SYSTEMA 電動ガン PTW INFINITY ギアBOX編
前回紹介したSYSTEMA社の新型電動ガン、PTW INFINITY(インフィニティ)のギアボックス内部については特許申請の都合でお見せ出来なかったが、今回許可が下りたので内部構造についてレビューしたい。
PTW INFINITYの分解
PTW INFINITYのギアボックスを分解しながらその構造を紹介しよう。
INFINITYのギアボックスをロアレシーバーから取り外すには、まずボルトキャッチを取り外す。
続いてセレクターを取り外す。今回の試作ではネジ各仕様の樹脂製キャップがハマっていた。
キャップを取り外し内部のネジを取り外すと左側のセレクターレバーが外れる。
ギアボックス上面の4本のネジを外す。
このカバーはセレクター用の連動ギア軸を押さえている。
右側のセレクターレバーを固定している板状のパーツを引き抜く。
これで右側のセレクターレバーも取り外せる。
ギアボックス上部から2本のネジを抜く。
バッファチューブのキャップを外す。
これでギアボックスがロアレシーバーから引き抜ける。
PTW INFINITYのギアボックス。この中にモーター、ギア、トリガースイッチ、電子制御基板が収まっている。
ギアボックス左面にはセレクタープレートがある。セレクターレバーの回転により、電子基板側のマイクロスイッチを押して、セミフルの切り替えを行っている。
左右にある6本のネジを抜くとギアボックスが分割できる。従来のベベルギア位置に小型ブラシレスモーターが配置されている。なおバッテリーコードの途中にある黒いボックスはヒューズケース。仮に誤ってバッテリーを逆差ししたとしてもヒューズボックスから先には電流が流れない仕組み。
INFINITYのブラシレスモーターはペットボトルのキャップよりも小さい。驚きの小ささ!!
モーターのローターには24歯のヘリカルギアがあり、第1スパーギア、第2スパーギア、遊星ギア、セクターギアの順で減速される。モーターが従来のベベルギア回転軸に配置されるので高効率、低振動を実現している。
最終減速比は取材時まだ最適なものを模索中で、24:1か、27:1になる予定とのことだった。
第1、第2スパーギアを取り外した状態。
セクターギアも取り外した状態。セクターギアは半回転で弾が1発発射されるダブル(デュアル)セクターギア = DSGを採用している。
セクターギアの素材はクロモリ鋼。DSGというとハイサイクルというイメージがあるかもしれないが、INFINITYではトリガーレスポンスの向上と省電力化を目的として利用している。
トリガースイッチ基板を取り外す。タクトスイッチの作動力は従来PTWと同じものを採用しているとのことでトリガーの感触は従来と同様。
トリガースイッチ基板の裏にはボルトキャッチに連動してユニット停止するスイッチがある。
INFINITY専用設計の小型ブラシレスモーター。12個のステーターと14個のマグネットで構成される。ステーターはギアボックス側に固定されており、スチール製のローターが回転する。ブラシレスなので伝達効率が良く、小型なので慣性モーメントも小さく、応答速度が良いのが特徴だ。
こういった小型のブラシレスモーターはドローン技術の進化に伴って主流となってきたそうだ。
ギアボックス左面のカバーを開けると制御基板がある。パテントの関係で一部基板面にはボカシを入れているが、ARMコアと呼ばれる高速処理のチップと専用ファームウェアで制御している。
セレクタープレートはラックギアにより前後に移動しセミフルの位置をマイクロスイッチで切り替える。このプレートをプランジャーで押してセレクターレバーのクリック感を出している。
トリガーとトリガースプリングは従来型PTWと同じ。セーフポジションでは矢印のセレクタープレート突起がトリガーを物理的にロックする仕組み。
ただし、従来型にあったトリガーロックパーツが無くなっているのでトリガープルはその分軽くなり、この試作品では約520gだった。市販品では従来型のトリガープル720g程度にスプリングを変更するかもしれないとのこと。
制御基板と一体になったモーターをギアボックスから取り外す。なお、モーター背後に逆転防止機構があり、モーターが無段階で逆回転しないような仕組みになっている。
従来型に比べ、モーターの磁束漏れが少なく、ネジなどがレシーバーにくっつくこともない。
INFINITYのユーザー設定
前回の記事ではまだ開発中につき、お伝え出来なかったが、PTW INFINITYには自動プリコック調整機能が付いている。トリガーを引きながらバッテリーを繋ぐことで、自動的に3発ほど射撃を行い、スプリングレートにマッチした後退位置を保持する仕組みだ。
これによってさまざまなセッティングのシリンダーに簡単に設定可能だし、スプリングの経年変化にもオーバーランすることなく対応できる。
SYSTEMA PTW INFINITYのオートプリコック調整機能#トレポン #PTW #インフィニティ pic.twitter.com/Pekv4kSx7s
— ハイパー道楽 (@hyperdouraku) February 17, 2021
また、フルオートと3点バーストの切り替えはトリガー長引きでおこない、プリコック機能のオフ設定も行える。
別売のプログラムカードを接続すればプリコック時のセクターギア位置を0.5度単位で調整可能だ。
またこのカードで電圧警告値、電圧カット値、モーター発熱警告値、モーター発熱停止値、発射レート(rpm)の設定も可能だ。出荷状態で発射レートは800rpmにセットされており、400~1200rpmの範囲で設定変更可能。
取材時にはモーター可動率や電磁ブレーキ率も変更できたが、必要以上にレスポンスを低下させたり、消費電力を増やすことにも繋がるので、このあたりは市販時に搭載するか検討中だそう。
PTW INFINITYの価格
PTW INFINITYはまずバリューキットとしてデリバリーされる。
バリューキットの内容は、長さ150mm、内径6.03mmのインナーバレルとチャンバーアッシー、M130スプリングのシリンダーアッシー、アンビセレクターのINFINITYギアボックス、従来グリップを取り付けできるダミーモーターのセットとなる。
従来PTWだとこれと同じ構成のバリューキットはないが、換算すると約17万円ほどの構成となる。INFINITYではそれと同じくらいか、予約特典の初回限定価格としてもう少し安く提供できるかもしれないという話だった。ほとんどすべてのパーツが高品質な国産品であることを考えると従来PTWと同程度の価格というのは納得なのかも。
従来型PTWと撃ち比べ
今回自前のトレポン2丁を持ち込んで、アッパーレシーバーの互換性や撃ち比べなどしてみた。
ロアレシーバーは互換性があるので、バリューキットを購入すればギアボックスの積み替えは可能。ただし、現在スパーギア比の検討を行っている最中で、第2スパーギア径の最終サイズによってはシリンダーの互換性はまだ未定とのことだった。
愛用しているMOVE製トレポンとINFINITYを撃ち比べてみた。
まず、自分のトレポンを撃つ。シュタッ、シュタッ、シュタッと心地よいいつもの撃ち味。
撃ち始めてすぐにシステマの開発者が「そのPTW、やたらと音が静かじゃない?」と言う。
私自身はこれがトレポンだと思っていたが、NBORDEのカスタムレシーバーとMOVEで組んでもらったトレポンが相当に良い仕上がりなのが驚きのようだ。
続いてINFINITYを撃つ。NBORDEのHK416レシーバーだ。
タッ、タッ、タッ。あーもう、全然違う!! 全く違うよこれは!!!
INFINITYの恐ろしく軽快なトリガーレスポンスは1発撃てば誰でもすぐにわかる。
これはエアコッキングガンのシアが切れる感覚に近いものがある。それくらい発射時にギアが回転しているという感触が無い。耳元で作動させてもギア音は全くなく、ピストン打撃音と発射の炸裂音だけが聞こえる感じ。
そしてギア回転軸とモーター回転軸が同じなので、モータートルクの捻りが無いのも良い。
トリガーを引くとまず弾が発射され、その後に次弾の準備動作を行うというプリコック機能は実銃の作動順序と同じで、より精密な射撃に向いている。ブラシレスモーターと高度な制御機能の効果で作動は淀みなく安定している。
参考までにプリコックをオフにして撃ってみた。
わずかにセクターギアの回り始めを感じるが、それでも従来トレポンよりもかなりレスポンスが良い。
この試作品はトリガープルが200g軽くなっているのでより爽やかに感じるのかもしれない。
ただ、重厚感という意味での撃ち味は従来PTWのほうが感じられる。トリガープルを同じにして撃ち比べてみたいところだ。
あえて気になる点を挙げるとするならば、左セレクターがネジ止めになってしまったところか。まあでもこれはグリップからモーターが無くなったこととトレードオフなわけで、グリップの自由度が高まったことも含めメリットのほうが断然大きい。
グリップにバッテリーを収納してしまえばパトリオットピストルでもなんでも作れてしまう。電動ガンが新たなステージに到達したことを実感する。
無限の可能性、INFINITY
古代龍、ウロボロスをモチーフにしたというINFINITYのロゴ。無限の可能性を秘めた最新の電動ユニットだ。
前回、このシステマのPTW INFINITYを紹介したあと、読者からARだけでなく、いろんな機種に組み込んで発売して欲しいというご意見を多くいただいた。確かにこれだけ小さいのだから、SMGや曲銃床など、古今東西のバリエーションが作れてしまう。
ぜひこんなモデルやあんなモデル作りませんかとシステマの開発者にお話をしたのだが、システマではモデルラインアップを広げるのではなく、むしろショップやトイガンメーカーとコラボしてバリエーションを広げていきたいという意向があるのだそうだ。
となればシステマは高性能なINFINITYユニットを供給し、ガワは各ショップやトイガンメーカーがお得意のモデルに搭載するという夢のような展開があり得るかもしれない。中華ポンといったコピー品ではなく、ユニットは純正を導入したほうがわざわざ開発する手間もないので、海外メーカーも含めて皆さんWIN WINなんじゃないかと思うのだが、いかがだろうか?
さて、次回は実際にINFINITYを買って、MOVEで組み込んでもらってみた! といった記事ができればよいなぁと勝手に思っている。もうすでに仮予約がたくさん入っているようなので注文対応してもらえるのか心配なのだが…。
価格に関する追記:
2021年2月23日、システマ社より価格に関する公式アナウンスがあり、販売各社も正式に予約受付を開始した。
初回販売数2000セット限定で、定価(予価)128,000円~138,000円 → 111,000円で4月発売予定となるそうだ。
なお、本価格はバリューキットのものであるため、エアガンとして完成させるには別途レシーバー、アウターバレル、ストック、ハンドガード、グリップなどの外装パーツが必要となる。
協力:SYSTEMA
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SYSTEMA 電動ガン PTW INFINITY (インフィニティ)