考察 ブローバック ガスガン

考察 ブローバック ガスガン 第3章

マグナ・ブローバック

「なぜマグナブローバックは時代の寵児となったか?」

この本題に入る前に、日本のトイガン・フリークについて、認識を一致しておかなければならないだろう。

一般にトイガン・フリークと一括りに云われるが、大きくは2つの派にわける事が出来きる。ここではモデルガン派とエアガン派と言う呼称を使わせてもらう事とするが、実はこの両派は往々にして正反対の方向性をもっている。

以前「ARMS」誌に掲載されたどなたかの記事で触れられた事が有るが、モデルガン派と言うのは多くの場合、精神世界の住人である。つまり、トイガンを通じ実銃をイメージするのである(多少語弊があるが)。したがって彼らはリアルな外観や、実銃同様に分解できる内部構造、握ったときにずしりとくる重量感などに重きを置くことになる。本を読んだり、映画をみて、実際にはありえないフィクションを疑似体験したり、実際には手に入れられない車を、ミニカーやプラモデルなどの模型で代替するのと基本的には同心円の趣味なのである。

一方エアガン派は、極論するとトイガンを弾を発射する道具として捉えている。多くの場合、それはサバイバルゲームやシューティングマッチに参加するための道具として位置づけられる。つまり、テニスでいうラケットや、スキーで云う板と同じ感覚でトイガンと付き合っているのである。従ってリアルな外観や、内部構造は、2の次で、発射機構の優劣がトイガンを選ぶ1位の要因となる事が多い。弾がでない(実銃ではない)事を前提とし、トイガンと付き合っている前者と正反対の方向性を持つというゆえんである。

もっとも、誰も彼もスパッと君はトイガン派、君はエアガン派と区別できる訳ではない。多分多くのトイガンフリークが、両派の中間を行ったりきたりしているのではないだろうか。ちなみに、私の個人の自己評価としては、恐らく、7:3ぐらいでモデルガン派という認識である。

さて、ここで、一つ考えて頂きたいのだが、ブローバック・エアガンというのは、一体どちらの派のユーザーをターゲットにした商品だろうか。メーカー側が其処まで、詳細にマーケティング調査をしたわけではないだろうが、この発射に際し実銃の様にスライドを可動させるエアガンは、実は、モデルガン派をターゲットとしたものと捉えられるのである。これは、両派の立場に立ってみれば一目瞭然である。

電動ガンに代表されるように、発射機能を優先する場合、必ずしも多弾装だからといってブローバックシステムを取る必然性はない。というより、はっきりいって(マグナが登場するまでは)マイナス要因の方が顕著だったとさえ言えるである。すなわち純然たるエアガン派にとっては、必ずしも魅力とならないのである。

一方、トイガンを通じ、実銃をイメージするモデルガン派にとっては、それが故にセミオートマチックのトイガンはブローバックしなければならない存在である。逆の言い方をすれば、ブローバックしないオートのトイガンは、模倣品としては、どうしても一段下と判断されてしまうのである。これは、前述した、ブローバックエアガンの歴史が、発射性能の優劣より、構造や作動に重きが置かれていることでも証明されるだろう。

おそらく、一昔前のブローバックエアガンというのは、エアガン派にとっては、発射できるだけの玩具(道具ではなく)にすぎず、モデルガン派にとってみても、エアガンにしてはリアルな動きをする玩具ぐらいの位置づけであったのではないだろうか。マグナ・ブローバック・システムが登場したのはこの様なタイミグであったのである。

あらゆる意味では、マグナ・ブローバックは、それまでのガスガンの欠点を払拭した形で登場したといえる。マグナブローバックが備えていた最大の新技術は、負圧式のプレシュートの機構であったが、マグナの心臓部とも言えるこのシステムがマグナ・シリーズにもたらした利点は計り知れない物が有った。まず、マグナの発射機構に付いてざっと説明をしよう。


1.トリガーを引くとハンマーがシアからリリースされ、ハンマーはファイアリング・ピンを叩く。

2.ファイアリング・ピンがマガジンのメインバルブを解放する。 この際、メインバルブはロックされるので、ファイアリングピンがスプリングの応力で通常位置で戻っても、ガスはその後も流出し続ける。

3.マガジンから流出したガスは、ブリーチ内のフローティング・バルブをとおり、バレル内に流れ込み、BB弾を射出口へむけて加速する。ちなみに、メインバルブ解放前はチャンバー内にBB弾がロードされていると弾自身におされ、フローティングバルブは、後退した(バレル側にガスを流す)状態になっている。このフローティングバルブは、ガスがバレル流入しチャンバーが空になっても、弾がバレル内に有るときは、バレル内のガス圧力により、後退位置を保持する。

4.BB弾が射出されるとバレル内が減圧され、フローティングバルブが前進。ガスの流れがブリーチ内のシリンダーへ切り替わり、スライドを後退させる。

5.スライドの後退アクションにより、メインバルブがアンロックされ、ガスの供給がストップ、リコイルスプリングの応力によりスライドが閉鎖される。 


このように、引き金を引くと弾(BB弾)が射出され、射出後にスライドが後退するという発射プロセスは、実銃のショートリコイルのプロセスをほぼ踏襲している。このため、前述の1WAY方式の様にスライドアクションによりアキュラシーが、損なわれる事は完全になくなった。もちろん連射を行った場合、リコイルショックにより銃のブレは発生するが、それは実銃でも同様である(リコイルショックの大きさでいえば当然実銃の方が桁違いに多い)。

マグナのすばらしい所は、そのシステムをブリーチの中に収まってしまうほどの小さいスペースで実現している所である。この小さいシステムの恩恵で、モデルとなる銃の構造をかなりの部分で再現する事が可能となったのである。

実際、スライド周りはともかく、フレームより下部については、ディスコネクターの位置や、マガジンメインバルブを叩くためのファイアリングピンなど若干の部品をのぞいて、ほとんど、モデルガンと見まがう実銃通りのレイアウトをとっている。このため、今までのガスガンでは、決して実現できなかった、実銃に近いトリガーフィーリングが可能となった。しかも、それでいて肝心な発射機構部にはマグナの心臓部が入るため、違法な改造をも困難にし、未然に防御している。

この実銃に近いトリガーアクションは、アキュラシーにおいても利点を発揮している。従来の固定式ガスガン最大のネックは、そのトリガーアクションにあった。スライドの稼動しないその構造上、どうしてもダブル・アクションの形態を取らざるを得ない。そのため、特に連射にさいして、フリンチングを起してしまうことが度々であった。しかし、ブローバック・アクションにより、シングルアクションでの連射が可能となったため、マグナでは、プレシュートの利点にあわせ、特にスピードシューティングで威力を発揮した。

現在の技術では、ハンドガンの大きさの電動ガンは十分な成功を収めていない。その状況にあり、ハンドガン・クラスにおいて、マグナ・ブローバック・システムは、(APS競技の様な競技に特化した銃をのぞけば)、では最高レベルの機能を実現したのである。

一方、モデルガン派にとっても、マグナはエアガンとしてはもっとも完成度の高い存在となった。

一般に、モデルガンは、様々な法律的制約は有るものの、その範囲内で最大限に実銃を再現している。それ故にモデルガン派は一般にモデルガンを嗜好する。しかし、モデルガンは、モデルガンであるが故に再現できない機能が存在する。それは弾を発射するという機能である。

ところが、マグナはどうか? 先にも述べたように、モデルガンと見まがうパーツレイアウトは、ほぼ実銃通りのフィールドストリッピングまでをも可能にしているのだが、にもかかわらず、他の方式のエアガンと比較しても、極めて高いレベルでの弾の発射が可能なのである。それどころか、そのアクションは、ショートリコイルまで再現され、プレシュートと言うモデルガンでは絶対不可能な機能まで再現してしまっているのである。

モデルガン派がもしマグナに、これ以上の機能を求めるとすれば、"排莢"というアクションだろうが、エアガンでは、過去に、ケース式のエアガンで2度も実銃認定を受けてしまったと言う不名誉な過去を持っている。それゆえ、どのメーカーでも、ケース式のエアガンの開発は一種タブーの様な位置づけとなってしまっている。その事情を察すれば、マグナの完成度の高さは、満点に近いものと言えるのではないだろうか?

実銃に近い発射機構・実銃に近い構造・ガスガン屈指の精密な命中精度、これは個々の成功にとどまるものではない。これら成功により、本来反対の方向性をもつ、エアガン派とモデルガン派の嗜好要求を、極めて高い次元で、しかも合法的に整合させてしまったのが、この"夢のシステム"マグナブローバックだったのである。

これはトイガン史上画期的な事例なのではないだろうか? これほどハイレベルにこの両者を購買ユーザーとして取り込む事に成功した製品は恐らく過去に存在しない。購買原資が有限な限り、広い購買層を持つ製品が成功するのは当然である。まさに、時代の寵児となるべくしてなったと言えるのである。

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※本記事は1998年6月22日に「とむべあ」さんが自身のWebサイト「Wildbears」にて掲載されたものを、ご本人の了承を得て転載させていただいています。10年前の記事ではありますが、その内容は非常に興味深く、共感しましたので、ハイパー道楽への転載許可をいただきました。基本的には全文とむべあさんの文章をそのまま掲載しています。


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