東京マルイ S&W M-59
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ガスブローバックハンドガンの歴史の中で、忘れてはならないのがこの東京マルイ S&W M-59である。当時はどのメーカーもまだブローバック作動を成し得ておらず、実銃通りスライドの後退によって装填、発射するハンドガンの登場はかなり衝撃的だった。しかし、マルイが開発したメカニズムは、エアガンファンの想像とだいぶかけ離ており、その意味でも衝撃は大きかった。ガスの圧力をスライドの後退ではなく「前進」に使い、スライドはスプリングで後退させるというものだったからだ。
本体へのガス供給は独立した専用のボンベを使い、BB弾はチューブ状のマガジンでスライドの上部に挿入する。スライドは後ろ向きに配置されたピストンスプリングの力で常に後退位置にあるが、ガスボンベを入れるとシリンダーにガスが流れ込み、スライドが前進、スプリングが縮んだ状態となる。この時点でマガジンが装填されていればBB弾をチャンバーへ1発送る。トリガーを引くとストライカーがバルブを開放、チャンバーへガスが流れて弾が発射される。ガスが抜ける事でピストンスプリングに押され、スライドが後退をはじめる。スライドが後退しきった時点でピストンはバルブを閉じチャンバーへのガスが止まり、再びスライド内のシリンダーにガスが溜まり、スライドが前進する。
ガス圧とリコイルスプリングの関係は現在のガスブロと逆だが、それでも一連の動きはオートマチックのブローバック作動と基本的には変わらない。スライドの前後動を自動化し、連射を可能にしたという功績は、間違いなく大きかったのである。
また、翌年にはブローニング・ハイパワーをモデルアップ、本シリーズの技術はその後、排莢式ガスガンのワルサーMPL、MP5A3へと活かされることとなった。
本文にもある通りスライドが常に後退位置にある。リアルなフレーム側に比べ、若干太目のスライドが特徴的だ。
スライド上面はサテンフィニッシュ、フレームはヘアライン、グリップはグロスと、細かく仕上げを変えてあるあたりはさすがマルイ。
フレームは左右分割のモナカ構造。この価格帯であれば当然で、これはあくまでも作動を楽しむためのエアガンなのだ。
スライドの後退ストロークが25mmしかないので、アウターバレルの突出量も少ない。
リアサイトは無可動だがエッジが立っており狙いやすい。スライド後部の穴はマガジンの挿入口。
装弾数は15発、BB弾を入れたチューブラーマガジンを差し込んでロックする。ハンマーはダミー。
マガジンポートにはガスボンベを挿入する際の注意書きが。逆さでも横向きでもダメだというのだからなかなかデリケートだ。
専用のガスボンベは、アダプターを介してガスを注入する事で何度でも再使用が可能。
チューブラーマガジンとマルイ純正のBB弾。今や高精度BB弾の代名詞でもあるマルイだが、この頃の製品にはまだバリや湯口が残っていた。
当時マルイが販売していた、作るモデルガンキットシリーズと区別するため、パッケージ外箱の右上に「完成品」と表示されているのが興味深い。
作動性を重視するマルイらしく、マニュアルを見るとフレームにグリスアップ用の穴が設けられていた事がわかる。
マニュアルPDF (2.6MB)
DATA
発売年 | 1986年12月25日 S&W M59 1987年5月12日 ブローニング・ハイパワー |
発売時価格 | ¥5,900 |
全長 | 実測 209mm |
重量 | 実測 465g(ガスボンベなし) |
バレル長 | -mm |
発射方式 | ボンベ装填式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 15発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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