MGC ベレッタ M92FS ハイパーブロウバック

MGC ベレッタ M92FS ハイパーブロウバック

写真&解説 YAS

MGCは1991年に同社初のガスブローバックモデルであるグロック17を発売し、その性能の高さと新しさから大ヒットとなった。さらにはP7M13ハイキャパシティ1911シリーズを発売し、勢いに乗るかと思われた矢先の1993年末、WAからマグナブローバックのベレッタ M92FSが登場する。このモデルはプレシュート式ブローバックとしてリコイル性能、実射性能共に飛躍的に向上、業界を震撼させ、多くのユーザーを虜にした。

MGCはこれに対抗すべく、ハイパーブロウバックと呼ばれるプレシュート式のメカを完成させ、順次既存モデルを置き換えていく。そして1994年、最初からハイパーブロウバック機構を搭載するモデルとして設計されたベレッタM92FSをリリースした。

フルストロークするスライド、スライドオープン時にも内部メカが露出しないなど多くの点で先行するWAを意識した仕様となっており、価格もWAより少し安く、モデルガンメーカーならではのディティール再現性も高いものの、実際に当時発売されたMGC製とWA製の両モデルを比べてみると、リコイルの迫力、作動の安定性など、WAのM92Fに一歩及ばないことが分かる。

とはいえ、当時のガスブローバックハンドガンのレベルで言えば十分に先進的でハイクオリティであり、いかにWAとMGCが高い次元で製品を開発していたかが伝わってくる。

しかしながらこの年の11月、MGCは経済的理由により製造部門の廃業を発表、モデルガン黎明期から第一線で活躍してきたトイガンメーカーとしての幕を下ろすことになる。

解説

サイドビュー左
実銃のベレッタ M92Fは1985年に米軍にM9ピストルとして制式採用。破損問題があったが、すぐに解決されM92FSとなる。
『リーサル・ウエポン』『ダイハード』『男たちの挽歌』などのヒット映画で主人公たちが使ったこともあり、知名度が爆発的に上がり、日本でも人気モデルとなった。
そんなこともあってか、WAのM92FSがイタリア仕様だったのに対して、MGCのスライド刻印はUSA仕様となっている。

サイドビュー右
スタイルやディティール再現は現在の視点で見ても素晴らしい。

マズル
マズルにはライフリングの再現、フロントサイトにはホワイトドットが入る。

ハンマー
亜鉛ダイキャスト製の固定リアサイト、スライドのセーフティもライブでハンマーのデコック機能もある。
ファイアリングピンのモールドも再現され、セーフティレバー操作に連動して動くのもリアルだ。

グリップ
フレームのパーティングラインは美しく処理されている。
グリップパネルにはP.BERETTAのマークが入る。WAによるベレッタ商標の訴訟が起こる前のモデルだ。
現在では世界的にみれば、実銃メーカーのライセンス取得が当たり前となっているが、当時日本の玩具銃メーカーはそのことをほとんど意識していなかった。そのことが後の大騒動を生み、現在に至るまで日本のトイガン業界に大きな後遺症を残すこととなった。

チャンバー
スライドを引くとアウターバレルがショートリコイルし、チャンバーにはマガジンリップとパッキンが見える。現在のガスブローバックと比べてマガジンリップの位置が高く、フィーディングランプが無い構造だ。

スーパーグレッツBB弾
付属のMGC スーパーグレッツBB弾。重量は0.164g。パーティングラインや湯口の残りもなく表面もよく研磨されており、5.96~5.97mmと真球度も高い。ワックスは使用されていない。

BBローダーとガスボンベ
付属のBBローダーとガスボンベ。フロンガス50g入りに対して1mlのシリコンオイルが添加されており、使用するだけで潤滑性が上がると謳われている。

マガジン
スチールプレス製ケースのマガジン。ダブルカラムの装弾数は15発。BB弾を装填すると金属のリップ部分が内部に引っ込んでロックされる。本体に装填するとロックが解除されリップが伸びる仕組みだ。
ただやはり亜鉛ダイキャスト製マガジンと比べると冷えに弱く、フォロアーが前面にないため、弾の装填も面倒という弱点があった。

本個体はシングルアクションでシアが切れず、都度デコックしてダブルアクションで射撃した。
にもかかわらず、0.2g弾、5mの距離で5~6cmにまとまる優秀さだ。DA時のトリガープルが2.1kgでスムーズなのも良い。
ブローバックスピードやリコイルはWAのマグナと比べるのは酷ではあるが、全弾撃ちきってガツっとホールドオープンする安定性はある。

通常分解
通常分解はここまでできる。ディスアッセンブリーレバーを操作してモデルガンにも通じるリアルな構造だ。当時はまだホップアップ機能は搭載されていない。

パッケージ
モノトーン調のパッケージ。MGCはモデルガンズ コーポレーションの略。

取説
表紙に映画『リーサル・ウェポン』のメル・ギブソンを描いた取説。イラコバこと小林弘隆氏のイラストは当時多くのMGC製品に使用されていた。当時の啓蒙チラシなどもイラストの味があって良い。マニュアル.PDF (9MB)

DATA


発売年 1994年6月中旬
発売時価格 ¥17,800
全長 実測 218mm
重量 実測 750g
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガスブローバック
使用弾 6mmBB弾
装弾数 15発
平均初速 67.5m/s (0.2g / HFC134a / 26℃)

撮影協力:ミリタリーグッズ.com

ミリタリーグッズ.COM

2024/08/30


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