東京マルイ 電動ガン FA-MAS 5.56mm-F1
1991年4月26日はトイガンの歴史において特別な意味を持つ日だ。この日、東京マルイから革新的なエアソフトガン、"電動ガン"の第一弾が発売された。当時は1980年代中頃から盛り上がりを見せていた空前のサバゲブームの真っただ中。
明確な威力規制はなく、専用商業フィールドもなく、愛好者が週末になると河川敷に集まってはサバゲーに興じるという時代。巨大なエアタンクを背負い、カウンターウエイトを効かせたBV式ガスフルオートを現在からは想像できないほどの高威力でバラ撒いていた。
当時、東京マルイはトイガンメーカーとしては後発だったが、1985年に発売したエアコッキングガンのルガーP08は1900円の低価格でありながら抜群の命中精度を誇り、サバゲーマーから高く評価されていた。
1991年に発売されたFA-MAS 5.56mm-F1にはホップアップ機構が装備されていなかった。そのため、当初サバゲーマーからは「飛ばない、威力が弱い」といったネガティブな意見が多く、すぐには市場に浸透しなかった。
しかし、1993年7月に発売されたFA-MAS スーパーバージョンで可変ホップアップシステムが搭載されると状況は一変。M16やXM177、MP5と言った人気機種にもこのホップ機構が搭載され、オプションの300連多弾マガジンの火力、ホースレスで軽快な機動力、1回の充電で3000発の低燃費、気温に左右されない安定した初速と、従来のガスガンの短所を完全に覆し、瞬く間にフィールドからガスフルオートの姿は消えていった。
今回は東京マルイの電動ガン、FA-MAS 5.56mm-F1の新品をFIRSTで購入したので、現在の視点でレビューしてみよう。
その独特のスタイルから"トランペット"のニックネームを持つブルパップタイプのアサルトライフル、FA-MAS。ブルパップライフルは機関部をグリップ後方にレイアウトし、長い銃身でありながら、全長をコンパクトに収めることができるメリットがある。70~80年代にかけてヨーロッパ諸国を中心に開発され、軍に制式採用されている。
FA-MASは1979年にフランス軍が制式採用、フランス外人部隊でも使用されていたため、外人部隊に籍を置いていた日本人の元隊員らからもその話を聞くことがある。
スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
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パーツリスト |
パッケージ。マルイと言えばこのデザインのイメージ。可変ホップアップ搭載、EG560高トルクモーター搭載というポイントをアピールしている。そしてニッカドからニッケル水素バッテリーに変更され、それに対応する旨も記載されている。
パッケージ内容。本体、マガジン、チャージャー、チャージングロッド、保護キャップ、ラージ→ミニコネクタの変換ケーブル、取説とBB弾少々。
FA-MAS 5.56mm-F1サイドビュー。機関部がトリガーより後方にレイアウトされるブルパップ方式。
構えた感じ、メカボックスが後方にあるのでややリアヘビーではあるが、前後バランスは悪くない。フロントが短い分取り回しも良い。ボディがプラ製なので強く握るとギシギシと音がするが、剛性自体は現在の視点でもなかなか高いと感じる。
機関部右側にはFA-MAS 5.56-F1の刻印がある。またこの機関部の中にメカBOX バージョン1が内蔵される。メカボックス内に固定されたモーターはEG560を採用。マルイの電動ガンはその後EG700、EG1000とハイトルク化していく。
エジェクションポートカバーは取り外せるようになっている。
アウターバレル、フラッシュハイダー共に亜鉛ダイキャスト製。ハイダーは別パーツとなっていて底部のネジで取り外せるが、M14逆ネジ仕様にはなっていない。
グレネード用のアジャストリングは可動式。スーパーバージョンではこのパーツは省かれている。
フロントサイトは左右に調整可能。またその前にある夜間用フロントサイトは上下に可動する。
リアサイトとリアサイト前方にある夜間用の可倒式リアサイト。
夜間用の可倒式リアサイト(左)と、通常のリアサイトはピープ切り替え、上下の調整可能。
フロント、リアサイトは正直見づらい。特にフロントサイトが細く、黒いのでリアサイトのピープを小さい状態にしていると見失いそうだ。フロントサイトを白く塗ったり、夜間用サイトでエイミングするというのもあり。
また、すでに廃盤となっているが、マルイ純正オプションで専用スコープマウントも発売されていた。中古市場で入手するか、サードパーティ製のマウントがあれば光学照準器を搭載することもできる。
レシーバー上部。
コッキングハンドルはダミーながらスプリングテンションが効いていて引くことができる。その前にあるのはライフルグレネード用サイトで左右に回転する。
トリガー。トリガー前のレバーはセフティレバー。
スチールプレス製トリガーガードは後部の引っ掛けを取り外せ、厚手のグローブ時の使用に対応する。
このセーフティレバーを左側に90度回転させればトリガーがロック解除。さらに回すとハンドガードのバッテリーカバーを取り外すことができる。
ハンドガードを取り外してバッテリーを収納する。もともとラージタイプのハイパーコマンド ニッカドバッテリー1300mAhを想定して作られたバッテリースペースなのでかなり大きい。ここに1300mAhのミニSニッケル水素バッテリーを楽々収納できるが、隙間があるのでカタカタと音がする。気になる場合は緩衝材などで固定するのが良いだろう。
グリップはフィンガーチャンネルがあり、比較的握りやすい。
モーターは機関部内のメカボックスに一体となっているので、グリップ内はコンパートメントスペースとなっていて、底部に蓋があるが、ロック機構がなく、簡単に開いてしまうので、この中に何か物を入れるというのは考えないほうが良いだろう。
金属製のバイポッド。かなり堅牢な作りだ。
ストック。バットプレートにはラバーコーティングが施される。中央のネジで取り外すと、内部にメカボックスが見え、ヒューズもこの中にある。
ストック底部にセレクターがある。OFF、S(セミオート)、F(フルオート)の3段階。つまりFA-MASにはトリガー部と合わせて、マニュアルセーフティが2つある。SとFの刻印の間にある小さなスイッチ(ラッチレバー)は、後退して停止した状態のピストンをリリースするためのもので、スプリングのへたりを極力防止するためのもの。
グリップ後方にレイアウトされるマガジン。前側にマガジンリリースレバーがある。
マガジンの装着はコツがあり、後方から少し斜め気味に装填する。
付属の標準マガジンはスチールプレスのアウターシェルで装弾数60発。純正オプションで300連のゼンマイ給弾マガジンが発売されている。ノーマルマガジンの実測重量は174gだ。
エジェクションポートカバーを外すとチャンバー上部に可変ホップアップの調節ダイヤルがある。ホップの掛かり方向を示すUP表示や目盛りがあり、とても操作しやすい。もちろんホップの微妙な掛かり具合も簡単に調整できる。
ポートカバーは左右好きな方向に付けられる。
キャリングハンドルがあるのでフィールドやセフティでの持ち運びは簡単だ。
バッテリーを除いたFA-MAS本体とマガジンを含む実測重量は2,645g。
実射テスト
今回もビレッジ2にて30~40mの射撃テストを行った。弾は東京マルイのベアリングバイオBB弾、0.2gと0.25gを使用。ターゲットはA3サイズと、直径18cmのスチールプレート。
30mでは0.2g、0.25g弾ともにA3ターゲットに余裕で全弾ヒットできる性能。0.25g弾ならば概ねヘッドショット可能なほど。
40mでは0.2g弾はマンターゲットエリアに着弾できるが、ホップ適正の水平射撃だと、40m付近で落下傾向にある。初速が86m/s平均だともう少し伸びてもよさそうではある。
0.25g弾ではセミオートでA3サイズにまとまる。フルオートだとホップスピンにやや不安定さを感じだが、パッキンを慣らしていけば安定するだろう。
最新のマルイ製電動ガンに比べると僅かに精度は劣るように感じたが、いずれにしても現在においても第一戦でサバゲーで十分に使える性能を十分有している。この性能が25年以上前にすでに確立していたのだから、当時の東京マルイの技術力は驚愕と言ってよいだろう。この弾道性能をいまだに越えられないメーカーは沢山ある。
マルイ純正の8.4Vニッケル水素ミニSバッテリーを使用しての発射回転数は、計測器の実測および、音声波形から算出しても860rpm(秒間約14発)程度だった。これはスタンダード電動ガンとしては普通かちょっと早いか程度で、現在においても十分な回転数であり、制圧力も何ら問題ない。
ただ、取説にも記載があるメーカー公称値のニッカド8.4Vで1000rpmには及ばなかった。FA-MASというと、高回転メカボックスのイメージがあったが、これは意外な結果だった。また1991年当時のマルイの広告においても秒間12~15発(720~900rpm)のフルオート連射と記載されており、取説の1000rpmというのは少々大げさな表現なのかもしれない。
スイッチ式トリガーの感触は電子トリガー全盛の現在では比べるまでもないのだが、素直で癖のない引き味で、セミオートの追従性も悪くはない。ブルパップライフル電動ガンのトリガーで言えば、ステアーやP90よりも断然引きやすく感じる。
銃自体の操作性はブルパップということもあり、マガジンチェンジには慣れが必要。とくにフル/セミの切替セレクターはクイックな操作は難しいだろう。また機関部が耳元にあるので人によっては作動音が耳障りと感じるかもしれない。
拡張性という面ではFA-MASは旧世代の部類に入る。必要かどうかは別として、ウエポンライトやフォアグリップなどを取り付けるにはそれなりの加工が必要だろう。標準のアイアンサイトは素早く狙うには役不足。キャリングハンドルに取り付ける専用マウントレールも廃盤となってしまったので入手には苦労するだろう。
フランス軍で長らく使用し続けられているこのブルパップライフルは、他トイガンメーカーではラインアップされないモデルでもある。
しかもこの性能でメーカー希望小売価格が24,800円(税別)という超破格のプライス!! これは東京マルイのスタンダード電動ガンとしては、MP5クルツの22,800円に次いでお買い得な価格となっている。1996年からお値段据え置きというのも凄い。
東京マルイのFA-MAS 5.56mm-F1は現在でもゲームで十分通用する性能を有している電動ガンと言える。
協力:ビレッジ2
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