東京マルイ 44オートマグ ファイアースポーツ銃
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
かつて、トイガンの世界ではしっかりとした役割分担がなされていた。つまり、火薬による火や煙と発火音はモデルガンが担当し、弾丸の発射はエアガンで、という具合にだ。そのふたつの要素を同時に体現出来るのは実銃のみであり、我が国ではそれが原則的に認められていない以上、どうしても役割を分けなければならなかったわけだ。
もちろん、そのふたつを同時に実現しようと挑戦したトイガンも存在した。中でも画期的だったのは、コクサイのスーパーウエポンM16A1と、レミントンM700だろう。しかし、これらは残念ながら失敗作だったといわざるをえない。
今回紹介する東京マルイの44オートマグ ファイアースポーツ銃は、そんなトイガンの歴史に一石を投じた1丁だった。発火はキャップ火薬で、弾の発射はストライカーでつづみ弾を撃ち出す、というハイブリッド形式が具現化されていたのだ。50代以上の読者であれば、子供の頃、銀玉デッポーやリボルバーのキャップガンで遊んだ記憶があると思うが、その両方が合体した物だと思ってもらえばいい。
エアガンという形にこだわらずストライカー方式にした、というところがミソで、これなら設計上の制約も少なく、コストもかからない。エアガンに比べたらパワーはかなり低いが、気軽に撃って遊べる、という観点から見たら決して悪くない選択だ。80年代初めより、造るモデルガンシリーズ、つづみ弾のエアーガンシリーズを作ってきた東京マルイ玩具ならではの発想だろう。
しかもキットモデルということで、作る楽しみまで提供してくれたのはさすがマルイである。
最近ではクラウンモデルが2019年にBB弾の発射とキャップ火薬による発火を組み合わせたスパークリングエアガンを発売している。
火薬という物には「匂い」がある。東京マルイの44オートマグ ファイアースポーツ銃は、視覚や聴覚だけではなく、「嗅覚」までも満足させてくれるという、きわめて希有なトイガンだったのである。
エアコッキングガンのオートマグと基本的には同じサイズとデザイン。実銃にくらべてふたまわりほど小さく、マグナムオートの迫力に欠けてしまったのがなんとも惜しい。
バレルは完全なモナカ構造で、インナーバレルは存在しない。つづみ弾はバレル内に設けられたリブ状のレールに沿って飛んで行く。
リアサイトまでモナカ構造だが、トップスクリューに相当する部分の穴がちゃんと8角状のモールドにされているところがニクい。
7mmつづみは通常のマガジンに装填し、5mmのキャップ火薬は金属製のシリンダー状マガジンに装填する。茶色い円盤状の物はキャップ火薬装填用のローダー。
キャップ火薬のシリンダーマガジンはなんとグリップを外してレシーバー側面から挿入する。グリップはツメではまっているだけで、2本あるスクリューはダミー。
シリンダーマガジンを装填したところ。これが回転し、後方から叩かれることで1発ずつ発火する仕組み。
セフティーレバー前方に見える金属パーツがキャップ火薬を発火させるためのハンマー。ハンマーはボルトと連動しており、 ボルトを引いてコッキング、トリガーを引くとつづみ弾が発射されると同時にキャップ火薬が発火する。
このファイアースポーツ銃シリーズの第一弾はパッケージにも描かれるピエトロ ベレッタ92SB、第二弾が本作の44オートマグで、第三弾はコルトガバメントM1911A1が予定されていた。
パッケージを見れば、どんな機能と構造の製品なのかがひと目で分かる。造るモデルガンやスプリング排莢式ガスガンでもおなじみ、マルイの親切さが伝わってくるデザインだ。
マニュアルPDF (1.2MB)
DATA
発売年 | 1985年 |
発売時価格 | ¥1,900 |
全長 | 実測 270mm |
重量 | 実測 286g |
バレル長 | - |
発射方式 | ストライカー式 |
使用弾 | 7mmつづみ弾 |
装弾数 | 8発 |
平均初速 | 17.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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