東京マルイ 次世代電動ガン MP5SD6 エアガンレビュー
レポート:石井健夫
プロフェッショナルなMP5SD
H&K MP5シリーズの中でもひときわ存在感があってカッコ良いのが大口径&大容量の「インテグラル・サプレッサー」を備えたSDタイプだ。「消音装置」を意味するドイツ語、Schalldämpfer(シャルデンプファー)の頭文字を取った「SD」というバリエーション・コードもまたカッコ良い。
実銃のMP5A5は銃身長が225mmあるのに対しSD6は146mmと短く、さらにバレルの基部には直径2.5mm程の穴がグルリと周囲を囲むように30個空けられ、ここからインテグラル・サプレッサー後半の空洞内に発射ガスが拡散。本来なら音速(=マッハ1=時速1234.8km=秒速343m)を超えてしまう9mm弾の初速を3/4程に減速し「亜音速」に抑え、さらに銃口から迸る発射ガスや衝撃波はサプレッサー前方内部に数ヶ所設けられた隔壁バッフルが吸収し減音効果を最大化する。
1977年に発生した「ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件」に投入された西ドイツ(当時)の対テロ部隊「GSG-9(=第9国境警備群)」はSAS(=英軍特殊部隊)の支援の下、ハイジャックされたボーイング737−200機に強行突入。僅か5分で犯人4名のうち3名を射殺、1名を逮捕。突入前に殺害された機長を除いては1人も犠牲者を出すことなく事件を解決した。
そしてこの時、指揮官ウルリッヒ・ウェグナー大佐以下数名の実行部隊がMP5SDを使用した。ストックでガッシリ肩付けでき上等なサイトで精確に狙え、射程の短い9mm拳銃弾ではあるが銃が重いので安定した短連射が可能な事から近距離戦で制圧力を発揮。さらにSDならではの減音効果によって人質や周囲の一般人に大きな混乱を生じさせる事も無い。こうしたメリットがこの作戦では活きた。事後の記者会見に望んだウェグナー大佐が携えたMP5SDの写真や映像が世界中を駆け巡り、プロ筋に於けるこの銃の知名度と人気は決定的になった。
マルイの次世代MP5バリエーション
2021年8月18日に発売された第1弾「MP5A5」から始まった東京マルイの次世代MP5シリーズ。近日発売される予定の「東京マルイ/純正Li-Poバッテリー」を見据え、電子制御回路「Mシステム」を搭載。ハイレベルな安全性、抜群にキレのよいトリガーレスポンス、確実な3バースト等を実現した。
またアサルトライフル系の先行モデルに搭載されていた「300g級のカウンターウェイト」をパワフルに作動させるシュート&リコイルエンジンを比較的小柄なMP5に搭載し迫力の発射フィーリングを実現! さらに「1990年代の実銃」の質感・重量感・操作感を、素材の選定段階から徹底的にこだわって可能な限り実物に忠実に再現。徹底的にリアルを追い込んだ姿勢や取り組みがマニアックなファンをも納得させる仕上がりとなっていた。
「大々的にバリエーションモデルを展開する」事はA5の発売時から東京マルイ自身が発信していたものの、待望のバリエーション「MP5SD6」発売までにはナント約16ヶ月を要した。そしてもちろんこの銃には、それこそ「待った甲斐があった!」と思わせてくれる様々なチャレンジ精神が見てとれる。
しかしSD6には第1弾モデルA5との共通項も多く、例えば「Mシステムの様々な機能」や「HKスラップも可能なレシーバー強度」、「同軸で廻り、待望の3バーストも備わったセフティ兼セレクターレバー」、「調整方法がグレードUPしたリアサイト」、「よりリアルに近付いたグリップの厚み」といった部分はA5と同じなので、次世代MP5A5のレポートも併せてお読み頂ければ幸いだ。
MP5SD6の特徴
ではMP5SD6ならではの仕様を見て行こう。先ずは細かい蛇腹のような表面が特徴的な円筒形ハンドガード。実銃同様「硬質ゴム」が採用されているので滑りにくくホールド感が良い。そして肉厚が薄いのに程よい弾力もあって頑丈だ。このハンドガード形状に合わせてコッキングハンドルの角度が「セフティノッチに入った状態ではフロントサイトで狙えないほど上方に立っている」のがSDの特徴でもある。
またハンドガード基部のリアルな溶接痕の再現には目を見張る。
抜群の存在感を示すインテグラル・サプレッサーには質感・重量感とも最高なアルミ切削パーツが採用された。銃本体には正ネジで留まっているので手でクルクル廻せば簡単に外す事ができる。滑り止めに施された「粗いサンド塗装」だが、実銃では仕上がりにかなりの個体差がある。東京マルイもここは「1挺づつ手作業」で仕上げているそうだ。
サプレッサー内部の吸音スポンジは前方の小さな2個がヘッドホンのパッド等に使われているような「超ソフト」で、後ろのやや長い1個は「普通の硬さ」の2タイプ構造になっている。またサプレッサー先端キャップは意外にな厚み(約10〜12mm程)があり、裏側にはリボルバーのシリンダーを思わせる6チェンバー加工が銃口を囲むように施されている。これが減音効果をより高めているのだろうか?
サプレッサーを外し、さらにネジ山保護キャップを外すと「14mm逆ネジ」が出現する。他のサプレッサーやフルオート・トレーサー等を装着する際にスッキリ見せるための「カプラーキャップ」も本体を買うと付いてくる。
サプレッサーを外した状態で下方に見えるのが「ハンドガード・ロックレバー」の四角い先端。これを持ち上げながらハンドガードを銃口側にスライドさせると外れる。またハンドガード先端に見える小さな穴もロックに連動しており、細いピンまたは六角レンチ等で押せばサプレッサーを付けたままハンドガードを外す事ができる。
先行モデルのMP5A5同様、バッテリーはハンドガード内部の空間に収納する。配線は既に純正LiPoバッテリーの発売を見据えて「MR30コネクター」仕様になっているが、現行の「8.4v1300mAhニッケル水素ミニSバッテリー」と接続するためのアダプターももちろん付属する。手前に写っている樹脂製のパーツは「バッテリー・カバーパネル」で、大きい方が「純正LiPoバッテリー用」、小さい方が「ニッケル水素ミニSバッテリー用」だ。
「8.4v1300mAhニッケル水素ミニSバッテリー」が本当に気持ち良くストレスフリーな感覚でピッタリ収納できる。樹脂製バッテリーカバーはハンドガードの着脱をスムーズにしてくれる他、余分な空間を埋めて薄い硬質ゴム製のハンドガードが凹む感覚を解消するのにも一役買う。
レシーバートップの刻印がちゃんと「MP5SD」となり、その後方のシリアルNo.もMP5A5とは違うものが入れられている。金属製のレシーバー部分に施された「粉体焼付塗装」の色合いや艶感はじつに素晴らしく、また実銃パーツを粉砕し化学分析して作られているというナイロン系特殊樹脂製グリップフレームの質感も堪らない。次世代になってから採用された「センター軸で滑らかに動くセフティ兼セレクターレバー」の感触もじつに心地良いし、Mシステムの搭載によって実現した確実な3バーストを含む紅白のピクトグラムも心なしか輝いて見える。
エジェクションポートは発射毎にフルオープンする。またコッキングレバー連動でセフティノッチに固定できるのでHOP調整の際にダイヤルを常時露出させられるものの窓が小さく少々窮屈に感じられる。マガジンを抜いて下から調整ダイヤルにアクセスした方が素手でも廻し易く手っ取り早いかもしれない。
A5と共通のスライドストックは短縮と伸長のみの潔い2ポジション・タイプ。SD6では3ポジションになるか? と期待していたが残縁ながら見送られたようだ。しかしながら「とても滑らかな動き」、そして「伸長時もガタが最小限」といった、次世代MP5ならではの剛性感・高級感は健在だ。そして次世代MP5で嬉しいのはストック基部のピンがスプリングでライブ可動し、ロックを解くとバットプレートが僅かに飛び出してくる動きを忠実に再現している事。これは例えばラペリング中で片手が塞がっている場合などに、もう一方の手だけでストックを展開するための大切な機能なのだ。
72連ノーマルマガジン(下)のアウターシェルは’90年代の実銃マガジンに採用されていた「全溶接」を、オプションの200連射マガジン(上)では現行マガジンの「スポット溶接」を再現。シンプル構造のダブルマガジンクリップは樹脂製でマガジンが傷付きにくく軽量なのが良い♪
●次世代電動ガンMP5シリーズ専用/ダブルマガジンクリップ1,280円(税別)
●次世代電動ガンMP5シリーズ専用/200連射マガジン3,980円(税別)
●次世代電動ガンMP5シリーズ専用/72連(ノーマル)マガジン3,480円(税別)
上面に10スロットのM1913ピカティニーレールを備え汎用性に優れたたロー・タイプのマウントベース。
●次世代電動ガンMP5シリーズ専用/マウントベース3,480円(税別)
メタルレシーバーを採用している次世代MP5シリーズならではの専用マウントで、裏側4ヶ所の爪をMP5のアッパーに設けられたスロットに引っ掛け、六角ネジを締め込む事でガッチリ固定できる。
こちらはリアサイトベースと入れ替えるカタチで取り付けるタイプのマイクロプロサイト専用マウントベース。マウントとドットサイト合わせて「約26g」という超軽量も見逃せない。
●次世代電動ガンMP5シリーズ専用/マイクロプロサイトマウント1,580円(税別)
●マイクロプロサイト/ブラック6,800円(税別)
マイクロプロサイトのドットがMP5のフロントサイトの先端にピッタリ来る絶妙なセッティングが良い!バックアップのリアサイトも充分に実用的。
次世代SD専用の銃口保護キャップも新規開発されたものが付属。実銃のオペレーション・マニュアルを思わせる取扱説明書がカッコ良い。装弾・実射・メンテナンス方法に関する詳しい操作方法や注意喚起、Mシステムに関する説明はもちろん、実銃に関する解説も載っており、読み物としてもボリュームタップリの内容だ。
実銃のMP5SD
参考までにラスベガスで開催されたSHOT SHOWのHKブースに展示されていたMP5SD3を紹介しよう。
モデル名はMP5SD3となっている。2014年のSHOT SHOWのミリタリー&ローエンフォース用コーナーに展示のもの。バット部が大型されたFストックが装着されている。
スペックシート。アルミサプレッサーとポーテッドバレルを装備しており、サブソニック弾を使用しなくても消音効果を発揮する。
樹脂製ハンドガードは実際はこんなにバリがある。中央のポッチもモールドだとわかる。
セレクターは0-1-Dの3ポジショングリップフレームが装着されている。3バーストは使わないケースを想定し、省略されたオプショングリップが用意されている。セレクター形状が異なるのも特徴。
スペック
全長 | 600mm/760mm(ストック伸長時) |
銃身長 | 229 mm |
重量 | 3,180g(空マガジン、バッテリー含む) |
装弾数 | 6mmBB弾 72発 |
価格 | 65,800円(税別) |
発売日 | 2022年12月22日 |
発射方式 | 電動ガン 8.4Vニッケル水素1300mAhミニSバッテリー 東京マルイ 純正LiPoバッテリー(未発売) |
初速 | 最高:91.01m/s 平均:90.29m/s 最低:88.97m/s ジュール:0.815J 回転数:978.8rpm |
協力:東京マルイ
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