MODIFY XTC-G1
レビュー: 金子一也 (Gunsmithバトン アキバ店長)
精密加工を極めた老舗が世界に問う電動ガンXTC-G1ついに上陸
精密金属部品を製造するメーカーとして、45年以上の歴史を誇る、台湾の老舗メーカーModify。エアガン市場に参入以来、精度の高いカスタムパーツを多数リリースして来た同社が、前作であるエアーコッキングガン、MOD24の発売からおよそ2年半を経て、ついに完全なるオリジナル電動ガン、XTC-G1をリリースした。
今回のAirsoft通信は、日本上陸を果たしたばかりのXTC-G1がどのような製品なのかを、詳しく紹介して行こう。
MODIFY 電動ガン XTC-G1 スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
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KEYMODハンドガードに包まれた精緻な造りのフロントまわり
全体に渡って見所が満載のXTC-G1だが、まずはフロントまわりから見て行こう。左右と下面にそれぞれ14個のKEYMODホールを備えたハンドガードは、フォーマットこそ実銃に倣っているが、何々風と例え難い独特のデザイン。独特の断面形状からは柔らかい印象を受けるが、T6065強化アルミの押出材からCNC加工で削り出されており、エアガン用としては過剰なほどの強度を実現している。
ハンドガードに包まれたアウターバレルもCNC加工による高精度なもので、独自に設計された3-Point Fixed Ringによってアッパーレシーバーにガッチリ固定され、剛性の高さを感じさせてくれる。アウターバレルの長さは14.5インチと、一般的なカービンサイズだが、全体のスマートな印象から、実際のサイズより長く見える。
銃口部に取り付けられたハイダーは、先端にワイヤーカッター様の切り欠きを持ったアグレッシブなデザインを採用。極めてシャープな仕上がりはCNC削り出しによるもので、しかもスチール製という贅沢さ。この製品にかけるModify社の意欲が垣間見える部分だ。
MODIFYの文字がサイトベース前面にくっきりとモールドされたフロントサイトは、樹脂製のフリップアップタイプ。側面に刻まれた滑り止めの溝は、Troy Industriesのフォールディングバトルサイトに倣ったものと思われる。上下に調整可能な鋭いフロントサイトポストは、遠距離射撃での狙いやすさをもたらせてくれるだろう。
最新のトレンドを取り入れたシャープなデザインのレシーバー
直線的な面構成によって形作られた上下レシーバーは、一般的なAR15タイプのそれから贅肉をそぎ落としたかのようなシャープさで、ひとまわり小さく造られているように錯覚するほど、銃そのものの印象を引き締めている。このデザインは、実銃の世界で最も注目されているカスタムメーカーのひとつ、Salient Arms Internationalのカスタムレシーバーをモチーフとしたものだろう。
しっとりしたつや消しの表面仕上げは、チャコールグレーの塗装によるもので、ハンドガードやストックを含めた全体に統一感をもたらしている。
マガジンハウジング部分に刻まれたModify社のロゴマークが誇らしげなロアレシーバー左側面、中央部に設けられたボルトリリースレバーは独立したパーツとなっており、実銃同様の機能を持たされているのだが、この部分については後述しよう。
ロアレシーバーに設けられたセレクターレバーは、左右両側から操作できるアンビタイプとなっている。レバーの形状こそ一般的なものだが、レシーバー表面に刻まれたピクトグラムの配置から、SCARシリーズのような45度タイプであることが読み取れるだろう。M4系の180度回すセレクターレバーに慣れた向きには戸惑いを覚えるかもしれないが、切り替え時にはしっかりとしたクリック感があるので、さほど問題なく操作出来るはずだ。またその作動についても、アンビセレクターを備えた電動ガンに良くみられる、ぐにゅっとした感触は一切無く、どちらから操作してもダイレクトに連動する、カッチリとした切り替えを実現している。
セレクターから話が逸れるが、上画像に写っている、ロアレシーバーとグリップの接合部分に注目していただきたい。
一般的なM4タイプの電動ガン(実銃も含む)は、この部分に段差や隙間が生じているものだが、XTC-G1はご覧の通り、両者のラインがスムーズに繋がっているのだ。おそらくは設計段階の極初期で、全体のフォルムを入念に練り上げたのだろう。細部にまで神経が行き届いた完成度の高さには、感動すら覚えてしまう。
チャージングハンドルを引くとボルトカバーが後退し、バレル同軸タイプのホップ調整ダイヤルが、エジェクションポート内に現れるのだが、特筆すべきは、この一連の動作の滑らかさだろう。引き下げられたチャージングハンドルにはほとんどガタつきが無く、連動して後退するボルトカバーも、滑るようにスムースな動きを見せてくれる。
またこのボルトカバーは、上述したボルトリリースレバーに後退位置でキャッチされ、ホールドオープン状態を保持することが出来るのだが、その動作を実現するためだけに、他メーカーの製品には見られない独自の機構が盛り込まれている。
もちろんリリースレバーをタップすれば、ボルトカバーが前進し、エジェクションポートが閉鎖される仕組みになっており、ホップ調整の際のストレスをまったく感じさせることがない。
一般的なM4タイプの海外製電動ガンの中には、引き下げたボルトカバーがレシーバーに引っかかって前進しなかったり、ガタつきが大きかったりするものがまま見受けられるが、XTC-G1は上述の機構によって、そういった製品から完全に一線を画した完成度を見せ付けている。
エジェクションポートを保護するダストカバーは強化樹脂の成型品。表面に施されたハニカムパターンのモールドは、実銃パーツに類似するものが見当たらない斬新なデザインで、この製品のスペシャリティ向上にひと役買っている。
アッパーレシーバー上に搭載されたリアサイトは、フロントのそれと同様、樹脂製のフリップアップタイプで、近、遠距離の切り替えと、左右の調整機能を備えている。
前後サイトともに手動で引き起こし(倒し)て使うのだが、起こしたサイトをロックする仕組みが無いため、いざと言う時に倒れている可能性が考えられる。あくまでバックアップサイトではあるが、この部分がXTC-G1で唯一残念な点だ。
ロアレシーバーと一体になったトリガーガードは、前方が下に向かって拡がったワイドタイプで、様々な環境での使用に対する柔軟性を備えた実用的なデザインとなっている。
そしてそのガードに守られているトリガーはストレートタイプで、しかもスチール製という贅沢さだ。
アメリカで盛んな3ガンマッチ(ハンドガン、ショットガン、ライフルを使う射撃競技)では、様々にカスタマイズされたAR-15が使用されているが、ストレートタイプのトリガーに換装しているシューターは少なくない。
あくまで感覚的な話しではあるが、ストレートトリガーは指の力を効率よく機関部に伝えてくれるような気がするため、マッチシューターに好まれるのだろう。
モーターを内臓したグリップは、やはり実銃用には無いModifyオリジナルのエルゴノミックデザインを採用。一見しただけではピンと来ない形状だが、おそらくは理想の形状を求めて、立体試作を繰り返した末に辿り着いたのだろう。実際に握ってみると、掌に吸い付くような自然な握り心地に驚かされる。
両側面に施された滑り止めのモールドが、最低限必要な面積に抑えられているのもその一因だろう。
驚愕のギミックを内蔵したストックまわり
バットストックはいわゆるクレーンタイプが採用されているが、ここもModify社の拘りが存分に発揮されている部分だ。
レールハンドガードを備えた多くのM4タイプ電動ガンと同じく、XTC-G1もストック内にバッテリーを収納するのだが、バットプレート中央上部に設けられたレバーを下げることでロックが解除され、上画像のようにバットプレートが開くというのは、他に類を見ないギミックだ。構造そのものは単純だが、バッテリー交換時のストレスをまったく感じさせない、素晴らしいアイディアと言えるだろう。
収納出来るバッテリーの種類は、BATON airsoft電動ガン用リポバッテリーであれば7.4v1200mAh[30C](セパレート)か同7.4v1200mAh[20C](セパレート)、または7.4v900mAh[20C](スティック)の3種類が対応可能だ。
一般的な後方配線タイプの電動ガンは、バッテリーの種類(配線の長さ)によって、ストックの伸縮が妨げられるケースが発生することがあるが、Modify社開発陣はこの部分にも着目。スライドコンダクティブレールシステムという、配線のコードに依存しない接続方法を採用し、バッテリー収納状態でのスムーズにストック伸縮を実現している。
さらに驚くべきは、バットストックを取り付けたままで、メカボックス内部のピストンスプリングを交換することが可能となっている点だ。ストックを最短にした状態でバットプレートを開くと、ストックチューブの奥に六角ボルトの頭が見える。これを外すことで、スプリングガイドとピストンスプリングを、レシーバー内のメカボックスから引き抜くことが出来るのだ。しかもこの特殊なスプリングガイドは、90度2段階のクリックストップでスプリングテンションを変えることで、分解せずに初速を調整が可能となっている。ストック部分にこれだけの見所がある電動ガンは、世界中を見渡しても、このXTC-G1だけに違いあるまい。
史上最高レベルの高精度メカボックス
外観を見ただけでも、盛り込まれた様々なアイディアに驚かせてくれたXTC-G1だが、ここからはその内部構造を詳しく見て行こう。
上の画像はレシーバーから取り出したメカボックスの外観である。上述したボルトカバーが、トーションスプリングで押さえられているのは新鮮な構造だ。チャージングハンドルを引っ張るエクステンションスプリングと併用していることで、カッチリした動作を実現しているのだろう。
それ以外の構成はいわゆるVer.2タイプに準じたものだが、良く観察すれば、従来のメカボックスとは細部が異なっていることに気付いていただけるだろう。
ベベルギヤとセクターギヤがそれぞれ、8mm径のベアリング軸受けに支えられているのに対し、スパーギヤの軸受けは小径の、ステンレス軸受けになっている。これは左右のセレクターレバーを連動させるためのギヤの軸が、スパーギヤの軸受け部分にギリギリ干渉するためで、この部分だけ小径のステンレス軸受けを使用することで、干渉を避けているわけだ。そうなると、スパーギヤだけフリクションロスが大きくなるのではと心配になるところだが、妥協を知らぬModify開発陣は、スパーギヤ本体にベアリングを組み込むという大胆な方法を採用したのだ。
このアイディアを実現するため、メカボックス内で使われているギヤは、すべてCNC削り出しのスチール製という、市販品としては考えられないほどの豪華仕様となっている。
上述した、左右のセレクターレバーを連動させるためのギヤについてだが、メカボックス左側面にあるセレクタープレートを動かすための工夫には驚かされた。45度ずつの回転で確実に発射モードを切り替えるため、特殊な形状のギヤが使われているのだが、画像からその仕組みがおわかりいただけるだろうか。時計の製造にも携わっているというModifyならではの独創的な設計に、ただ関心するばかりだ。
豪華なのはギヤまわりだけではない。ピストンヘッドはエアクラフトアルミから、スプリングガイドはステンレスからそれぞれ削り出されたもので、その両方にスラストベアリングを装備。シリンダーヘッドもエアクラフトアルミのCNC加工品で、そこに組み合わされる給弾ノズルは、以前から同社が製造、販売していたPOM(ポリアセタール樹脂)製のエアーシールノズルが採用されている。表面に網目状の溝が刻まれたシリンダーは、排気穴が開けられた加速タイプで、やはりエアクラフトアルミから作られたものだ。
樹脂製のピストンは、ラックギヤの前半7枚が金属になったハーフメタルティース仕様で、高い耐久性が期待出来る。
タペットプレートはクリアーイエローのポリカーボネイト製だが、交換必須のいわゆる中華パーツとは異なり、充分な強度と精度を備えている。
ストレスを感じさせない動作とハイレベルな弾道安定性
ここまで褒めちぎってしまったXTC-G1だが、実射性能が伴わなければ、一流の電動ガンと呼ぶわけに行かない。今回も当Airsoft通信でお馴染み、埼玉県のインドアフィールド、トリガートーク内の40mインドアシューティングレンジにて、実射テストを実施した。
まずはBATON airsoft電動ガン用リポバッテリーの7.4v900mAh[20C〕スティックタイプを繋ぎ、作動の具合を確認してみる。セレクターレバーをセミオート位置に切り替え、ストレートトリガーをゆっくりと引き絞ると、「スタッ!」といった作動音をわずかに響かせ、俊敏なレスポンスを見せてくれた。
対応するバッテリーの中からあえて容量の少ないものを選んだのだが、もたつくような感じは一切無く、可能な限り速くトリガーを引いても、メカボックスの動作は確実に追従してくれる。「鋭い」というよりは、「軽快」なレスポンスなのだ。
フルオートモードで連続回転させても、その軽快さが変わることはなく、CNC加工によるギヤ類が伊達ではないことがはっきりと実感出来る。日本屈指のガンライター&フォトグラファーにして、最強のタクティカルシューターでもあるトモ長谷川氏をして、「このメカボックスはいままでの電動ガンとは一線を画しています。作動時、ギヤにストレスがまったくかかっていないような実にスムーズな動きで、私のシュートにも確実に付いてくる素晴らしいレスポンスです!」と言わしめたのも納得の仕上がりだ。
動作が確認出来たところで、いよいよ実射だ。
付属の300連多弾マガジンJMAGに、0.2gのBATONairsoftバイオBB弾を流し込み、リロードレバーを巻き上げる。わずか5回転でゼンマイの巻上げが完了するこのJMAGも、Modify社のアイディアが光る優れた製品である。
40m先に立てられた等身大マンターゲットの中心部を狙い、セミオートで慎重にトリガーを引くと、「シュパッ!」という軽い発射音を残して、白い軌跡が真っ直ぐに伸びて行った。アイアンサイトで狙っての無造作な射撃で、ヘッドショットを決めることも出来るだけの精度が出ている。担当チューナーによれば、ホップアップパッキンの交換を含め、ホップまわりには一切手を加えていないというのだから、ますますもって驚かされる。適切な表現ではないかもしれないが、マルイ次世代電動ガンに匹敵する弾道の素直さなのだ。
フルオートモードで連射しても、弾道が乱れることはほとんど無く、30~40m先に吊り下げられたフライパンをカンカンと連続ヒットする様には目を見張るものがある。
この弾道安定性は、6.1mmプレシジョンインナーバレル(メーカー呼称)の採用によるところも大きいだろう。その名の通り内径6.1mmの真鍮製インナーバレルなのだが、実はGunsmithBATONで開発、販売しているBATONairsoft流速ルーズバレル6.10Rと長さが違うだけのものが使われているのだ。
真☆流速チューン用のカスタムバレルとして開発した流速ルーズバレル6.10Rだが、長く作れば、ノーマルチューンでも充分な初速が得られる上、安定した弾道も手に入るという事実を、Modifyが実証してくれた形である。
0.2gのBB弾でも充分な飛距離と命中精度をたたき出すXTC-G1だが、広大な屋外フィールドでのサバイバルゲームに使うのであれば、やはり重量弾を飛ばせる流速チューンが欲しくなるというもの。
GunsmithBATONでは、先に紹介したトモ長谷川氏と、皆さんご存知、元祖ミリドル乙夜さんのお二人がModify社から個人的に貸与されたXTC-G1に流速チューンを施工。サバゲーに、タクティカルトレーニングにと、愛用していただいている。
あらゆる用途で最高のパフォーマンスを発揮する大傑作電動ガン
精密金属加工を得意とするModifyという企業が、カスタムパーツメーカーとして培った経験と技術のすべてを注ぎ込んで開発した電動ガン、XTC-G1。この完成度の高さを目の当たりにして、市場初参入の製品であることを信じられるユーザーはほとんどいないだろう。
最新のトレンドを取り入れながらも、オリジナリティを盛り込んだ魅力的なデザイン。精巧に作られ、スムーズな動作と高い実射性能を実現する内部メカニズム。
MODIFYが満を持して世に送り出した、XTC-G1。この傑作を超えるスタンダード系電動ガンを作れるメーカーは、MODIFYだけかもしれない。
Gunsmithバトンの本店とアキバ店には、試射も可能な調整済みサンプルが用意されているので、そのクオリティの高さをを是非とも体験していただきたい。
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