マルシン ガスガン モーゼル M712
かつて、いや、今でも私はトイガンの御三家オートマチックといえば、ルガーP08、ワルサーP38、そして今回紹介するモーゼル M712(C96)拳銃だと思っている。ポリマーフレームオート全盛の現在では、なかなかモデルアップされることが無いのだが、70年代から80年代にかけてモデルガンでは最も人気のある自動拳銃のひとつで、各トイガンメーカーがこぞって共作をしていた超人気モデル。
モーゼル拳銃は1960年代後半、国産のモデルガンが作られた最初期からモデルアップされている。マルシン工業もモデルガンを含め、長くこのモーゼル拳銃を作り続けているトイガンメーカー。
翻って実銃のモーゼル C96はドイツのモーゼル社が1896年に開発したオートマチックピストル。CはConstruktionのCで本来は民生用を意味するが、現在では広くC96と呼ばれている。弾薬はボトルネック形状の7.63×25mm弾を使用し、装弾数は10発、あるいはボックスマガジン仕様で20発を装填できる。
その後、1930年にモーゼル社はC96をフルオート仕様に改良したマシンピストルM712を発売する。
MAUSERは日本語でモーゼル、マウザーとも読み、マウザーのほうがドイツ語の発音に近いとか、エンスーっぽいとか言われているが、国内ではモーゼルのほうが昔から馴染みのある呼び方でしっくりくる。
グアムのワールドガン所有の実銃のモーゼルC96。
セミオートのみの仕様で、ボックスマガジンではなく、チャンバーからクリップにて10発を装填する。
モーゼルC96というと押井守監督の映画作品によく登場する。『ケルベロス 地獄の番犬』、『犬狼伝説』や『紅い眼鏡』『アヴァロン』などなど。事実、押井監督もモーゼルは好きだったようなのだが、実銃を撃ってみるとやはり古い設計の銃だけあって、撃ちにくさを感じたそうだ。確かにモーゼルC96独特の三角形のフロントサイトとV字のリアサイトで狙いを付けるのは見づらさを感じるし、レシーバー前方に弾倉を持ったフロントよりの重心、細くて丸いグリップは射撃時の反動で滑りやすいなどの問題も感じた。
まあ、しかし、それはあくまで実銃の話であって、トイガンのロマンとはまた別の話だろう。
マルシン ガスガン モーゼル M712 スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
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パッケージはシンプルなボール紙仕様。左上に商品名のタックシールが貼ってある。パッケージ内容は本体、ショートマガジン、ロングマガジン、ホップ調整用の6角レンチ、取説、BB弾少々。
フレームはHW樹脂製。手にすると、ずしりと驚きの重量感。またざらついたHWの表面もいい感じ。
120年も前に設計された銃なので、現代銃とは異なるレイアウト。アサルトライフルのようにトリガー前に弾倉がある。スライドではなく、レシーバーに内包されたボルトが後退する仕組み。
"Mauser社公認モデル"と公式サイトに記載があり、刻印もリアルなものとなっている。
現代銃のスライドではなく、ボルトを後退させて装弾・排莢を行う機構。しかしマルシンのガスブロ、モーゼルM712はボルトのホールドオープン機構は省かれている。全弾撃ち終えても空撃ちできてしまうのは残念なところ。ガツーンとホールドオープンしてほしかった。
セーフティはハンマー左横にある。レバーを上げれば安全装置がかかり、下げれば発射となる。
なお、ハンマーが起きていても落ちていてもセフティは掛けられる。
フル、セミのセレクターはフレーム左面にある。ボタンを押しながら、セミオートポジションのNからRにすればフルオートポジションになる。RはReihenfeuerの頭文字で連射を意味する。
可変ホップアップを搭載。チャンバー上の小穴から付属の6角レンチで時計回りに回せばホップが強まる。
マズル。細身の銃身に別パーツがインサートされている。フロントサイトはアウターバレル一体となっている。
タンジェント式のリアサイト。横のボタンを押しながら前後に調整できる。実銃同様に1000mまで目盛りがあるのだが、アイアンサイトの拳銃弾ではそんな距離では到底狙えないだろう。
"ブルームハンドル"(ほうきの柄)と呼ばれる独特の形状の細くて丸い断面のグリップ。
細身で握りやすいがやや滑りやすいかも。グリップパネルは木目調のプラ製だが、ここはひとつ奮発して木製グリップに交換したいところ。ステインで汚して使い込んだ感じにしたい。
グリップ背面にはショルダーストックを固定するための溝がある。
純正オプションのショルダーストックホルスターは2万円程度で販売されている。リアルウッド製で美しく、これを付ければサブマシンガンのようなスタイルになる。
マガジンは亜鉛ダイキャスト製。ロングマグは装弾数25発、ショートマグは9発。最初から2種類のマガジンが付属するのはとても嬉しい。プラ製リップ、パッキンの色が赤いのが特徴。なお、もともとは8mmBB弾バージョンが2006年に発売され、2011年に6mm BB弾バージョンが発売された。そのため、本製品の取説も8mmBB弾仕様のものが付属している。
マガジン無しの本体重量で910g。
ショートマガジンは214g、ロングマガジンは380g。つまり最大で1,290gの重量になり、これは実銃の弾薬無し重量を上回る。
今回紹介したロングバレルモデルのほかに、実銃にはないショートバレルモデルも発売されている。
ショートバレルモデルはHWバージョンで\29,500(税抜)。
屋外での実射
10月中旬の屋外にて実射テストを行った。この日の暖かく、気温は日中26度程度だった。
まずはショートマガジンを撃ってみるが、装弾数9発を撃ちきれずに1発を残してプシューッと生ガスを吹いてしまった。続いて25連のロングマガジンを使用して撃つとなかなか好調な作動。
弾道もマルシンにしては(笑)ずいぶんとホップの伸びも良く30mをゆうに超え、飛距離だけで言えば40mに到達するかと言った飛びを見せた。これはイイ!! どうもマルシン製のエアガンって、もうぜんぜん真っ直ぐ飛ばないイメージだったんだけど、これならサバゲーでも十分使えそうなレベル。
30mの距離でマンターゲットに9割がたは当てられる精度がある。
リコイルは本体重量がかなりあるのでそれほど強くはないが、それでもレシーバー内の金属製ボルトが前後するので音も良く迫力はある。
ただ、セミオート時にトリガーをゆっくり引いてしまうと、バーストしてしまうことがあった。これは説明書に捕捉が付いていたが、構造上、そのような仕様になっているとのことだ。トリガーは一気に引ききるようにしないといけない。
また、フルオートではセミに比べて弾が散る傾向にある。ガスを一気に放出してマガジン内の圧力が弱まることもあり、連射し続けるとブシューシュシュシュ、とバルブを叩きっぱなしになって終わることもあるので、過度なフルオート連射にも注意が必要となる。
とはいえ、現在販売される国内唯一ともいえるモーゼル拳銃のガスブローバックなので、これだけ撃てればもう十分。質感、重量感もよく、その美しいスタイルと、独自の構造を鑑賞できるコレクションとしても最適だし、サバゲーにも使うこともできる。トイガンファンとしては一丁は持っておきたいモデルと言える。
ただ価格がお高いのも難点。本体、スペアマグ、ショルダーストックをフル購入すると、まあ6万円コースなのだが、モーゼルファンにとってはそんな障壁を乗り越えてでも手にしたくなる一品だろう。
カスタムガンコンテストのデザートマウザー
2014年に開催したカスタムガンコンテストでハイパー道楽賞を受賞したエディさんの作品。
マルシンのモーゼル M712をベースにカスタムされている。こういうタクティカルなカスタムすらカッコよく見えてしまうのはモーゼル拳銃の懐の深さとも言えるのかもしれない。
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