映画『バイオハザード ザ・ファイナル』の登場銃器解説
カプコンの人気ゲームシリーズをミラ・ジョヴォヴィッチ主演で映画化した大人気アクションシリーズの6作目にして最終章。今回は『バイオハザード ザ・ファイナル』の登場銃器を解説しよう。
このシーンで左手にはフレームのレールを利用して装着されていると思われるコンペンセイターシュラウド付きのグロック17を持っている。
グロック 17
全長:186mm
重量:約710g
使用弾薬:9×19mm弾 装弾数:17+1発
それまでは軍で使用する折りたたみ式のスコップやナイフの鞘、テントの支柱、水筒のフタなどを作っていたオーストリアの樹脂成形メイカー、グロック社が、1980年代に行われた自国軍の次期制式拳銃トライアルに向けて開発した軍用拳銃。諸説あるが「17」は弾倉に収まる9mm弾の数を示しており、当時の軍用拳銃の平均15発より2発多かった。
従来の銃器メイカーにはなかった斬新な発想とデザイン、そして樹脂を大胆に使用して軽量化を図りながらも高い耐久性を実現したことにより、1985年にオーストリア軍の制式採用を勝ち取ったのを皮切りに全世界の軍・警察に瞬く間に浸透。初登場から約30年が経過した現在では「世界で最も売れて普及している拳銃」だとされている。
細かい仕様変更で4世代が存在することが知られているが、基本的なデザインや性能は変わらない。本作でアリスがアンブレラ社の傭兵から奪って反撃に使うグロックには銃口部分に発射時の反動を制御し、音や炎の抑制効果もある「コンペンセイター(抑制器)」という器具が取り付けてある。
アンブレラ社が想定している標的は「普通の人間」なので、通常の9mm弾で充分なのだろう。
本作ではローラも登場する。クリスチャンが持っているダブルバレルのガバ(Arsenal Firearms 2011 Dueller Prismatic)は、後にアリスが受け継いで使うことになる。
Arsenal Firearms 2011 Dueller Prismatic
全長:260mm 重量:約2,000g 使用弾薬:.45ACP 装弾数:8+1発×2
直径11.3mmの大口径弾丸を比較的遅いスピード(270〜300m/秒)で飛ばし、対人用のストッピングパワーに優れる.45口径弾。これを撃ち出す拳銃を2挺並べ、「一度に2発づつ発射することで2倍のパンチ力を得よう!」という開発コンセプトは、もともと 1911年から1985年までの間、アメリカ軍の制式拳銃だった名銃「コルトガバメントM1911A1」の100年後の究極進化型!という触れ込みで考案された「半ば冗談」だったらしい。しかし実際にカタチになったこの銃は大変な話題になり、発売元であるイタリアの銃器メイカー、「アーセナル・ファイアアームズ社」の当初予想を上回る反響を得ているという。
幾つかのバリエーションが存在するが、本作に登場するデュエラー・プリズマティックは6インチ銃身と角ばったデザインスライドを採用した最上級モデルだ。
装弾数8発の弾倉が底部のマガジンプレートで2本が連結されているので、装弾数は16発。しかし発射は常に2発同時なので、撃てる回数としては「8回」ということになる。当然ながら重量も通常の拳銃の倍で2kg以上、反動も2倍、さらにグリップの幅も通常の2倍あるので、超人的な力があり、かつ手の大きな人でないと使いこなせないだろう。しかし通常の人間よりも遥かに身体能力が高く、なかなかその動きを止められないアンデッドや生物兵器相手には頼りになる拳銃であろう。なにせ二丁拳銃で合計32+4発もの.45ACPを弾倉交換なしでブチ込めるのだから。
アーセナル2011ダブルバレル・ガバのトゥーハンド、合計4本の銃身が吠える!
ゲーム版の人気キャラクター、クレア・レッドフィールドを、『ファイナル・ディスティネーション』シリーズ(2000年〜)でも有名なアリ・ラーターが3作目&4作目から引き続いて演じている。サイドアームに携帯するのはベレッタM92FS。
Beretta M92FS
全長:217mm、重量:約970g、使用弾薬:9×19mm弾、装弾数:15+1発
1985年に熾烈なトライアルを経て米軍の制式採用を勝ち取ると、すぐさまロサンゼルス警察をはじめとする全米の多くの警察でも続々と制式採用された。そして、たまたまその時期に公開された『男たちの挽歌』、『リーサル・ウェポン』、『ダイ・ハード』といったアクション映画の名作で主人公が相次いで使用した事から映像関係者や一般市民の間でも人気に火が点き、映画やゲームへの登場回数はいまだに最も多い拳銃といえるだろう。
銃撃&格闘アクションではナカナカの見せ場を作るローラ。登場時から手にしているベレッタM12とチェコのWz63を合わせたようなSMG風の銃は、じつは釘を射出するネイルガン。だが写真をよく見ると9mm用マガジンがグリップに挿しこまれているように見えるので、「ネイルガンを改造して銃として使っている」設定なのだろう。ベースになっている銃が何なのかは不明。フロントサイト・カバーの表面にかなりの「ヒケ」があることから、ラバーガンの類なのかもしれない。
その後このネイルガンはクリスチャンも使用することになる。
重武装のアンブレラ社戦闘員や数万単位のアンデッドを相手にシリーズ最大スケールの苛烈な戦闘を繰り広げるアリス。手にしたソウド・オフ・ショットガンはナント「水平三連」だ。これはゲームに登場した架空の銃"ハイドラ"を再現したもの。
ショットガンとは、散弾(=複数の弾丸を仕込んだ装弾)を発射する可能な銃を指す。散弾には粒の大きさで様々な種類があり、例えば小鳥の群れなどを狙って複数を同時に撃ち落としたい場合にはゴマ粒のような小さな鉛弾がたくさん詰まった「バードショット」という装弾を使用するし、もう少し大きな鴨などを狙う際には一粒が3〜4mmの弾を使った専用の装弾がある。
また、大型獣用に6mmの球状弾を9〜12発仕込んだ「バック(牡鹿)ショット」という弾や、巨大な1発の鉛玉を飛ばす「スラッグ(なめくじ)」という弾薬も存在する。アンデッド相手に戦うなら間違いなくそういう装弾が良いだろう。
ショットガンの口径は「ゲージ」という単位で表すが、例えばポピュラーな.12GA(12ゲージ)という場合、これは1/12ポンド(=約38g)の鉛の塊を球状に丸めた際の直径=18.5mmを表している。つまり粒状の違いこそあれ、1回の発射で約38g分の鉛を飛ばすことができる散弾銃、というニュアンスになる。
隠し持つために銃身を短く切ったショットガンを、文字通り“ノコギリで切った”という意味で「ソウドオフ」と呼んだり、禁酒法時代のマフィアはちょっと気取って「ルパラ」と読んでいた。こんなに銃身が短いと散弾はかなりの広範囲に散らばって飛ぶため、狭い場所や室内で発砲した際の殺傷力は小型手榴弾並。 ましてや3連ショットガンの「ハイドラ」なら、最大で合計114gもの鉛をほぼ同時にアンデッドへブチかます事ができる、というわけだ。
応戦のためコンパクトなサブマシンガンのミニUZIを構えるアビゲイル。
IMI Mini UZI (アイエムアイ ミニウージー)
全長:360mm/600mm、重量:約2.7g、使用弾薬:9×19mm弾、装弾数:20発、25発、32発
建国以来、周囲を敵国にぐるりと囲まれていて常に臨戦態勢にあるイスラエル。1950年代には軍隊のみならず一般市民も総出で国防に当たる必要があり、国家を挙げて開発したのがUZI (ウージー)SMGである。
UZIはその構造から全長が短く、シークレットサービス等が隠し持つのにも適当とされ、1981年に発生したレーガン大統領暗殺未遂事件の時にはその姿が全世界に目撃された。
MINI UZIはそんなUZIをさらに小型軽量化した銃で小柄なアビゲイルにはぴったりの銃であろう。
シリーズを通じてのアリスの宿敵アルバート・ウェスカー(ショーン・ロバーツ)も登場する。ショルダーホルスターに入っている拳銃はフレームシルバーのベレッタM92FSで、グリップはまさしく「サムライエッジ」。
じつは2002年=第1作目の公開時、来日されたポール・アンダーソン監督に東京マルイから「サムライエッジ」が贈呈されているのだ。広報課の島村氏がアンダーソン監督とミラ・ジョヴォビッチに手渡すその瞬間に筆者も立ち会っているのだが、“もしかしてアレが元になっているのかもしれない♪”と、夢を膨らませてしまうカットではある。
いかがだったろうか。今回解説はできなかったが、本作には様々なマニアックな銃器も使われているので、これら登場銃器をチェックしながら「バイオハザード ザ・ファイナル」を鑑賞して欲しい。
作品DATA
バイオハザード ザ・ファイナル
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、オーウェン・マッケン、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レビ、イアン・グレン、エバー・アンダーソン
原題:『Resident Evil:Final Chapter』
アメリカ映画/107分
●日本公開:2016年12月23日 / 全米公開:2017年1月27日
ブルーレイ&DVD発売:2017年3月22日
公式ホームページ:http://bd-dvd.sonypictures.jp/biohazard6/
発売元・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
© 2016 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved.
バイオハザード ザ・ファイナル BD&DVD発売!!
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■解説者プロフィール
石井 健夫(いしい たけお) 1967年12月、東京都生まれ。 |
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