マルシン スーパーエンフォーサー
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
マルシンのスーパーエンフォーサーが世に出た1980年代半ば頃、エアガンは急速に小型化の道をたどり、ケースレス&ポンプアクション化が進んでいた。銃としてのリアリティよりも、サバゲーでの実用性がもっとも重要視されていた時代だ。スーパーエンフォーサーのベースとなったのは同社製のエアコッキング式M1カービンだが、実はこれはエアガン史上に残るほどのリアルさを誇ったモデルだった。それをここまで改造し、ほとんど別の形態にまで変身させたというところに、当時の業界事情をうかがい知ることができる。
もっとも、実銃にもM1カービンのショートモデルはちゃんと実在し、旧月刊Gunではジャック・タクボ氏がレポートしている。アメリカではかなりアンダーグラウンドなイメージの強い銃だけに、エアガンファンの心をうまく捉えたモデルチェンジだったと言えるかもしれない。
特徴的なのは「スプロケットケースレスシステム」と名付けられたマガジンで、ジャラジャラと入れたBB弾をスプロケット(歯車)で取り込み、エレベーターのように上まで運んで行く給弾機構はかなり先進的だった。ボルトの前後動と連動して1発ずつBB弾が上がる仕組みになっており、現代でいうところの電動ガン用多弾数マガジンのルーツともいえる。
思えばマルシンは、モデルガン時代から常に技術面で革新的なメーカーだった。カート式ガスブローバックや電動ハンドガン、8mmBB弾など、業界初のパイオニアとなった製品も多い。このスーパーエンフォーサーも、エアガンが進化していく過程を見せてくれる名銃だといえるだろう。
第二次世界大で米軍が使用したM1カービンだが、その手軽な撃ち味から今でもファンが多く、カービン化された実銃も存在する。
ケースレス&ポンプアクション化されてもボルトのコッキングハンドルがそのまま残されているため、通常のコッキングも可能。
リアサイトはシンプルな固定式。1984530の刻印は、ベースとなったM1カービンの設計が終了した年月日ではないかと推測される。
バレルはムクのアルミ製。この頃はまだインナーバレルを使用しない構造のエアガンも多かった。
M1カービンゆずりのリアルなレシーバー構造と、操作しやすいよう若干長めにディフォルメされたコッキングハンドル。
ボルトをコッキングすると、2ピースに分割されたボルト先端部のみが回転し、真鍮製のノズルが顔を出す。
ポンプアクション用のフォアエンドはマルシン独自のデザインだが、フィンガーチャンネルが手に合わず前後逆に装着しなおすユーザーも多かった。ストロークは約85mm。
革新的だったマガジン。マイナスネジを回すと内部のスプロケットが回転し、初弾を最上部まで運ぶ。後は1発撃つごとにボルトと連動して給弾される仕組み。72発ほどBB弾が入り、14発程度が残る仕組み。メーカースペックでは装弾数60発となっている。
箱の写真にはスコープが装着されているが、西部警察の影響が色濃く残っていた時代だっためか、こうした組み合せにもあまり抵抗がなかったのかもしれない。
M1カービン、レインジャーカービンと共通のマニュアル。3ページ目にスプロケット式マガジンの取り扱い法が解説されている。
manual.pdf (660KB)
DATA
発売年 | 1985年7月末 スーパーエンフォーサー |
発売時価格 | ¥14,800 US M1カービン ¥13,000 レインジャーカービン ¥12,000 スーパーエンフォーサー ¥19,500 木製ストックタイプ |
全長 | 実測 496mm |
重量 | 実測 1,860g |
バレル長 | 285mm(カタログ値) |
発射方式 | プル式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 60発 |
平均初速 | 46.8m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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