO2ガスを使うが故の現象なのだろうか。Gunsmithバトンで調整&チューニングしたM4等の電動ガンと同等の飛距離を叩き出す様には心底驚かされた。
また、22発のBB弾をマガジンにフルロードし、全弾を撃ち尽くすまで、可能な限り速い連射を行ってみると、射手の技量の問題から、さすがに着弾点は散らばるものの、弾道がたれることは一切なく、すべての0.25gBB弾が40m先のマンターゲットにヒットした。CO2ガスの安定性が、連射においても損なわれないことが、よりはっきりとわかった形だ。
それにしても、手の中で爆発が起きたかのような発射音と、肩まで突き抜けるようなリコイルの強さは、撃つ度に新鮮な感動を与えてくれる。スティップリングが施された素晴らしいグリップのおかげで、22連射をターゲットに当てられたが、ノーマルグロックの滑りやすいグリップだったら、同じ芸当はまず出来なかっただろう。撃つだけで楽しいという、ガスブローバックガンの魅力を、DRAGONFLY BSPが改めて気付かせてくれたように思う。
DRAGONFLY BSPは、グロック型トイガンの決定版になれるか
最後に、12gガスボンベ1本で撃てる弾数、つまり燃費についてだが、常温でテストしたところでは、1本あたり76~78発を撃つことが出来た。マルシン工業が販売しているCDXカートリッジが、12gボンベ5本入りで実売600円程度なので、1本120円で計算すると、1発あたりおよそ1.5円のガス代がかかることになる。
従来のフロンガスに較べれば、CO2ガスがかなりのコスト高であることは否めない。しかし、温暖化による使用抑制が進むフロンガスに対し、排出される二酸化炭素を採取し、精製、液化して作られるCO2ガスは、環境への影響がほとんど無いため、トイガンのパワーソースとしても、今後存在感を大きくしていくことだろう。
何より、真冬の屋外でも、強烈かつ快調なブローバックが楽しめることと、安定した弾道が得られることは、エアガンでの射撃を趣味とする我々にとって、コスト以上のバリューを感じさせてくれるはずだ。
実銃の世界で流行する実戦向けのカスタマイズをふんだんに盛り込んだ、市販品としては最高に贅沢なCO2ガスブローバックガン、DRAGONFLY BSP。香港のAPS airsoftと、日本のGunsmithバトンがタッグを組んで作り上げたこの新製品は、2016年1月下旬の発売を予定している。今冬、DRAGONFLY BSPはその実力を如何なく発揮して、多くのガンマニアたちを虜にすることだろう。
Gunsmithバトンアキバ店では、現在サンプルを展示しているので、いち早く実物の魅力に触れたい方は、是非とも足を運んでいただきたい。
■関連レビュー
Gunsmithバトン Airsoft通信 トップへ
APS 電動ガン M4 Keymod LPA(ブローバック)