タカトク TMガン ドライガー
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
このコーナーではこれまで数多くのビンテージエアガンを紹介してきたが、今回の物件はとびきりレアな1丁だ。
実はボクも現物を見るのはこれがはじめてなのだが、なんというか、昭和のSFの世界からそのまま抜け出してきた空想銃、といったようなデザインで、当時のエアガンが完全に子供向けの玩具だったことがよくわかる。
モデル名の最初に冠される「TMガン」とは、販売がタカトク(T)で製造がマツシロ(M)ということを表すシリーズ名で、テムガンと読む。
このシリーズには他にTM01 (テムゼロワン)、TM99 (テムダブルナイン)があり、それぞれSS5000、SS W7000と名前を変えてその後も製造が続いていくわけだが、なぜシリーズ第三弾のドライガーだけが製造中止になってしまったのがずっと疑問だった。しかし今回、現物をひと目見て納得がいった。なるほど、いくらエアガンが子供向けの玩具だったとはいえ、やはりこのデザインがヒットするとは思えない。
いつの時代も、子供はリアルな銃にあこがれるもの。そこに気付き、安全な範囲でリアルなエアガンを作るという、後の方針を決定付ける節目となったのがこのドライガーだったのかもしれない。
エアガンとしての機構はカート式のエアコッキングガンで、TM01、TM99と共通の薬莢と弾頭を使用する。意外なことに、といったら失礼かもしれないが、装填と排莢はきわめてスムース。子供の玩具然とした外観からは想像できないほど確実に作動する。タカトクやマツシロは後にエアガン業界をリードするトップメーカーに発展していったわけで、その下地がすでに完成していたことを感じさせるクオリティだ。
作動性にくらべると、肝心の実射性能は語るべくもないもので、実物のラウンドノーズ弾を模した9mm弾頭の飛距離はたった2m程度。せっかく確実に動くのだから、もっとちゃんと狙って当てられるエアガンが望まれたとしても不思議はない。また、そうしたガンファンの要望を実現するかたちで、エアー効率に優れたつづみ弾が生まれたのだとすれば納得がいく。
エアガン創成期の製品を見ていると、いろいろなことが想像できて実に楽しい。最新の電動ガンとは何もかもまったく次元が違うが、すべてのルーツはこうした子供向けの玩具銃からはじまったのだ。
ガンダムのビームライフルのように見えなくもない、と感じるのはボクだけだろうか。いつの世も、SF銃のデザインというのは似てしまうのかもしれない。全体のバランスに対してマガジンの幅が広いが、ちゃんとしたカート式エアコッキングガンであるという証だ。
アウターバレルが左右張り合わせという驚きの構造。インナーバレルはかなり奥まっており、覗いても目視できない。
スコープは素通しの単なる筒。レールに差し込むだけで固定はされない。
レシーバーとグリップ後端にはストック取り付け用の溝がある。ドライガー デラックス版ではストックが付属した。当時のエアガンはストックが付いてナンボ、というくらい、たいていの製品に共通するデザインだったのだ。
アウターバレルを回転させると取り外すことができる。なんと、実質的なマズルはこの部分で、つまりインナーバレルはチャンバーのすぐ先までしかない。
TMガンドライガーは4つのパートに分解可能で、これも当時のお約束。
38口径の10連発、ということが刻印されたマガジン。TM01(SS5000)のマガジンにも同様に5連発仕様の刻印がある。
ケースガイド(エキストラクター)によってしっかりと保持されたカートリッジ。本体左側のボルトレバーを引いて装填・排莢する。本文中にもある通り、装填と排莢はきわめてスムースだ。
薬莢がオレンジ色なのは草地などに落としても見つけやすいからだと思われる。弾頭は9mm口径製で形状はラウンドノーズ。銃弾としてはリアルな形状だが、エアガン用としてはまったく効率が悪い。
昭和を感じさせる実に牧歌的なパッケージ。取手が付いており、アタッシュケースのように扱えるというのも少年のココロを熱くさせるポイントだったのだ。実際、デラックス版では、ビニール製のアタッシュケースに収納されていた。
当時の少年雑誌の広告。
DATA
発売年 | 1975年 |
発売時価格 | ¥1,980 ¥3,900 (デラックス) |
全長 | 実測 379mm |
重量 | 実測 295g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | カート式エアーコッキング |
使用弾 | 9mmビレット弾 |
装弾数 | 10発 |
平均初速 | 35.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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