MGC M12S ペネトレーター
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
この頃のMGCは、自社のエアガンに実銃のモデル名とは違った独自の商品名をつける事が多かった。今回紹介するM12Sペネトレーターがまさしくそうなのだが、ペネトレーターとは「侵入者」の意である。
当時のエアガン業界はBV式ガスガン全盛期、JACがその王座に君臨していた時代だ。そんな中、常に一貫して安全第一を企業理念としていたMGCは、ハイパワーに改造されやすいBV式ガスガンに対し、その状況を苦々しく思っていたはずだ。結果的にそれがフルオートガスガンの開発を遅らせる原因にもなってしまったわけだが、製品が売れなければその理念も意味がない。そこで背に腹は代えられないとばかりに、思い切ってBV式を採用したのが、前年のM76インターセプターや、今回紹介するM12Sペネトレーターだったというわけだ。
その名の通り、JACの牙城に「侵入」した格好となったM12Sペネトレーターだったが、残念な事にパワーがかなり低かった。これはMGCが当時の0.4ジュール自主規制を忠実に守っていたからなのだが、この頃、パワーのないエアガンはどんなに良い物でも絶対に売れなかった。サバゲーではコンパクトなサブマシンガンを求める声も多かったものの、やはりパワーの弱い製品がゲーマーに受け入れられることはなかったのだ。
この銃は、組み立てキットとして発売されていたモデルガンがベースになっているため、外観はとてもリアルだ。数年前、海外製の電動ガンが発売されたが、それと比較してもルックスの再現性はMGCの方が完全に上である。いま思えば、ハイパワー競争の影に隠れた名作だったと言えるだろう。
なお、このコーナーで紹介している他のBV式ガスガン同様、今回の個体も内部ユニットを破壊してあるため、発射不能な状態である事を補足しておきたい。
ベレッタらしいどこか丸みを帯びた流麗なデザインが特徴のM12。サブマシンガンとしては第二世代にあたるが、2015年のパリ同時多発テロ事件では警備に使われる様子がたびたびテレビに映し出され、いまだ予備兵器として保管されていることが実証された。
前作M76インターセプターで採用したアサヒとの技術提携によるバレル固定式のBV方式をさらに進化させ、前後するバレルガイドと連動したロッドがガスをカットする確実なフル・セミオート射撃を実現した。
フロントサイトは真鍮の削り出し。なぜか黒染めされておらず、照準器としての視認性は高い。
レシーバー後端にはガス用のカプラーが飛び出している。モデルガンをベースに作られているため、残念ながら取って付けた感が強い部分だ。
実銃ではスチールプレスで作られているマガジンハウジングやグリップフレームの質感を、プラのモナカ構造でここまで再現出来たのはさすがMGC。セレクターの操作感も小気味よい。
折り畳みストックの棒状部分は亜鉛合金製、基部はスチールプレス製のためガタつきはほとんどない。
付属のフロガンス用ブースターを取り付けたところ。ここにガス缶と空のボンベを装着する。
ブースターはアウターバレルに通してぶら下げ、身体と離す事が出来た。付け焼き刃のようなアイデアだが、外部ソース方式を嫌ったMGCならではの苦肉の策だったと言えるだろう。発射速度はカタログ値で700~800rpmとなっている。
マガジンリップはプラの弾性でBB弾を保持する。マガジン内の気密を保つためのOリングが装着されている。アウターも樹脂製のモナカだ。
製品の写真をそのまま上箱にするというMGCとしては少々珍しいデザインのパッケージ。急いで製品化したかったという当時の事情が垣間見える。
DATA
発売年 | 1987年6月17日 |
発売時価格 | ¥16,500 |
全長 | 実測 430mm / 652mm(ストック伸長時) |
重量 | 実測 1,670g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | 外部ソース式ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 35発 |
平均初速 | -m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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