ヒットマン:エージェント47 映画銃器紹介
解説:石井健夫
2016年9月2日よりブルーレイ&DVD発売(先行デジタル配信中)となる『ヒットマン:エージェント47』の銃器解説。
STORY
ブラックスーツにホワイトシャツ。そして真紅のネクタイ。異様なスキンヘッドの後頭部には、謎めいたバーコードの刺青。その男(ルパート・フレンド)の出生や経歴はどこにも記録されていない。
「47」の番号のみで知られるその男は、旧ソ連時代に極秘裏で行われた遺伝子操作実験によって「最強の兵士」たるべく生み出された殺人マシーンだった。常人をはるかに凌駕する身体能力、精神力、頭脳を備え、かつ余計な感情も良心の呵責もなく、ただただ任務遂行のみを最優先に行動するその仕事ぶりは、裏社会で絶対的な知名度を誇り、また恐れられてもいた。
一方、巨大国際企業のシンジケート社は「47」を生みだした過去の遺伝子操作実験の核心を手中にすべく、その実験の中心的役割を担った科学者=リトヴェンコ博士(キアラン・ハインズ)の身元を探していた。
シンジケート社が博士の関係者として密かにマークしている女性カティア(ハンナ・ウェア)は、幼少期より何かに怯え、世間から隠れるように生きてきた。そして彼女自身、抑えきれない謎めいた衝動に駆られてリトヴェンコ博士の行方を探している。
そして、ある手掛かりを得てベルリンの地下鉄駅に立ち寄ったカティアの目の前に、ジョン・スミスと名乗る謎の男(ザッカリー・クイント)が現れ、“キミは生命を狙われている!”と警告する。そして直後、2人の前に「47」が姿を現すのだった...!
登場銃器解説
2000年に発表された人気ゲーム『ヒットマン』の、二回目となる映画化作品。
前作は2007年にヴィン・ディーゼルが総指揮を務め、ヨーロッパ・コープが製作、『ダイハード4.0』のティモシー・オリファント、『007/慰めの報酬』のオルガ・キュリレンコらが出演した『ヒットマン』であるが、本作は世界観もキャラクターも一新され、関連性はない。
つまり、いま流行の「リブート作品」である。
当初は主演に『ワイルド・スピード』シリーズのポール・ウォーカーを迎えて企画がスタートしたが、彼の事故死により、『プライドと偏見』のルパート・フレンドが主人公のスキンヘッド暗殺者「47」を演じることになった。
アメリカ・ドイツ合作であり、序盤〜中盤のベルリン市街でのロケアクションは見もの。また、トーマス・クレッチマン(『戦場のピアニスト』)、ユルゲン・プロホノフ(『Uボート』、『エアフォース・ワン』)、キアラン・ハインズ(『トータル・フィアーズ』、『ミュンヘン』)といった、ハリウッドでも成功した実力派ドイツ人俳優の重鎮が顔を揃えており、作品に重厚さを加えている。
裏社会では最高の暗殺者として知られ、表の世界では「都市伝説」扱いされている凄腕の殺し屋。スキンヘッドの後頭部には謎めいたバーコードの刺青。政治論や感情論といったものには一切関心を示さず、どのような依頼も即金でのみ受け入れてターゲットを暗殺する。他人や社会とは一切の関わりを持たない謎のエージェント「47」(ルパート・フレンド)。2 挺拳銃での華麗(すぎる!?)射撃術はあの“ガン=カタ”を彷彿とさせる。
ステンレスシルバー色のM1911A1系オートを2挺、特製のショルダーホルスターに入れてスーツの下に携帯している。撃つとなったら街中でも人混みでも一切躊躇はしない。特にこの場面カットからは、スペアマガジンとサプレッサーをベルトに通したポーチに入れて携帯しているのが確認できる。
ゲームに於ける設定ではAMTハードボーラーをベースにしたカスタムガンで、“Silverballers”という名前があるそうだ。
本作ではAMTによく似た外観のM1911クローンがプロップガンとして使用されているようだが、刻印の類が詳細に確認できないためメーカー等は特定できない。場面写真から得られる特徴としては...
- フレームのリリーフカットが小さめで、「M1911A1」とも「M1911」とも微妙にラインが違う。
- いわゆる「ミリガバ」風のシンプルなフロント&リアサイトだが、M1911A1やSeries’70より若干背が高め。またフロントはやや角ばって幅が広い。
- スライドのセレーションは後方のみ。スライドに対して直角に刻まれたタイプ。
- エジェクションポートが拡げられ、リリーフカットも施されている。
- ハンマーはSeries’70と同様のサイドがフラットなホーンタイプ。
- サムセィフティは指掛けの形状がSeries’70以降の形。アンビ(=両側)ではなくシングルサイド。
- ランヤードリングのないストレートハウジング。
といった仕様が確認できる。
「47」が装備を収納したアタッシュケース。2挺のカスタムM1911“Silverballers”とそのアクセサリー類やマガジンが整然と並べられており、対面側には分解された狙撃銃ブレイザーR93及び、スコープ等の装備品が確認できる。
「47」を演じるルパート・フレンドは発砲シーン以外ではトリガーに指を掛けていない。こうした細部にまで気を遣って演じてくれる、あるいは演出してくれるアクション作品は、それだけで「格」が1段も2段も上がっていると思う。
ジョン・スミス(ザッカリー・クイント)の愛銃はジェリコ941。ポリマーフレームの最新型のようだ。地下鉄駅で「47」と最初に接触するシーンから一貫して使用し続ける。
驚くほどの長距離から拳銃での狙撃を披露する「47」。“Silverballers”の銃口に取り付けられたサプレッサーはスライドを延長したようなデザインの特注品、という設定のようだ。 よく見ると先端にフロントサイトも付いている。
カティアとスミスが過激な一芝居を打って逃げ込むのがアメリカ大使館。警備を担当する海兵隊員の装備として複数のM4カービンが確認できる...が、その仕様のバラツキ具合から、撮影にはエアソフト等が使われている可能性が高い。
U.S.M9=ベレッタM92FSも大使館勤務の警備員、および海兵隊員の装備として登場する。もっとも、「47」によって瞬時に無力化されてしまうので発砲シーンはほとんどない。
「47」愛用の狙撃銃はブレイザーR93 LRS2プレシジョンライフル。バレルはアクション部分にのみ接続したフリーフローティング構造。ストックと一体のフォアエンド先端部にはハリス製バイポッド、後端にもモノポッドが装着されている。50mmと大口径のスコープは、もちろん夜間狙撃を想定したセットアップ...という設定だろう。『アメリカンスナイパー』超える(?) 驚きの超長距離射撃、しかも夜間で、相手は動く車!というシーンは見どころの一つ。
フルート入りバレルの太さとマズルブレーキの形状、さらに弾を込める場面から、使用弾薬は.338ラプアマグナムである事が判る。ちなみにこの銃に関しては「47」の身柄を確保したアメリカ大使館の取調官が台詞で詳しく説明してくれる。もっとも、取調室で本当に実弾を込めてしまうのは感心しないし、取調官にとっても非常に好ましくない結果を生んでしまう。
シンジケート社の追跡者たちが携帯するサイドアームは3rdジェネレーションのグロック17。しかし「47」相手の戦闘ではほぼ火を吹くことなく、格闘中にスライドを外されてしまう。
別のシーンでのグロック17。倒れている追跡者が身に付けている、ブラックホーク社製SELPAと思われるサイホルスターに収まっている。
猛スピードのバイクで追跡してくる3人や、シンジケート本社のボディガードたちが装備しているのはブルッガー&トーメ MP-9サブマシンガンを使用。小型軽量かつ片手で撃つのにも都合の良いデザイン。四六時中携帯していたり、乗り物を運転しながらブッ放すのにはもってこいだろう。
シンジケート社オペレーターのメインウェポンはベレッタCX4ストームカービン。全員がクイックバイポッド・フォアグリップと、トリジコン製の「4×32 Tri-TACタクティカルスコープ」を装備している。
決してスーツも靴も脱がず、すぐ手の届くところに“Silverballers”を2挺揃えて置き、しかも横にならずに眠る「47」。なのにカティアがコッソリ自分の部屋に持って行って分解掃除していても気付かないほど深く眠ってしまい、しかもかなりの朝寝坊。ここは鑑賞中に思わず
“アンタ、そらないやろ!”
と突っ込んでしまったシーン(笑)。
どうやらG17やベレッタCX4ストームやB&T MP-9同様、ジェリコ941もシンジケート社の標準装備品だったらしい事が発覚する終盤のアクション。
「47」が自身の魂ともいうべき“Silverballers”の1梃をカティアに手渡すシーンは、「47」の深奥に初めて芽生えた、他者を信頼する人間らしい心の表現か。物陰に隠れた2人がまるで息の合ったペアのダンスのように、全く同じタイミングでマガジンを抜き残弾を確認するシーンは印象的。
作品DATA
ヒットマン:エージェント47
監督:アレクサンダー・バッハ 脚本:マイケル・フィンチ、スキップ・ウッズ 出演:ルパート・フレンド、ハンナ・ウェアー、ザッカリー・クイント 全米公開:2015年8月21日 ブルーレイ&DVD発売:2016年9月2日(先行デジタル配信中) アメリカ・ドイツ合作/96分 公式サイト:http://www.foxjapan.com/hitman-agent47 © 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved. © 2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. |
■解説者プロフィール
石井 健夫(いしい たけお) 1967年12月、東京都生まれ。 |
■関連レビュー
東京マルイ ガスガン コルトガバメント マークIV シリーズ'70
東京マルイ ガスガン コルトガバメント M1911A1
WA ガスガン コルト ディフェンダー
東京マルイ U.S.M9 ピストル
KSC ガスガン B&T MP9