JG 電動ガン SA58 carbine (ブローバック)
レビュー: 金子一也 (Gunsmithバトン アキバ店長)
名銃FALの遺伝子を継ぐバトルライフル
アメリカのDSA社が開発、販売している、SA58シリーズは、ベルギーのFN社(Fabrique Nationale/現在はFN HERSTAL)が1948年に開発したFALをベースに、現在も製作、販売している人気の大口径ライフルである。
第二次世界大戦終了後の第1世代アサルトライフルとして開発されたFN FALは、主なパーツが削り出し加工で製造され、耐久性に優れており、世界中の戦場で活躍した名銃だが、308(7.62mm)という強力な弾薬を使用するため、フルオート時の制御が難しいという問題を抱えていた。
折りしも時代は小口径化へと流れ、コントロール性に難いFALは第一線を長く退いていたのだが、近年になって小口径弾の威力不足が問題視されたことから、ストッピングパワーと射程に優れる大口径ライフルの存在が再びクローズアップされ始めた。こうした状況の中、往年の名銃であるFALも、モダナイズ(近代化)されることで、前線に復帰したのだ。
実銃のSA58には、オリジナルのFALの姿をそのまま再現したモデルを始め、実に十数種類のバリエーションが存在するが、今回ご紹介するJG製のSA58 carbineは、SA58 Tactical carbineをベースに、本来16.25インチあるバレルを短く切り詰めた形の製品となっている。
民間向けのSA58はセミオートのみの仕様だが、フル、セミオートの切り替え射撃が可能となっているJG製品は、実銃で言うところのSA58 OSW(OPERATIONAL SPECIAL WEPON)の機関部を装備した、特殊バリエーションと言ったところだろうか。
映画やゲームでの露出が少なく、どちらかと言えばマイナーな銃をモデルアップした、JG社の意欲作、SA58 carbine(ブローバック)、その内容を以下に詳しくご紹介して行こう。
JG 電動ガン SA58 carbine(ブローバック) スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
|
|
スリム&コンパクトなフロントまわり
まずはフロントまわりを詳しく見て行こう。
フラッシュハイダーはオーソドックスなバードケージタイプを採用しているが、バレルマウントのスリングスゥイベルを含めたフロントサイトまわりは、オリジナルのFALとまったく同じ構成となっている。小ぶりな左右のガードに守られたフロントサイトの前方にあるレバー付きのガスプラグと、後方のガスアジャストメントスクリュー(レギュレーター)は実銃通りに動かせる。これらはガスピストン方式を採用しているSA58ならではの装備で、電動ガンにおいては動かしたところで何の意味も無いのだが、こうしたギミックは、マニア心をくすぐる重要なポイントだ。
フロントサイトの下方に見えるマイナスネジは、左右に分割されたハンドガードを本体に固定するためのもので、これを外すと、ハンドガードが左右に分解出来る。
また、ハンドガードに隠れたアルミ製のアウターバレルとガスチューブは、レシーバー基部にガッチリ固定されており、いわゆる首周りの強度に関する不安は一切感じられない。
強化樹脂製のハンドガードは、オリジナルのFALの意匠をそのままに短く切り詰めたような、細身の三角形タイプとなっている。両側に開いた3つの横長の穴に加え、左右の下側には、折りたたんだバイポッドが収まる溝まで設けられているあたり、FALの血筋を色濃く感じさせる心憎い演出と言えるのではないだろうか。
レールマウントを取り付ける等といった機能は持たされていないが、下側が膨らんだ形の細いハンドガードは誰の手にも握りやすく、おそらくは7.62mmという大口径弾の反動にあっても、しっかりホールド出来るようにとデザインされたものなのだろう。
レールマウントが印象的なレシーバーまわり
レシーバーまわりに目を移すと、トップカバー上に設けられたアルミ削り出しによるレールマウント、Extreme Duty Scope Mountが強烈な存在感を主張している。これはDSA社で別売りもしているFAL/SA58用のマウントだが、本体に固定するための10本のネジのビジュアルも相まって、スマートなFALの印象を無骨なものへと変貌させている。
マウントに白く刻まれたDSA社のロゴマークは、正式ライセンスの取得を示しており、また、右側面に見られる15HSからなる数字の白い刻印は、製品固有のシリアルナンバーとなっている。自分のエアガンが世界に1挺だけの存在だと実感させてくれるこうしたサービスは、所有することの満足度を高めてくれる、非常に重要なセールスポイントではないだろうか。
改めてレシーバー全体を見てみると、FALで言うところのTYPE1レシーバーを設計のベースとして作られていることがわかる。実銃の世界でも細かいディティールに拘るマニアはいるようで、DSA社ではTYPE1からTYPE3まで、形状の異なる3種のレシーバーを製造、販売している。こうした製品が成立しているのは、FALという銃が根強い人気を保っている証拠だろう。
Extreme Duty Scope Mountの主張が強いため、異様に無骨な印象があるレシーバーだが、よくよく見れば、極めてシンプルな造りであることがわかるはずだ。
中央付近でひときわ目を引く、大きいマイナスの平ネジは、実銃ではピボットピンとなっており、リアサイト直下に見えるレバーを引くことで、この部分を軸にレシーバーをテイクダウン出来るという、驚くほどシンプルな構造となっている。
JG製電動ガンの場合、さすがに実銃通りとは行かないものの、このマイナスネジを左右から外すだけで、アッパーとロアの両レシーバーが分解出来るというメンテナンス性の高さは非常に魅力的だ。
尚、リアサイトは中、遠距離の切り替えと、左右調整が可能なピープサイトとなっている。フロントサイト同様小ぶりに造られているが、SA58においては、バックアップサイトといった位置づけなのかもしれない。
グリップはFN MINIMI等に良く見られる、いわゆるSAWタイプグリップを装備。何の違和感も無く決まって見えるのは、同社がかつて創り上げたFALの血統故だろうか。
20発の7.62mm弾を収めるために作られた巨大なマガジンは、エアガンとしては500発ものBB弾の装填が可能な多弾マガジンとして作られている。これだけの装弾数があれば、スペアマガジンは無くても大丈夫だろう。
レシーバー左側面のコッキングレバーは、FALの流れを汲む形状の、固定式のものが取り付けられている。印象としては、FN SCARシリーズのそれに近いが、射撃時にハンドルが前後に動くSCARと違い、SA58は前進位置で静止しているタイプの構造だ。
コッキングレバーを引くことで、レシーバー右側面のエジェクションポート内に見えるボルトカバーが後退し、ホップアップチャンバー部分にアクセスが可能。チャンバーは微妙なホップ調整が可能な、バレル同軸型の構造となっている。ホップチャンバー自体が金属製ということもあるが、この構造は壊れにくいという美点もあるので、互換パーツの入手が難しいこうしたモデルでは、重要なポイントと言えるだろう。
また、後に詳述するが、ボルトリリースレバーを引き下げながらコッキングハンドルを引くと、ボルトカバーを後退位置でホールドすることが出来る。この際、ボルトカバー後方に設けられたリターンスプリングが二重になっているため、テンションが強くなってからさらに引き下げたところが、ホールドされるポイントとなるので注意が必要となる。
サバゲ開始前の弾道確認の際、エジェクションポートを開けたままホップ調整が出来るというのはうれしいところだ。
レシーバー右側面に設けられたセレクターレバーも、基本的にはFALのデザインを受け継いでいる。ただ、フルオートモードへの切り替え時、レバーを銃口側に180度近く回す必要があったオリジナルに対し、SA58では、セーフ、セミ、フルが、10度ほどの回転で切り替えられるよう改良されている。
レシーバー下部、トリガーガード前方に見えるレバーはそれぞれ、手前がボルトリリース、奥がマガジンキャッチになっている。
ボルトリリースレバーはオリジナルのFALに準じた形状だが、マガジンキャッチレバーは、グリップを握った手の人差し指でリリース出来るようリデザインされた、SA58独自のもの。もちろんこのJG製SA58でも、実銃同様の直感的な操作が可能だ。こうした基本的なインターフェイスの優秀さが、わずかな改良で現代の戦術に対応出来るバトルライフルとして、再び注目を浴びる結果に繋がっているのだろう。
尚、ボルトカバーを開放状態で固定出来ることを上述したが、ボルトリリースレバーを下に下げることで、ホールドされたボルトカバーを開放、前進させることが出来る。
この際、コッキングハンドルが後退位置で止まっていると、ボルトカバーが引っかかって前進しないことがある。
ガチン! と気持よくボルトカバーを前進させるために、コッキングハンドルを前方に戻しておく必要があることを覚えておきたい。
大容量バッテリーの搭載が可能なバットストック
後方上部が膨らんだオリジナルのラインを踏襲しつつも、ストレートにシェイプされた、SA58独自の形状の樹脂製バットストック。JG社はこれを忠実に再現し、中空構造の内部をバッテリースペースとしている。
表面にゴムがひかれた滑り止め効果の高いバットプレートは、下方に1cmほどずらすことで外れ、バッテリー挿入口にアクセスできる。尚、バットプレート中央に見えるマイナスのネジ頭は金型成型によるモールドで、何の役割も果たしていない。非常にリアルで外したくなるが、ドライバーで抉ったりしないよう気を付けたい。
ストック内部のスペースは非常に広く、BATON airsoft 電動ガン用 リポバッテリーであれば、7.4v 2000mAh[30C](ミニ互換)、または、Eライン7.4v 2000mAh[30C]ミニタイプと、大容量のものが楽々収まる。
使用出来るバッテリーの容量の大きさは、一度の充電で撃てる弾数の多さに直結するので、500連という多弾マガジンを装備するこのSA58には打ってつけの取り合わせだ。
また、バッテリーのアンペア数の高さは、トリガーレスポンスの鋭さにも繋がるので、あらゆる面で快適な射撃が楽しめるだろう。
小気味良いブローバックと、安定した実射性能
アルミダイキャストのレシーバーに収められたメカボックスはいわゆるVer.3互換で、市販のチューニングパーツがほぼすべて使用出来る一般的なものを搭載。摩耗に強い7mmのメタル軸受けに加え、ベベルギヤの軸受けはスチールボールベアリングを採用している。2~3年前と較べると格段に品質が向上したJG製メカボックスだが、やはり箱出しで使うには問題があるため、内部調整が必須となる。インナーバレルは330mmの長さが確保されており、内径6.08mmとややルーズ気味のものが採用されているが、これについても、ホップ調整に関わる部分を最適化する必要があるだろう。Gunsmithバトンでは、これらの問題点を解消すべく、出荷する全ての製品に入念な調整&チューンを施しているので、サバゲに、シューティングにと、安心して使うことが出来るのだ。
実射性能のチェックは、当Airsoft通信でお馴染み、埼玉県のインドアフィールド、トリガートーク内の40mインドアシューティングレンジにて実施。ベテランチューナーの手が入ったJG SA58の弾道と集弾性を確認してみた。
まずストックを肩付けして構えてみたところ、フロントサイトとリアサイトが若干低く、やや俯き加減で、上目遣いに狙う必要があった。頬骨の高さ等、個人差はありそうだが、このストックの形状はやはり、光学サイトを通して狙うことを前提にデザインされているのかもしれない。
500連装の多弾マガジンに、0.2gのBATONairsoftプレシジョンバイオBB弾を流し込み、ゼンマイを巻き上げてSA58にセット。バッテリーは同じくBATON airsoft製の7.4v2000mAh[30C](ミニ互換)を接続した。
まずは適正ホップを出すため、飛んで行くBB弾を見ながらセミオートで連射すると、既に素直な弾道を描いている。
フラットに飛ぶホップ調整が出せたところで、サイトを通した40m先の等身大マンターゲットを狙ってみる。
低くマウントされたピープサイトで狙うには、40mという距離はかなり遠く感じられたが、バシッ! バシッ! と、レシーバーにボルトカバーが当たる金属音を響かせながら放たれるBB弾は、サイトで狙ったマンターゲットの中央部に、当然のようにヒットしてくれる。
フルオートに切り替えての連続射撃でも弾道の素直さに変化は無く、細身のハンドガードの握りやすさも相まってか、マンターゲット内の好きなところに、BB弾を好きなだけ送り込むことが可能だ。
ここ最近品質が向上して来たとはいえ、輸入されたままの箱出し状態では、この性能はとても望めないだろう。
必ずといってもいいほど生じている製品の個体差にも対応し、入念に手を入れているGunsmithバトンの調整&チューニングにより、JG製SA58は、国産製品なみの実射性能に仕上がっていた。
往年の名銃FN FALを、最新の戦術に対応出来るよう近代化した、コンパクトなバトルライフル、DSA SA58。この魅力的なライフルを、正式ライセンスの取得で刻印までリアルに再現した、JG SA58(ブローバック)は、PMC装備で戦うコス系ゲーマーや、人と違った銃を使いたい拘り派のゲーマーには、文句無しにお薦め出来る1挺だ。
Gunsmithバトンアキバ店では現物の試射が可能なので、そのクオリティが気になった方は是非とも足を運んでいただきたい。
■関連レビュー
Gunsmithバトン Airsoft通信 トップへ
APS 電動ガン M4 Patriot(ブローバック)
APS 電動ガン M4 Keymod LPA(ブローバック)