VIPER TECH ガスガン SOPMOD M4 BSP CO2
レポート:戸井 源太郎
CO2をパワーソースとするM4ガスブローバックを発売前にサンプルをお借りできたのでレビューしたいと思います。
今回レビューするのは台湾のVIPER TECH製SOPMOD M4CO2ガスブローバックです。
マガジンにCO2カートリッジを装填するタイプで、VIPER TECHとGunsmith BATON共同開発による日本向けCO2低初速仕様、BSP(バトンスペシャル)とのことです。
海外ではガスガンのパワーソースとして広く認知されているCO2ですが、一方で日本国内では反対派も多く、このモデルの発売はそんな状況に一石を投じることとなるのではないでしょうか。
人気モデルのM4カービンCO2ガスガンということで個人的には非常に興味があります。その実力は?
実際に試射を行なってレビューしたいと思います。
14.5インチバレルにRISを装備し、クレーンストックでフラットトップのオーソドックスなM4A1 SOPMODです。主要フレームは鍛造アルミで、スチール製アウターバレルを装備しています。そのため、質感だけでなく重量感も実銃に近いです。実はVIPER TECHはINOKATSUの製造工場だったそうなので、この仕上がりには納得です。
つや消しの色合い、質感、手にした時の感覚は非常にリアルです。CO2専用のスペアマガジンは1本、9,690円(税別)になります。またリアサイトは付属していません。
■スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
|
|
VIPER(毒ヘビ)をモチーフにしたロゴがプリントされたパッケージです。中もダンボールによる保護材で銃が収められています。今回はサンプルなので、取説などはなく、銃本体のみでした。サイズは900 x 270 x 90mmになります。
漆黒のフレームに各所から滲むオイルが実銃っぽいです。ガスブローバックならではのリアルさです。
刻印はコルトのミリタリーM4A1となっています。掘りも綺麗に仕上がっています。
トリガーやセレクター、ボルトストップもM4A1仕様で、各パーツはスチール製です。セレクターはもちろんハンマーダウンしているとセフティに入らないリアル構造です。
ボルトキャリアのエッジも立っており、また色合いがとてもリアルでよい感じです。しかし、ホールドオープンしてもボルトは完全に後退しないですね。
ホップアップ調整ダイヤルはアウターバレル基部の下面にあります。ウェルドスプリングもリアルテンションのため、RISの下半分を外すのに、かなりの力を要します。ダイヤルの調整はスムーズです。
ケースレスのガスブローバックガンでは閉鎖不良が起こるとしたらガス切れだと思いますので、あまり必要はありませんが、ボルトフォワードアシストノブもライブです。
グリップはA2タイプを装備しています。もちろん、電動ガンではないので、リアルサイズの薄いグリップです。
アウターバレルにはM203グレネードランチャー装着用のためのクビレがあります。またハイダー、アウターバレル、フロントサイトはスチール製で、構えるとちょっとフロントヘビーな感じがしますが、この重量バランスが実銃っぽいです。
刻印、バレルの細かい縞までしっかり再現しています。
各所にアクセサリーが装着できるナイツのRISが標準装備されています。ただしこれはプロトタイプとのことで、製品版ではRASが装備されるそうです。
RIS、フレームは面一のフラットトップとなっており、各種アクセサリーが搭載できます。このVIPER TECHの剛性は高く、M4系の弱点といわれる首(RISとフレームの間)もビクともしません。
ストックはクレーンタイプを標準装備です。しかしなぜか伸縮範囲は5ポジションでした。
マガジンの中にCO2カートリッジを装填します。CO2カートリッジはマルシンのFiveseveNと同じ12gを使用します。マガジン本体のみで593g、カートリッジ搭載して637gと結構重量があります。装弾数は39発になります。CO2専用のスペアマガジンは1本9,690円(税別)です。マガジントップは他のガスブローバックと同じような構成となっています。
CO2カートリッジの装填手順
マガジン底部のカバーをスライドさせて外します。右側が前になります。 底部カバーを外すと二つの六角レンチがあります。右が蓋の開閉用で、左がCO2カートリッジのセット用締め付けネジです。
まず、右のネジを付属のレンチで外して蓋を開きます。中央部にCO2カートリッジを装填してます。
マガジンの中は、このようになっています。中央のニードルでCO2カートリッジに穴を開け、ガスを流入するようにします。そのため、基本、CO2カートリッジは途中で取り出せません。途中で取り出すと生ガスが噴出して、低温やけどになる危険もあるので、注意してください。
CO2カートリッジのボトルネックの方からマガジンに挿入します。カートリッジはマルシンと同じガス質量12g(内容積15ml)で、これは内容積100ml以下なので高圧ガス保安法適用外になります。家庭用のビールサーバーや水草育成用にも使用されている一般的なものです。
まず右のネジで蓋を締めます。しっかり蓋を閉めたら今度は左のネジを締めます。CO2カートリッジから「ブシュー」と音がしなくなるまで締めます。
銃本体はピン1本で、テイクダウンができます。
ピンも脱落防止仕様になっています。
ボルトキャリアの形状も非常にリアルです。材質はスチールで重量感たっぷりの295gもあります。これが「ガッツン! ガッツン!」と動きます。
ロッキングラグの形状もよく再現しています。ガスブローバックなので、実銃とは異なり、下面にはガスの流入口があります。
ハンマー周りもリアルに再現しています。ハンマー上部の突起があるものは初めて見ました。
銃本体は工具なしで通常分解ができます。マガジンは付属のレンチが必要となりますが、CO2カートリッジの装填も難しくはありません。
実射テスト
CO2を使用するライフルのテストは今回が初めてなので、距離30mでテストを行いました。使用弾は東京マルイのベアリングバイオ0.2gです。
マガジンにBB弾とCO2カートリッジを装填し、射撃準備完了です。
セレクターはセミオートの位置にし、期待と不安の混じった感覚でゆっくりとトリガーを引き絞っていきます。
「バン!」と鋭く重いリコイルと衝撃が体に伝わってきます。それに加え、発射音が非常に大きく、実はリコイルより音に驚きました。実にいい撃ち味です。
フルオートでは、この強烈なリコイルで正直コントロールが難しいです。実際、連射サイクルを測定しようとフルオートで撃つとリコイルで暴れすぎて、X3200でなかなか測定できませんでした。
ホップを適正に調整して、実際に飛距離、精度をみてみましたところ、30mの人物大になんとか当たるという感じでした。いまいち弾道が安定しません。40mでも届きますが、かなり散り、人物大にヒットさせるのは難しいという印象を受けました。
ただ命中精度に関しては、まだ完成したばかりのサンプル段階ということであり、Gunsmith BATONでは、今後チェンバー周りを調整して販売する予定とのことです。
もう一つ気になる点としてCO2カートリッジ1本で何発射撃が可能かというところです。結論からいうと2マガジン、78発は撃ち切れませんでした。セミ・フル共に最初の39発は問題なく撃てます。次の39発は最初の10発は1マガジン目と同じく強リコイルで撃てます。が、その後は徐々にリコイルが弱くなっていくのがわかります。もちろん飛距離も落ちていきます。セミではなんとか最後まで撃ち切れますが、フルでは、10発前後を残して生ガスを吹きます。
個人的には想像より発射弾数が少ないと思いました。せめて2マガジン、80発は撃ち切りたいところです。もしくはマガジンの装弾数を25発か、50発にすれば、キリがよいのではないでしょうか?
どちらにしても、CO2カートリッジは現在、マルシンが販売しているものと同じ12gで1本あたり約100円になります。これではちょっとランニングコストがよくないですね。
しかし今回、テストで、CO2カートリッジ15本、計1,170発くらい撃ちましたが、弾が出ないなど初歩的なトラブルはありませんでした。
あと、一つ重要なチェック項目があります。それは、このCO2マガジンが他メーカーのM4ガスブローバックと互換性があるかどうかということです。
KSC、タニオ・コバ、VFC、WA、マルイのガスブロM4で試してみました。結果はVFCとWAのみマガジンが装填でき、しかも撃てました。VFCは1発ごとにボルトストップがかかり連射はできませんが、弾は発射できました。初速を測ってみたところ8〜67m/sの範囲でバラバラです。そのほとんどが20m/s以下で、全く安定せず、発射されるだけといった状況です。WAでは弾が発射されますがボルトが後退せず、空撃ちと発射が交互になりました。動作が不安定とはいえ弾が撃ててしまうのは微妙なところです。なんらかの対策は施した方がよいと思います。
CO2の利点として、現在国内でガスガンに使用されているHFC134aとは比較にならないくらい環境への影響が少ないことが挙げられます。HFC134aの地球温暖化係数はCO2の1300倍といわれています。
もう一つのCO2の利点として、寒さにも強いことが挙げられます。
冷蔵庫で2時間くらい冷やしたCO2カートリッジを装填したSOPMOD M4 BSP CO2GBBは多少リコイルが弱く感じますが、問題なく撃てます。初速の計測値は最大初速が76.05m/sで最低が74.93m/s平均が75.68m/sで0.573Jで射撃後、マガジンの温度は4℃でした。
ここで注意していただきたいことは寒いからといってCO2カートリッジを温めるのはNGです。HFC134aよりガス圧が高いため、ガスが膨張してマガジンが破損して、怪我をする危険があります。基本、寒くても温める必要はありません。
日本のトイガン業界のCO2についての現状
日本のトイガン業界関係者、ユーザーの中には、CO2導入に反対意見を唱える人たちもいます。
その理由は以前、レビューしたマルシンのFive-seveN 6mm CO2ガスブローバックで述べましたが、再度説明しましょう。
次に、海外製のCO2を使用するガスガンには、0.98ジュール以上のパワーがあるものが多いことから国内に入ってきた場合は、即、準空気銃、あるいは空気銃となり、銃刀法に触れることから、業界に多大な影響を及ぼす可能性(さらに規制が厳しくなる)があるということです。
3点目は低圧フロン用のガスガンに高圧な液化CO2をダイレクトチャージするとマガジンが爆発する危険性があるということです。
上記以外にも過去に違法改造されたCO2ガスガンが事件に使用されたことから世間的なイメージが悪いということを理由に挙げる人もいます。
では、国の方針はどうなのかといいますと
経済産業省からの「モデルガン、エアソフトガンの製造・販売の慎重な対応及び消費者に対する銃器対策の啓発等の推進について(要請)」という通達によると、CO2を使用する場合はパワーを超えないこと。改造等できないようメーカー側は充分に注意してくださいとあるだけで、CO2の使用を禁止しているわけではありません。
しかし現在、日本に3つあるトイガン業界団体でも見解が割れています。ASGK(日本遊戯銃協会)とJASG(日本エアースポーツガン協会)のWEBではCO2には何も触れられておりません。つまり、現在は使用しない方針のようです。
STGA(全日本トイガン安全協会)のみ通達通り、パワーアップができないよう改造防止策を施せば、問題ないとの見解です。 STGAの見解と流通・小売店への通知文
ガスガンに限らずですが、エアソフトガンは購入したユーザーが改造して威力が規制値を超えた時点で、オモチャではなく、「準空気銃」に該当してしまいます。ここはユーザーの自己責任に任せるのではなく、こういう危険性を可能な限り排除するためにもGunsmith BATONはSTGAに加盟し、より強固な改造防止策を組み込み、第三者機関での評価試験を行ったうえで商品を販売するのがよいかと思います。
今後、HFC134aは削減される方向で、かつそれに代わる代替ガスが現状業界内で確立していないため、CO2は現時点で有力なトイガン用パワーソースではないかと個人的に思っています。
過去にCO2をめぐり、業界内で様々な経緯があったのはわかりますが、日本のトイガンメーカーが本気になれば、もっと燃費がよく、高精度でありながら、かつ安全なCO2ガスガンを作れるとも思っています。
それでもガスガンにCO2を使用するのは危険だと考えているのでしたら、CO2を発射に使用しないガスガンを作ってみるのはどうでしょうか?
CO2をパワーソースに使わないトイガンとは? 簡単に説明しますと、発射のためにCO2を使うのではなく、コッキングにCO2を使用するのです。
次弾のコッキングを手動で行うのがエアコッキングガン、モーターで行うのが電動ガン、ここに新たなジャンルでCO2のパワーでコッキングするガスコッキングガンというのはいかがでしょうか? 発射機構自体はスプリングエア式なので、これなら誰も文句はいえないでしょう。
このまま何もしないと海外からCO2ガスガンがどんどん流入してきて収拾がつかなくなっていく可能性があります。下手をすると日本では海外製トイガン自体が禁止されてしまうかもしれません。その前に業界団体で早急にCO2導入に関する安全基準の策定を対応していただきたいです。
海外製トイガンを扱うショップも業界団体に属するか、海外製トイガンを扱う業者で新たに業界団体を設立するなど行動を起こしていただきたいと考えます。
撮影協力:ビレッジ2
■関連リンク
マルシン ガスガン Five-seveN 6mm CO2
東京マルイ ガスガン M4A1 MWS
WA ガスガン COLT M4A1 アメリカンスナイパー
KSC ガスガン M4カービン
タニオコバ ガスガン M4A1カービン
東京マルイ 電動ガン SOPMOD M4