WE-TECH ガスガン T.A-2015 (P90)
レポート:戸井 源太郎
P90を知ったのはいつだったでしょうか? たぶん、1990年代初頭頃、銃器雑誌だったと思いますが、初めて目にした時、そのスタイルに衝撃を受けました。今までのアサルトライフル、SMGの概念からほど遠い、まさに異形! これが銃なのか? と思いました。
その後、東京マルイから電動ガンが発売され、現在では、海外各メーカーからもモデルアップされています。
そしてそれが当たり前となっている今、自分の思考が硬直しているといいますか、停滞が起こります。
先日、イベントでP90のガスブローバックが売っているのを見て、ショックを受けました。
私はP90のガスブローバックが“あったらいいなぁ”とか、“欲しいなぁ”という発想すらありませんでした。年取るとダメですよね~。
ということで、発売されたばかりのWE-TECH のP90のガスブローバック、T.A-2015をレビューしたいと思います。
なお、本商品名はまた諸事情により、「T.A-2015」となっておりますが、このレビューでは「P90」で統一させていただきます。
P90の特徴はチェンバー部がトリガーより後方にあるブルパップ式で、マガジンが銃本体の上に載せる独特なスタイルとなっており、これまでの銃器とは一線を画す斬新なデザインです。
そもそもP90は1980年代末に戦車搭乗員や後方部隊など用に強力かつコンパクトな自衛用の新しい火器、「PDW(Personal Defense Weapon:個人防衛火器)」として開発されました。
ちなみにP90という名称はこの時の開発名の「PROJECT-90」からきています。
冷戦終結後は対テロ用の近接戦闘用の特殊部隊向けガンと位置付けられています。
弾も新たに開発された専用の5.7x28mm弾を使用します。拳銃弾とは違う弾頭先端の尖ったボトルネック構造で、ライフル弾をそのまま縮小したような形状となっています。
5.7x28mm弾は初速が高いため、ライフル弾並みの貫通力を発揮し、ボディアーマー(防弾レベルIII-A以下のもの)を貫通する威力があります。
そして人体など柔らかい物に当たると弾が横転して衝撃を物体に最大限伝えようとする性質が有るためストッピングパワーにも優れているそうです。
それでいて、火薬量は拳銃弾並みであり、弾頭重量の軽さから反動は少なく、9x19mmパラベラム弾の60%程度だそうです。
こんな弾に撃たれたくはないですね。
日本で一躍P90が有名になったのは、なんといっても1996年に発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件においてでしょう。ペルー軍の突入部隊がP90を使用している映像が日本でも流れました。
裏話として、FN社から宣伝用に無償提供されたともいわれています。他にもペルー軍はSCARも所有しており、FN社から提供されているのかもしれません。
しかし、P90はマガジンが入れにくい、弾の供給問題(予算)などの理由から思ったほど軍、民間に普及していないようです。
ボディアーマーを貫通する強力な弾を使用するということで当初、P90はロ-エンフォースメントのみ販売ということでしたが、結局、後にバレル長を16インチに、フルオートをオミットした民間バージョンPS-90も発売されることになりました。
WE-TECH ガスガン T.A-2015 スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
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パーツリスト |
それでは2015年10月に発売された台湾WE-TECH製のガスブローバックガンがどのような性能かレビューしていきましょう。
“なんじゃこりゃ!”これがP90を初めてみたときの感想です。
マガジンは本体上部に搭載したコンパクトなブルパップの独特なスタイルのP90を完璧に再現しています。サイトは一体化されたドットサイトではなく、レール仕様のP90TR(Triple-Rail)をモデルアップしています。ボディの主要部分はプラ製となっています。
そして、商品名からわかるとおり、大人の事情からメーカー名、銃の名称など刻印などは一切ありません。
諸事情により商品名はT.A-2015となっています。ブラックのほかに、TANカラーモデルもあるようです。パッケージサイズは横575×縦235×厚65mmになります。
P90には取説、おそらく冬用のリコイルスプリング、BBローダーが入っています。このBBローダーはワニ? 龍? になっています。最初、パッケージに収納された状態を見てびっくりしました。微妙な形ですよね(笑)。
“どうやって構えるの?”
幾十もの曲線で構成されたグリップ部(?)を見ると、一瞬戸惑いますが、握ってみれば、自然に構えられます。丸みを帯びており、手が正しい位置にぴったり吸い付く感じがします。人間工学に基づいた優れたデザインです。
セレクターはトリガーの下部にあり、指一本で操作できます。「S」がセフティ、「1」がセミオート、「A」がフルオートになります。トリガーは連結された延長バーを介して後部のシアを操作しますが、そのためトリガーの感触はよくありません。トリガーはプラ製です。
フラッシュハイダーはアルミ製で14mm逆ネジ仕様です。サイレンサーを装着することも可能です。
左右どちらからでも操作できるというのが、P90のコンセプトの一つです。コッキングハンドルは左右どちらからも操作できます。
ストックというか、主要メカが収納されている部分になります。出っ張りなどもなく、頬が当たる部分は両サイドとも滑らかにカットされているため、構えやすくなっています。
ストックの下部にはスリングホールがあります。
ドットサイトはなく、レール仕様のP90TR(Triple-Rail)になります。お好みの光学機器が搭載できます。両サイドにもミニレイルがあり、ライトなどアクセサリーが装着できます。
レールには簡易のアイアンサイトがあります。
マガジンはガン本体上部に沿った形で搭載します。下側、横などマガジンが突き出ることもなく、邪魔になりません。そして実銃では、コンパクトながら装弾数50発を誇ります。
実銃では、チェンバーの真下から排莢します。左右どちらで射撃しても、また味方にも排出された薬莢に悩まされることはないですが、今度は足元に排莢されるため、薬莢を踏んで躓く、滑るなんか問題があるみたいです。このP90はガスブローバックなので、エジェクションポートはダミーです。
マガジンキャッチは両サイドにあります。片側だけでは、マガジンを抜けません。面倒ですが、マガジンの脱着、どちらの場合でも両側のキャッチを操作しなければなりません。そして理由は後述しますが、上部を叩いて装填はしないほうがよいです。
マガジンは実銃と同様に半透明のプラ製カバーに覆われています。ガスはマガジンに注入し、装弾数はリアルカウントの50発になります。公式Webサイトにはダミーカートがみえるものがありましたが、これは別売のシールを貼るようです。
マガジンに装弾されたBB弾はシースルーになっていますが、こちら側は下面になるため、銃に装着したら外からはみえません!
BBローダーで装弾は可能ですが、雑に装弾するとローダーを離した瞬間にマガジンのBB弾が飛び出ます。装弾もゆっくり慎重におこないましょう。
ガスはマガジン底部(?)から注入します。あいかわらず海外製の注入口はガスが入っているのか入っていないのかわからないくらい無反応です。一応、ガスは入ってくれてます。
このP90にはボルトストップモードと空撃ちモードがあります。マガジンの給弾口の横にあるレバーを操作します。右に引いて、リップが出ている状態がボルトストップモードです。
リップを指で押し込んで、レバーを左に移動させると空撃ちモードになります。リップの横の突起が上がらないようにレバーで蓋をする仕組みですね。
また下にはあるのはマガジンと本体をつなぐガス用のジャックです。なんとマガジンには放出バルブはありません。
本体のチェンバー部です。左にドラム式の可変ホップダイヤルがみえます。上にマガジンのガスとのジャックがみます。このため、マガジンの装填には注意が必要です。
マガジンをサッと入れて、軽く叩いて装填しようとすると、マガジンリップがどこかに当たり、メカ内にBB弾をバラまくことになります。BB弾2、3発が内部奥に入り込み、取り出すのに苦労しました。
それに加え、ガス連結部もどこか違うとこに当たるとガスを吹きます。
以上のことからカッコよくないですが、マガジンの装填は両側のマガジンキャッチを使いながらやさしく装填するのがよさそうです。
通常分解
マガジンがない状態の本体上面にあるボタンを押すと...。アッパーレシーバーが取り外せます。
コッキングハンドルは棒ではなく、アッパーレシーバーを蓋するようなプレートになっています。その中にインナーバレルが固定されています。インナーバレルは真鍮製です。
ロアレシーバーをそのまま下に傾けると、スルスルとボルトが抜け出せます。
平べったい独特な形状のボルトです。
ボルトの裏側です。
ロアレシーバーにはトリガーに連結され伸びているトリガーバーが後部に続いています。
バットプレートを下から上に引き出します。
矢印のレバーを上押し上げつつ、ハンマーブロックを引き出します。
引き出されたハンマーブロックになります。矢印の部分にノッカーがあるのがわかります。
ボルトを除くとマガジンからのガスが本体内に流れる構造がよくわかります。この奥に放出バルブがあります。
本体内部にガスタンクがあり、マガジンからのガスがここに蓄えられます。では、マガジンがなくても撃てるのかというと、撃てません。ガスコネクターの対極にあるバーがセフティとなっており、マガジンが装填されて、セフティバーが押し下げられたときのみ可動するようになっています。
ハンマーブロックを取り出して、ストック側から覗くと放出バルブがみえます。マガジンのガスがこの部分に流れこんでいます。
マガジンを挿入することでバルブ前にあるバーが下がり、発射できるようになっています。本体内にガスが残っていてもマガジンがない場合はハンマーが落ちるだけの安全設計となっています。
工具なしで、簡単にここまで分解できます。手順&構成はほぼ実銃と同様です。このリアルなメカがガスブローバックのよいところです。P90の実銃は分解したことはないのですが...。
いよいよ、実射テストです。
いつもと同様、東京マルイ ベアリングバイオBB 0.2gで40m射撃を行います。
まず、ブルパップ式のガンの欠点といえるトリガーの感触が悪いです。トリガーから長いバーを介しているため、どうしてもモッシャっとした感触があります。ハンマーがいつ落ちるのかもよくわかりません。
またトリガーストロークはそれほど長くありませんが、セミだと非常に重いです。それにまっすぐ後方へトリガーを引かないとハンマーが落ちません。ちょっと片側に力がかかると撃てません。しかしフルはなぜか、素直に引けて、セミより軽く感じました。
全弾撃ち尽くすとボルトストップがかかります。ただし、トリガーが引けなくなるだけで、外観からはボルトストップがかかったのがわかりません。リリースボタンもありません。マガジンを再装填して、コッキングハンドルを引くしかありません。実銃もそうなのだが、ちょっとわかりにくいです。
ホップを調整すれば、距離40mでボディに当たります。しかし、セミではトリガーが非常に重く、意識が指にいくと的を外してしまいます。なんとか40mでボディには当たりますが、それほど纏まっているようには感じませんでした。
しかし作動は快調でトラブルはありません。
フルも同じく快調です。40mでボディに当たっていますが、セミより散る感じがしました。
しかし距離20m程度でしたらピンポイントでヒットできる性能は有しており、充分、戦えると思います。
リコイルは撃ってる感があり、暴れることもなく、物足りないこともなく、小気味よい感じです。
そして300発以上は撃ったと思いますが、トラブルはありませんでした。
外観の完成度、信頼性、満足度も高いと思います。さらには実銃同様のパーツ構成で、分解も可能なのが、ポイント高いですね。さすがM4系のガスブローバックで定評あるWE-TECH製といったところでしょうか。
多少、不満があるところもありますが、これはWE-TECHが原因というより元のP90の問題でしょう。
例えば、トリガーの感触とか、マガジンが入れにくいなどてす。
また、ボルトストップ時、コッキングハンドルが前進していて見た目に全く変化が無いので、トリガーが引けないとアタフタします(笑)。
あとは海外製ガスガンの共通した問題ですが、注入時、ガスが入っているのか、入ってないのか、満杯なのかまだ余裕があるのかがわかりませんね。実射した感じだとそれほど欠点と思える箇所はありませんでした。
さすがに距離40mでは、東京マルイの電動ガンや、ガスブローバックのM4 MWSの命中精度には及ばないですが、30m以下なら充分実用できる性能があります。
価格もそれほど高いというわけでもなく、ガスブローバックのSMGなら妥当なところだと思います。
撮影協力:ビレッジ2
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