マルゼン S&W M59 カスタム
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
本エアガンは、以前このコーナーで紹介した、ルガーP08やワルサーP38と同じ疑似ブローバックのカート式エアコッキングガンだ。他にもコルト ガバメントやH&K P7M13などがあり、実銃の口径に関係なく、すべて共通のカートリッジを使用していた。
当時、ハンドガンといえばこのマルゼンシリーズの独壇場ともいえる状況で、サバイバルゲーマーからプリンカーまで、エアガンファンならどれかひとつは持っていたほどだ。
専門誌の企画では「クリーンヒッター理論」なる記事が連載され、エアガンの命中精度を上げるため試行錯誤しながらノウハウを見つけて行く、という内容に読者はワクワクさせられたものだが、その中でカスタムのベースガンとして使われていたのがこのマルゼン製 S&W M59だった。
5mでのグルーピングを5cm以内におさめる、というのがその理論の目的で、現代エアガンの性能から考えると、当時の製品がいかに「当たらない」物だったか、というのが分かるだろう。
かくいうボクも、少年時代、その連載をむさぼるように読んだクチだが、カートリッジのゴムパッキンを取り外し、細長く切ったティッシュを巻いてパッキンの代わりにする、というくだりには衝撃を受けたのをよく覚えている。
ゴムパッキンがなければパワーロスが大きくなって初速は下がるが、不安定な抵抗がなくなるぶん、弾道は安定する、ということなのだろうが、いま思えばかなり大胆かつ的確な発想だ。
現代のエアガンはある意味でブラックボックス化してしまい、パワー規制の意味からも、ユーザーが不用意に手を加えることが難しい時代になってしまった。
エアガンの進化が我々ガンファンに与えてくれたものは大きいが、完成され過ぎてしまったがゆえに、失ってしまったものもある。そんなことを思い起こさせる1丁ではないだろうか。
先に発売されていたスタンダードモデルはオールブラックのプラ製グリップ仕様で、パワーは10歳以上対象のものだった。このM59 カスタムはシルバーフレームでラバーグリップを装備、エアポンプを強化したパワーアップモデルとして18歳以上対象で発売された。同時期に同社のルガーP08やガバメントもパワーアップモデルが発売され18歳以上対象となった。
当時、M59のカスタムモデルといえばシルバーフレームが定番だった。TVドラマ「太陽にほえろ!」で、神田正輝演じるドック刑事が使う通称ドックスペシャルM59もシルバーフレーム。オールドガンファン憧れのツートンカラーだったのだ。
段差のあるバレルブッシングがうまく再現されている。疑似ブローバックのプッシュコッキング式のため、トリガーを引くとスライドが後退。バレルが飛び出す様はオートマチックピストルの醍醐味だ。
リアサイトはスライドと一体成形のためアジャストできない。ハンマーはダミーで少々リアルさにかける造形が残念だ。また、フレーム後端のダイヤル式セフティがなんとも唐突。ラバーグリップは高級カスタムの代名詞だった。
スライドの包底面には大型のエキストラクターがあり、カートリッジのリムをしっかりとくわえる。フィーディングにはややコツが必要だが、エジェクトは確実だ。
フレームは左右別体のモナカ形式。廉価なエアガンとしては当然なのだが、MGCなど、モデルガンメーカー製のリアルなエアガンと決定的に違う部分だといえる。
マガジンはスチールプレス製のだダブルカアラム。カート式エアコッキングハンドガンとしては、なかなか贅沢な仕様。
マルゼンのカートリッジはすべてこの金茶色(?)だった。プラ製だが、少しでも真鍮の雰囲気を出そうとしていたわけだ。9mmパラよりふたまわりほど小さい。
パッケージは紺色系で、S&Wらしいデザインだ。堂々とロゴマークが入っているのはご愛嬌。思えば大らかな時代だった。
取り扱いの解説6、銃に顔を近付けて撃つのはやめましょう、とある。発射と同時にスライドが下がる、というのを理解していないユーザーが多かった証拠だ。マニュアル.PDF (2MB)
DATA
発売年 | 1984年2月中旬 (スタンダード 10歳以上対象) 1984年9月下旬 (カスタム) |
発売時価格 | ¥4,500 (スタンダード 10歳以上対象) ¥6,000 (カスタム) |
全長 | 実測 203mm |
重量 | 実測 451g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プッシュ式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 13発 |
平均初速 | 43.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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