VFC 電動ガン H&K MP7A1
台湾のトイガンメーカー、VFCから電動ガンのMP7A1が発売される。このことは2018年12月に開催された台北MOAで報じた通り。その後、3月のドイツIWAショーでUMAREXブースにて展示、5月には欧州マーケットで販売開始となり、ついに日本市場でも6月11日に発売となった。
今回その製品サンプルをVFCよりお借りできたので、レビューしてみたいと思う。
MP7A1はドイツの銃器メーカー、H&K社が開発したPDW(パーソナル・ディフェンス・ウエポン)と呼ばれるカテゴリの銃器で、4.6mm × 30弾という特殊な口径の弾薬を使用する。
H&Kの説明によると4.6mm × 30弾は9mmx19弾よりも50%も反動が小さく、20枚のケブラー繊維から成るロシアのCRISAT防弾プレートを200mの距離から貫通、50mならば2枚のプレートを貫通できる威力があるとのことだ。
最新のMP7A2では可倒式のフォアグリップは廃され、アンダーマウントレイルとなっている。
MP7は米海軍特殊部隊で採用され、ビン・ラディンを暗殺したネプチューンスピア作戦でもDEVGRU隊員が使用したとされる。また、自衛隊でも4.6mm短機関銃として調達され、特殊作戦群で使用されているとの噂もある。
それではVFCの電動ガン、MP7A1を見ていこう。
スペック & 初速データ | |||||||||||||||||||||||||
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※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、気温25.8度、湿度53.0%、10発、X3200 Mk3にて測定。 |
ブラックとレッドのシンプルかつ精悍なパッケージ。UMAREXによるH&K社正式ライセンスを取得し、いわば実銃メーカー公認のエアソフト製品となっている。NO COMPROMISE (妥協なし)のH&Kのキャッチフレーズが痺れる。パッケージ右下にはジャパン・バージョンのシールあり。
パッケージ内容はMP7A1本体、マガジン、取説(英/中対応)、弾速測定書となっている。
持った感じは樹脂製フレームながらガスブロ同様剛性が高い。重量は1660gと、ガスブロより軽めだが、それが逆にゲームでの機動性が高く、期待感が高まる。ちなみに実銃の重量は約1,900g。
精悍なスタイリング。まさに最新のPDWといったカッコよさ。
全長はわずか418mmながら高性能な弾薬を使用する強力なコンパクトウエポンの緊張感が漂う。
折り畳み式のフォアグリップが標準装備。どうせならアンダーマウントレイル仕様のA2で出してもらいたかった気もする。
4ポジションの伸縮ストック。ストックアームはアルミ製。
フリップアップ式リアサイトはウィンデージ調整可能。
フリップアップ式フロントサイト。起こした時のみサイトポストをエレベーション調整可能
サイトは倒しておけばピストルサイト、起こすとライフルサイトとなる。
スチール製のバードケージ・フラッシュハイダー。
フラッシュハイダーを外すと、M12正ネジ仕様になっている。またアウターバレルから黒いアノダイズド加工されたアルミ製のインナーバレルが1cmほど飛び出している。
社外品の対応サプレッサーも装着可能で、ACETECHからはトレーサー内蔵タイプも発売されている。
アイアンサイトを取り外せばピカティニー規格のフルフラットレシーバートップとなり、拡張性が高い。オプションでVFCのMP7A1用サイドレイルも装着可能だ。
グリップにもHKのロゴとMP7A1の刻印が入る。トリガーガード下には注意書きの刻印あり。
トリガーセフティを備えたトリガー。MOSFET+電子トリガーを搭載し、11.1V対応なので切れの良いフィーリングだ。トリガープルは720gほどと軽快。
アンビセレクターは各ポジションのクリック感がハッキリしており好印象。パドル式マグリリース、ボルトキャッチも両側から操作できるアンビ式だ。ボルトキャッチは後退したダミーボルトリリース機能のほか、押し下げながらマガジンセフティを解除できるので、弾抜きや空撃ちするのに便利。
オートストップ後は再び弾が装填されたマガジンを入れれば、とくに復帰操作無く撃てるのが良い。
チャージングハンドルを引くと連動して、ダミーボルトが後退、可変ホップアップダイヤルにアクセスできる。ハンドルは引きっぱなしとなるので手で戻す必要がある。また、ダミーボルトはボルトキャッチを下げるとクローズする仕組み。
チャンバー横にある可変ホップアップダイヤル。クリック感の無いスムース回転で、調整目安となる番号1〜8のが刻印されており、ほぼ1回転する。下回転(反時計回り)でホップUPとなる。
フロントのレシーバーキャップを引っ張ると外れ、レシーバー内部にバッテリーを収納できる。コネクターはタミヤミニコネクター仕様。
今回はBATONの11.1v 1100mAh 20C スティックバッテリーを使用した。
103 mm × 20 mm × 17 mmのリポバッテリーがピッチリ収納できる。コネクター部は上側に収納する。
あまりにもギリギリなので、使用して少し膨れたバッテリーだと入らない可能性もある。
マガジンは樹脂製で装弾数は120発。一見シースルーのような素材に見えるが、弾を装填しても見えない。
マガジンボトムにはHKの刻印あり。マガジンフォロアーが特殊。右側面のノッチはマガジンセフティ解除用の突起。
マガジンのフォロアーの側面には磁石が埋め込んであり、これがオートストップのトリガーとなる。
このマガジンフォロアーは破損しやすい部分でもあるので、撃ち終わったら、あるいは空撃ちする場合は必ずこのフォロアーを押し込んでおこう。写真はフォロアーを取り外して撮影している。
マガジンは最後の一押しに抵抗があり、最後までガチっと確実に押し込む必要がある。
バッテリーを除いた本体+マガジンの実測重量は1,660g。
マガジンは単体重量は114g。
マルイの電動ガンMP7A1とのサイズ比較。リアルサイズのVFC製に対し、マルイの電動ガンは90%サイズとなっている。
上部からの比較。
マガジンは側面から見るとVFC製がやや長く見える程度だが...。
厚みを比べるとVFC製のほうが圧倒的に太い。マガジンポーチを流用する場合は確認が必要だ。
内部構造
今回はVFCの確認を取って分解してみた。なお分解すると、メーカーおよび、代理店の正規サポートが受けられなくなるので注意が必要だ。今回は分解にあたり、千葉のエアガンショップ、モケイパドックにご協力いただいた。
フレームからメカボックスを取り出した状態。
メカボックスを取り出すには、まず、バッテリーと、マガジンを外してから、ボルトキャッチ、セレクターを取り外す。これらは小さいイモネジで横から固定されている。
続いてトリガーピンを抜き、トリガーを前に押し出すようにして取り外す。
ストックを取り外し、レシーバーエンドの2本のピンを抜けば、ユニット一式をフレーム後方から取り出すことができる。
内部ユニットはメカボックス、チャンバー、バレルが一体化している。
配線がユニット周囲を這っている。青い線はマガジンセフティ用マイクロスイッチ、オレンジの線はトリガー用マイクロスイッチ、白い線はチャンバーにあるオートストップのマイクロスイッチへと接続されている。
(1)トリガーを引くと、(2)トリガーバーが連動し、(3)リンクを介して後方のマイクロスイッチを押す。
セミオートの場合は、カットオフレバーがリンクを押してマイクロスイッチとのコネクトを解く。セレクターがフルであればカットオフレバーはリンクを押せなくなる。
メカボックスを覆っている樹脂フレームを取り外すとチャンバーへとアクセスできる。チャンバー横にオートストップ用のマイクロスイッチがある。
オートストップの仕組みは、磁石の付いたマガジンフォロアーがチャンバー内に入ると、矢印のパーツが磁力でフォロアーに引かれて動き、マイクロスイッチを押し、電流をカットする仕組み。
バレルはアルミ製で、黒のアノダイズド仕上げ。チャンバーとパッキンはマルイの電動ガンと似た形状だが、押しゴムはなく、ホップアームの突起が直接ラバーパッキンを押す仕組み。
メカボックスを分解する。モーターは薄型ショートタイプ。スプリングとガイドはメカボックスを開けなくても取り出すことができるQDタイプ。
ギアはスチール製の4枚構成となっている。8mmベアリング軸受を採用。
太くて短いシリンダー&ピストン。給排気ピストンヘッドを採用している。ノズルはシリンダーに対して偏心した位置にある。
分解組立の際はフレーム内の矢印の突起に銀色のマガジンセフティ用リンクパーツが引っかかりやすかった。また、アウターバレルに巻いてあるタイラップの突起なども引っかかる場合があり、ユニットが前にも後にも抜けなくなる時があるので、その場合は各穴から細い棒などでパーツを抑えながら動かす必要があった。
実射テスト
今回もビレッジ2にて実射テストを行った。
まず最初に言っておくと、今回のテストはVFC本社からレビュー用に2019年5月に送られてきた製品サンプルと、2019年6月12日時点で、日本国内で販売されている製品版との2つを実射した感想である。
30mではA3サイズと18cmのスチールプレート、40mではマンターゲット、弾は東京マルイの0.2g、0.25ベアリングバイオBB弾だ。
初速は90m/s強と、フルサイズ電動ガンと同等の数値だった。
まず0.2gで試したが、ホップアップの調整が非常にシビア、ある一点を超えるとホップが強くかかり、それ以下だとドロップする。また、ある一定のホップ状態で1マガジンを撃ち始めると、徐々にホップが弱くなってきて、撃ちきるころにはドロップし始める傾向がある。
ホップ回転の不安定さは40m先で大きな差となって現れる。0.2gでは1m前後の上下のバラツキが出る。0.25gで試したところ、0.2gに比べ弾道が安定しやすかった。
原因としてはホップアームが、押しゴムの無いプラ製アームで直接パッキンを押す構造のため、より軽い弾ほど、ホップ回転が不均一になったり、撃っているうちにホップアームが押し戻されてホップの掛かりが弱くなってくるのではと予測する。
またホップアーム支持が片持ちのダイヤル式なので、やや左右にバラけやすいという傾向も感じられた、ただ個々の弾道はとても素直なので、ホップアーム構造のカスタムで弾道が安定するかもしれない。
あと気になった点としてはセレクターがフルオートポジションの時に手に当たりやすく、誤って不意に作動を止めてしまうことがあった。セレクターが遊びの範囲でも動くとカットオフされてしまう敏感さなので、常に指で押さえながらフルオート射撃するとよいだろう。
また、極まれにだが、オートストップ機能が止まらなかったり、フォロアーが引っかかって給弾しないことも1度あった。これはオートストップの特殊な構造や、マガジンの個体差が影響しているかもしれない。
オートストップがかかった場合にはチャンバーに1発弾残りする仕様なので、空撃ちして弾抜きすることを忘れないようにしよう。
また、インナーバレルがアルミ製+アノダイズド仕上げなのは少し気がかりだ。今回の2,000発ほどの試射ではトラブルは無かったが、アルミバレルはBB弾のワックスなどが溜まりやすい素材でもある。このあたりは一般的な真鍮製やステンレス製バレルに交換するという方法もあるだろう。
発射回転数は11.1Vリポでなんと1800rpm(毎秒30発)、7.4Vリポでも993rpm(毎秒16.6発)の高回転型ユニットで、圧倒的な弾幕を張れる。
それ以外の部分では、トリガーは非常にキレよく、射撃音も引き締まっており、初速もフルサイズ電動ガン並み、そのポテンシャルは非常に高いといえる。
総評
軽量・コンパクトなボディで圧倒的な取り回しの良さ、キレの良いMOSFET+電子トリガー、11.1Vリポ対応の秒間約30発のハイサイクルで強烈な弾幕も張れ、マガジンセフティ、オートストップ機能など、最先端の機能と戦闘力を備えているVFCのMP7A1電動ガン。
なんといっても世界で唯一のリアルスケールMP7A1電動ガンでかつ、H&Kの正規ライセンスを取得しているという魅力もある。
カスタムのポイントは2つ。ホップアーム周りとインナーバレル交換。これで遠距離での弾道性能が安定するはずだ。30m以下の近〜中距離であればノーマルでも十分な性能を発揮する。CQBにはもってこいの新世代の電動ガンだといえるだろう。
協力 VFC、ビレッジ1、モケイパドック、FIRST、Gunsmithバトン
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