マルシン .30カービンレインジャー ポンプアクション
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
今回紹介するのは、以前レビューしたスーパーエンフォーサーと同時期の製品だ。当時マルシン製品を販売していたレプリカの広告で「レインジャーカービン」と記載されていたので、その呼称で覚えているガンファンが多いだろう。ただし、パッケージを見る限り、正式名は「.30カービンレインジャー」(以下レインジャー)ということになる。
スーパーエンフォーサーもレインジャーも、ルーツは1984年発売のカート式エアコッキングガン、M1カービンだ。モデルガンメーカーのマルシンらしくM1カービンはとてもリアルな出来ばえで、実射性能も当時としてはなかなかのものだった。
M1カービンと外見上の違いは、シンセティック製のフォールディングストックとメタルハンドガード。さらにポンプアクションモデルでは可動式のフォアエンドが装備され、銃を構えたまま装填排莢が可能になった。
その理由はいうまでもなくサバゲーでの使い勝手を向上させるためだ。当時、エアコッキングガンのポンプアクション化は、サバイバルゲーマーにとっては必須のカスタムだったのだ。
しかし、そもそもの設計がポンプアクションではないため、カートの装填ジャムなどが続発、サバイバルゲーマーの評価は残念ながら低かった。また時代はすでにケースレス化へと向かっており、このカート式レインジャーは過度期の製品だったといえる。
以前紹介したエルエスのトンプソン改ポンプアクションなどもそうだが、この頃は、元々リアル路線だったエアガンがサバゲー用になりふり構わず改良され原型を失っていく、というパターンが多かったように思う。
そんな中でも、マルシンのM1カービンシリーズはどれもリアルさを失わず、常に説得力のあるデザインを保ち続けていたのはさすがだ。
このコーナーでマルシンの歴史を振り返るたび、トイガン創成期から、業界を牽引して来た老舗のこだわりを感じてしまうのである。
マルシンのM1カービンはエアコッキングガンからスタートし、レインジャーは2作目に当たる。その後もマキシ、CO2ガスブローバックなど、様々なバリエーション展開を続けてきたドル箱モデルだ。折り畳みストックやメタルハンドガード少々古めかしさを感じるが、いま見てもかなりのリアルさだ。
インナーバレルがなく、アルミ製1本物のバレルが装着されている。当時はこれが高精度だと思われており、さらにマズルビューのリアルさは抜群だ。
リアサイトは金属製で左右のみ調整可能。モデルガン時代からマルシンの金属パーツは梨地仕上げで、こうしたミリタリーモデルとはなかなか相性がいい。
AR18のような折り畳みストック。リトラクタブル(伸縮)ストックではない、というあたりに時代を感じる。ストック側面に見えるリベットで折り畳んだ状態を固定する。
コッキングしやすいよう、実銃よりもチャージングレバーが若干長い。ボルトが後退するとカムによって回転するのは実銃通りだ。
エジェクションポートからカートリッジが見えるこの風景こそがマルシンM1カービンの真骨頂。この後、スーパーエンフォーサーでケースレス化への道をたどることになる。
30連タイプのマガジンだが、シングルスタックのため15発しか装填できない。しかもカートリッジが8発しか付属しないというのも残念だ。
パッケージの写真はポンプアクションタイプではない。サバゲーブームのあおりを受け、急遽改良されていたことがうかがえる。英名称はCarbine Rangerではなく、Carbin Raingerとなっている点も注目。マルシンの広告でもレンジャーとレインジャーの表記揺れがあった。
DATA
発売年 | 1984年11月15日 M1カービン 木製ストック 1985年春 レンジャーカービン 1985年末 レンジャーカービン ポンプアクション 1986年春 レンジャーカービン ケースレス カモフラージュ |
発売時価格 | ¥14,800 M1カービン 木製ストック ¥13,000 レンジャーカービン ¥14,500 レンジャーカービン ポンプアクション ¥16,500 レンジャーカービン ケースレス カモフラージュ |
全長 | 実測 655mm / 935mm(ストック伸長時) |
重量 | 実測 2,484g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 15発 |
平均初速 | 56.3m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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