SYSTEMA 電動ガン PTW INFINITY (インフィニティ)
今回SYSTEMA社が開発した新型電動ガン、PTW INFINITYの試作を撃たせていただく機会があったので、その驚くべき構造を可能な限り紹介しよう。
なお、現時点では特許の申請手続きに伴い、公開できない情報も多く、とくにギアボックス内部や新型モーターの構造や配置に関することはお伝え出来ない。この詳細は後日、公開が可能になり次第随時お伝えできればと思う。
システマと言えば電動ガンのPTW(プロフェッショナル トレーニング ウエポン)を製造していることでご存知の読者も多いだろう。これまでもハイパー道楽でPTWのレビューをしているが、このハイエンド電動ガンの雄とも言うべきPTWに新たなラインアップとして「INFINITY」が加わる。
INFINITY = ∞、無限の可能性を秘めたシステムという意味が込められている。
今回伺ったのは埼玉県蕨市にあるシステマコーポレーション。応接室のテーブルに置かれた3丁のトレポン。一見してノーマルのM4カービン、そしてNBORDEのカスタムレシーバーのHK416、HERA ARMSのカスタムストックを組み込んだ3丁のARが置かれていた。
PTW INFINITYの特徴
PTW INFINITYの特徴は以下の点となる。
・小型ブラシレスモーターをギアボックスに内蔵した
・ダブルセクターギアの採用
・プリコック機能が標準となった
・電子制御回路がより高度化し、3点バースト、発射レートコントロール等ができるようになった
・消費電力が減った
AR系の電動ガンと言えばPTWに限らずだが、グリップ内にモーターが配置されロアレシーバー側のギアボックスに動力を伝達するレイアウトが一般的だが、なんとこのINFINITYはグリップ内にモーターが無く、ロアレシーバーに1本のネジでグリップが固定されるリアル構造となっている。
試作品にはGBBのグリップが装着されていた。PTWかどうか識別する際にグリップ底部の4本ネジをチラッと見ることがあるのだけど、INFINITYではもはやその確認方法は通用しない。
もともとPTWはロアレシーバーの外形がリアルサイズなのが特徴だが、グリップ内にモーターを配置する関係上、写真上のようにグリップ取り付け部にモーターの軸とピニオンギアが入る構造になっている。
INFINITYではそれがリアルサイズに加工され、さらに取り付け用のパーツがハマることにより、グリップは独立したパーツとして取り付けらる。これにより、従来の電動ガンにあったグリップの取り付けアングルに制限がなくなり、CQBグリップをはじめとする様々なリアルサイズのカスタムグリップが取り付け可能となった。
この薄いリアルサイズのPTWのロアレシーバーには従来と同じサイズのギアボックスがあるのだが、このギアボックスにモーターが内蔵されている。
小さい、小さいというだけではイメージがわかないかもしれない。その構造やどのように配置されているかはパテントの関係でまだ公表できないが、大きさだけで言えばペットボトルの蓋より小さいモーターサイズだ。具体的なモーターの仕様は次回の記事で解説するが、今はこの表現が限界なので、ご了承いただきたい。
従来のPTW同様、ピンを抜いてレシーバーをテイクダウンすると、見慣れたPTWのギアボックスが見える。アッパーレシーバーは従来のPTWと互換性があり、流用もできるようになっている。
クロモリ鋼製のセクターギアはDSG(ダブルセクターギア)が採用されており、アッパー側のピストンと接する一部が見えている。
従来型はセクターギアが1回転で1発発射するサイクルだったが、このDSG化により半周で1サイクルとなり、さらにピストンを後退保持するプリコック機能が採用され、トリガーレスポンスが向上した。
セクターギア横に見えるのはヘリカルスパーギア。詳細はまだ伝えられないのだが、このことから遊星ギアによるセクターギアの駆動方式は従来のPTWと変わりないことがわかる。
セクターギアの位置検出は従来型の光センサー式から磁気センサー方式へと変更された。
実際に内部構造を見せていただくまで、この中にモーターが内蔵されているとは信じられなかった。
オプション販売されるプログラムカードという電子制御設定用のツールを接続し、プリコックタイミングの調整や、発射サイクルの変更、バッテリー電圧管理など、各種設定を行うことができる。
発射サイクルは初期設定で実銃のM4カービンと同じ750~800回転に設定してあるが、400~1200rpmの範囲で設定変更可能だ。1200rpmだと秒間20発となり、これ以上の回転数も可能ではあるが、給弾効率などを踏まえてこの範囲にとどめているとのことだ。
セレクターの構造は従来型PTWとは異なり、レバーは軸部のネジで固定されている。構造上仕方ないが、ネジ頭が露出してしまうのは残念な点だ。
取り外すとギアボックスが見え、ラックギアにより左右レバーをコネクトするアンビ仕様で、セレクタープレートを介してセミ/フル/セーフポジションを切り替えている。
ギアボックスケースは本試作品ではアルミ製だったが、量産型では精度と衝撃吸収に優れたべリック亜鉛ダイカストが使われる。
このようなギアを介して左右のセレクターを連動させている。セレクターの感触は今回の試作ではちょっと節度が緩かったが、量産品では従来のPTW同等のクリック感を実現するという。
ロアレシーバーの内部形状は従来型と同じとのことで、ギアボックスだけを移植することも可能なのだそう。
電子制御基板は大型化されたが、これもギアボックス内に内蔵。ARMアーキテクチャというスマホにも使われるような高速処理のチップと専用ファームウェアを採用している。
トリガーユニットはタクトスイッチを押すタイプで、トリガートラベルは従来PTWとほぼ同等だった。トリガーやトリガースプリングも従来PTWと同じなので、物理的なトリガーフィーリングはPTWに準じている。ただし、前述のようにDSGとプリコックにより、トリガーを引いてから弾が発射されるまでのレスポンスはかなり向上していると感じた。
フルオートと3点バーストの切り替えは、セミオートでのトリガー長引きという操作方法。これは最近の電子トリガー搭載電動ガンと同様だ。なお、メカニカル3点バーストのように指きりで中断できる仕様になっているので、チョンと引いただけで必ず3発発射される他社の電子バーストとは異なる機能だ。
フルオートの発射レート値がどの設定でも、3点バーストでは1200rpmの回転数固定で発射されるようになっているが、量産版では別々に設定できるようになるかもしれないとのことだった。
バッテリーは11.1v、700mAh、45Cが推奨される。コネクタ形状は大電流にも対応できるXT30コネクタとなる。
また小型ブラシレスモーター化、プリコック、DSG化により、従来のPTWより消費電力が減り、容量あたりの発射数が向上している。あくまで参考値だが、従来型が120A MAX / 60A平均に対してINFINITYは50A Max /20A平均となることで数値的には3倍多く撃てることになる。
今回拝見した試作ではストックチューブにバッテリーをセットしたが、今後ストックレスモデルなどを踏まえて、マガジン内蔵バッテリーや、グリップ内にバッテリーをセットする方法も検討されているとのことだ。グリップ内バッテリーならストックレスモデルも簡単に作れる。夢が広がるなぁ。
プリコック機能が搭載されたことで、給弾されている限りチャンバーノズルは常に前進、装填した状態にあるが、弾を撃ち尽くすとピストンはプリコックされずに前進位置で作動停止、また弾が残った状態でもマガジンを抜いて、ボルトリリース下側を押した状態で1発空撃ちすれば弾抜きとともにプリコック解除となるので、ゲームでの安全運用面でも問題ない。
また、ギアに異物が入った状態で動作させた際には異常を検知してユニットが自動停止する安全機能も付いている。
セレクターがセーフの位置で電源オフ、セミ/フル位置でギアボックス内部のパイロットランプが点灯する。
実射の感想
システマ社内のシューティングレンジでこのINFINITYを撃ってみた感想を述べたいと思う。
筆者は普段屋外のサバゲーでは基本的にMOVE製のトレポンを使用していて、もともと、トリガーフィーリングの良いトレポンではあるが、それと比べてもトリガーのキレは向上していると感じた。
タッ、タッ、タッとまるでシアが切れるような感触でセクターがピストンを開放していく。
剛性の高いPTWレシーバーから安定して即座に弾が発射される感覚は他のプリコック電動ガンとは一線を画す撃ち味だ。
グリップ内にモーターが配置される従来型PTWは撃った際にモータートルクがクっと捻るような感触があるのだが、それが無くなり、まったくクセのない撃ち味になっている。
従来PTWの味わいも好きなのだが、このINFINITYはかなりスッキリとした軽快でスポーティな味付けと言えるかもしれない。
気になった点としては、現状プリコックが解除された後の復帰動作はなく、初弾はフルストロークで始まるので、できれば何かしらのアクションで初弾を装填すると共にプリコックさせる機能が欲しかった。ただこの点については発売までに何らかの検討がされるかもしれない。
弾道や初速などはシリンダー&チャンバーまわりのセッティングによるが、INFINITYではM130シリンダーアッシーに150mmのショートインナーバレルが組み合わされたものが初期設定される。
0.25g弾で85m/s程度のセッティングとのことだから0.9J仕様となる。もちろんこれ以下のパワーにも対応できるので従来のアッパーユニットを利用したり、インドアレギュレーション仕様なども容易に作れる。
しかし、よくまあこんなに小型のモーターで、こんなトルクフルな作動ができるなぁと驚くばかり。
この新型ブラシレスモーターはINFINITY用に新規開発されたシステマ製。素材から形状まですべて専用設計だ。ギア類もすべて新設計となる。機械加工技術に定評のあるシステマが、最新の電子制御技術を投入して作った、まさにジャパンメイドの結晶ともいうべき、世界最新・最高峰の電動ガンの誕生と言えるだろう。
PTWにこのINFINITYという新しいラインアップが加わったことにより、電動ガンは新たなステージに突入したと言っても過言ではない。トイガン史におけるターニングポイントといっても良いだろう。
一連の取材を終えて、かつて無い感動があり、興奮で眠れない。
PTW INFINITYの発売は2021年春、まずはバリューキットでディーラーにデリバリーが開始され、その後チャレンジキットが発売予定となる。価格はまだ未定ながら従来PTWよりは高くなりそうな感触だった。
ハイパー道楽では今後もこPTW INFINITYの内部構造などが明らかになり次第、追加記事を掲載していく予定だ。
協力:SYSTEMA
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