マルゼン エアガン APS SR-2 ロングレンジ バージョン
レポート:戸井 源太郎
先日(2016年12月)に東京マルイのボルトアクションエアーライフル M40A5が発売され、今、私の中で、スナイパーライフルが盛り上がっています。
スコープで狙いながら1発必中で敵を倒す、そんなスナイパーに憧れるサバゲーマーは多いでしょう。
今回は、軽量、コンパクトで高精度なボルトアクションライフルのマルゼンのAPS SR-2 LRV(LONG RANGE VERSION)をレビューします。
マルゼンのAPS SR-2はNPO法人 日本エアースポーツガン協会(JASG)が主催する精密射撃競技のAPSカップ用の競技用ライフルです。
APSカップとは簡単にいうとオリンピックのような精密射撃をエアソフトガンで再現した競技で、2016年8月には、第26回本大会が開催されました。ハンドガン、ライフルのクラスがあり、ライフルなら10mで2cmの精度が求められます。肉体的、精神的な強さと、競技銃の精度が求められます。そのAPSカップにはJASGで認定された競技銃でないと参加できません。その参加資格を有するのが「公式認定競技銃」です。
精密射撃ではホップでBB弾に回転がかかることで精度に問題が出るため、多くはノンホップです。射撃距離もハンドガンで5m、ライフルで10mなので、ノンホップでも充分なのです。
しかし20〜40mで撃ち合うサバゲーでは、そうもいきません。
このSR-2 LRVはホップを搭載し、バレルを約76mm短くしたサバゲーにも適したボルトアクションライフルです。可変ホップアップを搭載した「公式認定競技銃」ということで命中精度も期待が高まります。
ストック、グリップは使い慣れたM4タイプを採用したマルゼンのオリジナルデザインボルトアクションライフルです。全長1m以下、重量2kg以下がSR-2 LRVのコンセプトで、ボディの主要パーツはグラスファイバー入り樹脂で非常に軽量に作られています。
またノンホップのSR-2とホップ搭載のSR-2 LRVが一目で見分けがつくよう、ハンドガードのパネルがグレーとなっています。ちなみにノンホップは黒です。
■スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||
|
|
パッケージはダンボール地で、中央に商品名がプリントされています。JASG、公式認定競技銃のステッカーが貼られています。
また右端にSR-2(ノンホップ)と見分けがつくようLRV(LONG RANGE VERSION)と一目でわかるオレンジ色のステッカーが貼られています。 パッケージサイズは1,015 X 205 X 90mmです。
内容物は左からAPS SR-2の取説、その右のオレンジ色がLRV用の追加使用説明書です。
さらに公式認定競技銃 製品保証登録書、製品登録規約、APSカップ公式ペーパーターゲットが付属しています。
他にクリーニングロッド、BBローダー、左利き用のコッキングハンドル、六角レンチ2本、BB弾、そしてAPS公式認定銃のカタログが同梱されています。
ボディはマルゼンのCA870シリーズにもどことなく似たショットガンのようなボディといった印象です。エジェクションポートはダミーで、ボルトを引いても開いたりはしません。
トリガーガードもM4のような別パーツ式です。トリガーは遊びも少なく、シアの落ちもよい感じです。またトリガーの上方にAPS SR-2の刻印があります。
グリップはA2タイプのグリップが装着されています。このグリップもグラスファイバー樹脂のようです。
構造的に実物、GBB用の各種グリップも装着できそうな気がしますが…。
グリップの基部が微妙に太く、実銃グリップは装着はできませんでした。
ちなみに電動ガン用のグリップを装着できるようにするアダプターがフリーダム・アートから発売されています。
コッキングハンドルは33度でボルトのロックが解除できます。わずかな操作でボルトが引け、構えながらでも速射ができます。
ボルトのストロークは85mmで、ショートストロークといってよいでしょう。コッキングもそれほど重くなく、構えながらでも容易に操作できます。
コッキングハンドルの後ろにセフティがあります。赤い丸が見える状態が「FIRE」です。ちなみにセフティの状態でもコッキングはできます。
アウターバレルはアルミでフリーフローティングとなっています。ハンドガードはSR-2のノンホップと差別化されグレーです。このパネルは別パーツになっており、マルゼンでは赤や青などのパネルも企画されていましたが、発売されたという話は聞きません。
ハンドガード先端にはベルサタイプのバイポッド用のロッドが装備されています。マルゼン純正のボールジョイントバイポッドBP-1が装着可能です。また他社の同タイプのバイポッドも装着できそうです。今回のレビューでは東京マルイのタクティカルバイポッドを使用しました。
ボディ上部にはピカティニー規格のマウントレールを装備しています。リアサイトはありません。このレールもグラスファイバー樹脂となっています。
ピカティニーレールはスコープ搭載のための最低限の長さで、すぐ前方がアウターバレルで一段低くなっているため、大口径のスコープを低い位置で搭載できます。パララクスを最小にする非常に有効な構造だと思います。
バレルは肉厚のブルバレルを再現しており、フロントサイトはありません。
マズル先端のマズルキャップはネジ式になっており、脱着できます。純正のバニシング サイレンサーに付属しているマズルキャップを装着してサイレンサーが装着できます。マズルキャップ、サイレンサーはM14正ネジのようです。
ストックはブッシュマスタータイプのリトラクタブルストックが標準装備されています。ストックは6ポジションです。
ストックもボディ同様にグラスファイバー樹脂製のマルゼン製のストックです。
ストックチューブまでもグラスファイバー樹脂製になっています。ここまで徹底した軽量化が図られています。構えててみても、しなることもなく、ガッチリしており、強度も申し分ないと思います。
ハンドガード下面、マガジンの先に可変ホップアップ調整用の穴があります。
付属の2.5mmの六角レンチで調整します。時計回りでホップがかかります。調整幅は約3回転分です。
ハンドガード下面にマガジンをセットします。
マガジンはプラ製で63gと非常に軽いです。マガジン上部にカバーがついたAPS-2シリーズとよく似たものですが、マガジン底部にマガジンキャッチがあるSR-2シリーズ専用となっています。
装弾数は30発で、ローダーで装填すると31発入ることがありますが、それだと銃本体にカチッと装填できません。その時はマガジンからBB弾を1発、抜いてください。
スペアマガジンは1本、1,000円(税別)でとても経済的です。
コッキングハンドルの組み替え(左利き用)
SR-2はコッキングハンドルを左利き用に組み替えが可能で、そのため、左用のコッキングハンドルが同梱されています。
組み替え手順としては、まず、マガジンを抜き、セフティをかけてコッキングします。
付属の4mmの六角レンチでシリンダースクリューを外します。
左からシリンダースクリューとワッシャー、シリンダーカバー、ハンドルが取り外せます。
シリンダーカバー内のカバーストッパーを取り出し、カバーストッパーとスプリング(大)とハンドルクリックとスプリング(小)を取り出し、左右位置を入れ替えます。細かいスプリングパーツなので、飛ばして紛失しないように注意してください。
右用のコッキングハンドルのハンドルエンドをプラスドライバーで取り外します。
またハンドル部にあるピン(ハンドルストッパー)も抜きます。
逆の手順で左利き用のハンドルを組み込めば、コッキングハンドルの位置を組み替えることができます。
実射テスト
今回は高精度なボルトアクションライフルということで、東京マルイのベアリングバイオ0.2gBB、0.25gBBに加え、パーフェクトヒット最上級スペリオール 0.28gBBを用意し、距離も30、40、50mで人物大ターゲットに対して射撃テストを敢行しました。
ホップの調整は六角レンチを使用するので少々面倒ですが、操作は滑らかで各重量のBB弾でもきっちりと真っ直ぐな弾道を得ることができました。
当日はかなり風が強く、風を読んで修正して撃つ必要がありましたが、どの重量のBB弾でも30mでヘッドショット、40mでボディ上半身をほぼ確実にヒットできます。風がなければ、40mでヘッドショットも可能でしょう。
50mで試射した感触では、0.2gでは大体、体半分、上狙いでボディ下腹部にヒット、0.25gで頭2個分上狙いボディ下腹部、0.28gでは鼻を狙って、ヘソに当たる感じでした。ホップアップ調整にもよりますが、やはり重量弾の方が風などの影響も少なく、精度も高いように感じました。
これならばマルイの新商品M40A5と同格の命中精度と言えます。
初速は0.2gBB弾で平均94.41m/s、0.891Jと意外と高いことに驚きました。実射した感じではそこまで高いように思えませんでした。しかし飛距離、精度を出すためにはある程度の初速は必要なので、高めに設定されているのだろうと思います。
立射で構えてもコッキングハンドルのロックもわずかな角度なので、素早い操作ができます。コッキングも非常に滑らかで重たくもなく、スムーズです。
加えて、銃本体が軽いので立射で狙いをつけたままで、速射も可能で、ビシバシ当てられます。さすがにポンプアクションよりは遅いですが、コッキング時に狙いが外れてしまうエアコッキングのハンドガンよりは連射速度は断然早いです。
トリガーの遊びは少なく、重くはないですが程よいテンションがかかり、ボルト操作で勢いが付いていて、トリガーに指をかけた時に思わず引いてしまう事故もないでしょう。
さすがは競技銃! 非常によいトリガーの感触です。
あえて言わせていただくのなら、SR-2には固定のサイトがなく、スコープの使用が前提なので、チークパッドが欲しかったですね。
各種BB弾を試してみて、やはりSR-2を活用するのなら0.28gの精密BB弾がよいでしょう。とにかく、狙ったところにビシバシ当たるのが3〜4倍ズームスコープでよく見えるため、とても楽しかったです。
サバゲーでは1〜4倍のショートスコープを搭載し、ギリースーツを着用して、遠近に対応できるスナイパーとしてフィールドに潜めば、電動ガンにも充分対抗できるでしょう。
素材に軽量化のためにグラスファイバー樹脂を採用していますが、逆にコストダウンにも繋がっているのか、それともAPSカップ(18歳未満でも親の同伴で参加可能)の競技人口を増やすためか? この精度で22,890円(税別)は非常にお得なのではないでしょうか。
とにかくこのAPS SR-2 LRV(LONG RANGE VERSION)は軽量、高精度、低価格と三拍子揃った誰もが納得できるボルトアクションライフルです。これは文句なくオススメできる1丁です。ある1点の問題を除けば...。
JASGと改正銃刀法
ご存知かと思いますが、現在、エアソフトガンは改正銃刀法により、0.98J以内にパワーが規定され、それを越えたエアガンは準空気銃として所持が禁止されており、これに違反すれば罰せられます。
法改正されるきっかけとなったのは、2005年10月に阪和自動車道で、改造エアガンによる連続発砲事件が発端です。この事件を受け、法規制に向けての世論形成が進みました。
その間、ユーザーの間では「0.4Jくらいに規制されるのではないか」「サバゲーが禁止されるかも」「いやいや、エアガン自体禁止されるのではないか」などなど喧々諤々でした。
結果的には、運よく改正法はサバゲーに、あまり影響がない上限パワー0.98J (6mmBB弾)に決まり、2006年8月21日より施行されています。逆に上限パワーが法律で決められたため、サバイバルゲームが一般にも広まるキッカケとなったと思います。
しかしそれは単に運がよかっただけなのでしょうか?
実は法改正について、マルゼン、日本エアースポーツガン協会(JASG)の働きかけが大きかったといわれています。
JASGは1993年に任意団体として設立、2007年にはNPO法人となり、四半世紀に渡り、競技射撃の啓蒙、青少年育成活動の一環としてAPSカップを主催しています。
そのAPSカップを競技として成り立足せるためにはどうしてもエアソフトガンのパワーが1J前後必要ということで、働きかけていたそうです。その主張がほぼ認められたおかげで、現在、我々がサバゲーを楽しめているといっても過言ではないのです。
マルゼンのエアソフトガンはAPSカップの高精度競技銃のノウハウがあり、製品に反映されています。20年前、スナイパーライフルの代名詞といえばマルゼンのAPS-2でしたし、そのメカを組み込んだCA870シリーズは安価で高精度ということで現在もサバゲーマーに人気のエアガンです。
しかし現状、このSR-2をはじめ、マルゼンのエアソフトガンは市場でほとんど販売されていません。2、3年に一度くらいで再販されているようですが、まったく供給が追い付いてないのです。
先ほど述べた1点を除けばというのは、"マルゼンの商品が市場にない"ことです。みなさんにオススメしたいのですが、どこにも売ってないのがSR-2の一番の問題なのです...。あれば売れると思うので、マルゼンには可能な限り早急に再生生産をお願いしたいところです!
撮影協力:ビレッジ2
■関連リンク
マルゼン ガスガン ワルサーP99 FS カービンコンバージョン
マルゼン ガスガン ワルサーP99 TacIII
マルゼン ガスガン ワルサーP38
マルゼン ガスガン ワルサー PPK/S
マルゼン ガスガン イングラムM11
マルゼン エアガン CA870 ストック