MGC M16A2カービン M725

MGC M16A2カービン M725

写真&解説 小堀ダイスケ

解説

1980年代のなかば頃、長物フルオートガスガンの分野において、MGCは当時の絶対的王者であったJACに対し、苦杯を嘗め続けていた。

途中、急場しのぎでS&W M76 インターセプター(1986年発売)やベレッタ M12S ペネトレーター(1987年発売)を作ったものの、肝心の中身はBV式。背に腹は変えられないとばかり、アサヒファイヤーアームズのパテントを買ったのだ。その点ではJACと同等であるにもかかわらず、残念ながら性能的には足元にもおよばなかった。

そこで一念発起、老舗MGCの意地をかけて1988年9月に発売されたのが、M16A2カービンシリーズである。JACもこの年の暮れにM16A1ガスフルオートを発売し、各社のM16が競作となった「イチロク戦争」の発端ともなった。
今回紹介するのは1990年にリニューアルされたニューM16A2カービン M725である。

もちろんメカはMGCのオリジナル、グリップ内にガスをリキッドチャージすることができ、ホースレスを実現した。また、BV式のようにガスを流し続ける機構ではないため、発射音や反動が体感できるというのもウリだった。

だが残念なことに、JACに対するカウンターパンチとしては総合的に弱かったといわざるを得ない。0.4ジュール以下という自主規制を忠実に守ったばかりに、サバゲーではまったく使えない銃、というレッテルを貼られてしまったのだ。

当時はまだホップアップが実用化されておらず、パワーがなければ必然的にBB弾の飛距離が伸びない。BV式のエアガンに高圧をかけて撃ってくる敵ゲーマーに対し、この銃では近づくことさえ出来なかったのである。

いっぽうで、空撃ちだけでも発射音と反動が楽しめるというギミックに対しては、一定の評価をするユーザーも少なくなかった。それだけ、当時のエアガンブームというのは壮大で、サバゲーをしないプリンカーの層もかなり厚かったということだ。

くわえて、バレルやストックの長短、刻印などの違いにより、多種多様なバリエーション展開をしたこともジワジワと人気に火がつき、コレクター魂をくすぐるポイントにもなった。

弾の出るエアガンでも射撃性能だけではなく、どこかモデルガン的な要素を残すという、良くも悪くも、実にMGCらしい1丁だったといえるだろう。

サイドビュー 左
サイドビュー 右
上下レシーバー、アウターバレル、フロントサイトベース、トリガーガードには旧タイプのプラスチックより2.8倍重い高比重のヘビーウェイト樹脂を採用し、ヘビーグレーマットフィニッシュの金属を感じさせる仕上げとなった。このあたりの質感はさすがMGCといったところだ。

レシーバー
M16タイプのセミ/フルオート切り替え式のガスガンは他社に先駆けての発売だ。
レシーバーはM725で新規設計され、旧タイプはM723として区別された。当時のMGCの広告によると、M723がA2プロト形状だったのに対し、セカンドグループと呼ばれるレシーバーとなったそうだ。本タイプのモデルガンも同時期に発売されている。

ボルトフォアードアシスト
旧タイプにはなかったM16A2の特徴である三角の大型ケースディフレクター。丸形のボルトフォアードアシストノブなどA2の特徴はあるものの、残念ながらリアサイトはA1仕様のままだ。

マズル
アウターバレルはヘビーバレル仕様ではなく細身のタイプでHW樹脂製。A2バードケージフラッシュハイダーもHW樹脂製だ。マズル付近に真鍮パイプが見えるが、これはインナーバレルではなく内部のスリーブ。旧タイプよりフロントサイトベースの形状が改良され、スリングスイベルピンもリベットタイプになった。

グリップ
グリップ内にガスをリキッドチャージするため大型のバルブが見える。ストックチューブ下部には外部ソース連結用のコネクターがあるが、そこからホースがのびてリアルさを損ねてしまっている。外部ソースはフロン缶とエアータンクに対応し、リキッドチャージ、グリップへのガス缶ダイレクトコネクトとあわせ、4Wayを謳っていた。

ハンドガード
ハンドガードを開くとMGCのお家芸ともいえる独特なメカデザインが顔を出す。内部パーツが前後動することで反動を生み出す仕組みが分かるだろう。

ボルト
ブローバックしないのでもちろんボルトは動かない。ダストカバーストッパーの形状がまた独特だが、これはモデルガンのパーツがそのまま流用されたため。

マガジン
スチールプレス製のマガジンはモデルガンからの流用品だが、装弾数は旧タイプの48発から75発に多弾数化された。

マガジンリップ
BB弾を収納するだけなので重量は軽く、リップは精度の高い真鍮の削り出しでしっかりとBB弾を止める。

パッケージ
キレイに収納されたパッケージ。小型のガスボンベが付属しているが、これはそのままグリップ下部にネジこんで外部ソースとして使用できた。

マニュアル
分かりやすくていねいなマニュアルはMGCの真骨頂。イラコバ氏によるイラストは楽しく、見るものをワクワクさせる。サバゲー用ではなくあくまでも標的射撃用である、ということをアピールするためか、ターゲットペーパーが2種類も付属しているのはさすがだ。
manual.pdf (9.4MB)

DATA


発売年 1988年9月14日 (M16A2カービン)
1988年12月下旬 (M16A1)
1989年11月16日 (M655 カービン)
1989年12月15日 (M639 コマンド―)
1989年年末 (M653 カービン / XM177E2 / XM177E1 / M648 コマンド―SMG)
1990年春 (ニューM16A2カービン M725)
発売時価格 ¥24,000 (M16A2カービン、M16A1、M655 カービン、M639 コマンド―、M653 カービン、XM177E2、XM177E1、M648 コマンド―SMG)
¥26,000 (ニューM16A2カービン M725)
全長 実測 773mm/885mm (ストック延長時)
重量 実測 2,703g
バレル長 -mm
発射方式 リキッドチャージ式ガス
使用弾 6mmBB弾
装弾数 75発
平均初速 64.7m/s

撮影協力:サタデーナイトスペシャル

2020/12/20


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