ユージン・ストーナーが設計した小口径5.56mm×45ライフル弾を使用するAR-15ライフルは1950年代後半から試作され、1959年にはAR-15 M601が完成。これをアメリカ空軍は1962年にM16ライフルとして制式採用した。63年には陸軍もXM16E1の名称で85,000丁を購入。1967年にはM16A1として制式採用される。
1961年より軍事顧問団をベトナムへ派遣していたアメリカ軍は、最新ライフルであるM16を現地へ持ち込んだ。ベトナム戦争は文字通り、1960年代にアジアの小国ベトナムで勃発した戦争である。南ベトナムと北ベトナムの戦争だが、実質的には南を支援するアメリカと、北を支援するソビエト・中国の共産主義勢力との代理戦争とも言える。
高温多湿なジャングルでの過酷な使用により、M16は故障などのトラブルに見舞われ兵士からは不評だったが、軍によりさまざまな箇所が改良されていった。
日本でも1980年代後半から1990年代にかけてサバイバルゲームではベトナム戦争スタイルが一般的だった。それはベトナム戦争映画の影響が大きかっただろう。「地獄の黙示録」(1979)をはじめ、「プラトーン」(1986)、「グッドモーニング, ベトナム」(1987)、「ハンバーガー・ヒル」(1987)、「フルメタル・ジャケット」(1987)、「84★チャーリー・モピック ベトナムの照準」(1988)、「7月4日に生まれて」(1989)など多くの映画に影響され、私もベトナムスタイルでゲームをおこなっていた。言葉は悪いがベトナム戦争ブームといっても良かった。
90年代といえばすでに米軍はALICE装備のウッドランドカモが主流で1991年には湾岸戦争も始まっていたが、ブームは90年代後半まで続く。東京マルイは1991年に初の電動ガンFA-MASを発売し、翌92年にはM16を発売、そして1993年12月に今回レビューするM16ベトナムバージョンを発売した。
東京マルイ 電動ガン M16ベトナムバージョン スペック & 初速データ(中古) | |||||||||||||||||||||||||
|
パーツリスト |
レシーバー左側面。かなり痛みの激しい中古品なので傷も多いが、それが逆にベトナムバージョンにはリアルな雰囲気を与えている。
AR-15刻印というのも渋い。
フレームは比較的明るめのグレーで仕上げられている。ハンドガード、グリップ、ストックなどのプラパーツの黒とのコントラストが美しい。
本来のM16の特徴であるキャリングハンドルもスタイルを引き締めている。
グリップ上のセレクターでセミ・フルオートを切り替え可能。
ショートマガジンがよく似合う。
ちなみに初速測定は中古品ということもあって、かなり低め。新品であれば、バレルの長さもあるので、85~89m/sくらいは出ると思う。
レシーバー右側面。ベトナムバージョンといっても定義があいまいなのだが、空軍用M602というよりは、陸軍用XM16E1に近いスタイル。E602にはボルトフォアードアシストノブが無く、XM16E1にはある。ただしXM16E1のフラッシュハイダーはバードケージタイプが主流。もしかしたらチューリップ型ハイダー装着のものも初期の頃に生産されたかもしれない。
ベトナムバージョンの外見上の特徴のひとつである三叉のチューリップ型フラッシュハイダー。ハイダーは固定されていて取り外すことは出来ない。この鋭く尖ったデザインは大好きなのだが、ジャングルの多いベトナムではこれがブッシュに引っかかるとの理由で、後にバードケージタイプフラッシュハイダーに改修される。ハイダー、フロントアウターバレル、フロントサイトポストは亜鉛ダイキャスト製で耐久性は抜群。
このベトナムバージョンはマイナーチェンジ前の旧型なので、グリップ内にはEG560モーターを内蔵する。グリップ底板も樹脂製だ。
M16A2系のグリップと違い、フィンガーチャンネルはない。
このグリップ、まるまる太ったEG560モーター内蔵だけあって、EG700モーター用のグリップよりかなり太い。特にグリップ前面が角ばっていて握りにくく感じる。
このグリップが「マルイのM16グリップは太い」という悪評を広めてしまったが、2000年4月にマイナーチェンジを受け、これよりもハイトルクで薄型のEG700モーターに変更された。
それに伴ってグリップもこれより薄いものになっている。
東京マルイからオプションパーツとしてEG700換装キットも発売されているが、今ではほとんどショップで見かけることもない。
エジェクションポートカバーはA2系と違い、閉まる方向にテンションがかかっている。
爪先でカバーをこじ開けると、固定されたシルバーのダミーボルトモールドが現れる。
ボルト前方に可変ホップアップ調節用のダイアルがある。
M16A1と同様の三角断面の特徴的なハンドガード。左右合わせになっており、ハンドガードリングを手前に引いて取り外すことが出来る。放熱孔から見えるガスチューブもリアルに再現されている。このハンドガード、個人的には握りやすいので好み。フロントサイトのピンがA2にくらべ低くてちょっと狙いにくい。
ハンドガードを取り外すと金属チューブ製の太いアウターバレルがみえる。実銃同様に再現されたガスチューブはハンドガードリングを貫通してフレームにはまっている。このアウターバレルがフレームにガッチリ固定されていて意外に剛性が高い。A2より剛性が高く感じる。
ボルトフォアードアシストノブはL字型タイプ。
プラ製のダミーながら押し込むと可動する。
亜鉛ダイキャスト製のチャージングハンドルはボルトカバーと連動していないが、引くことは出来る。
リアサイトはL字型ピープ式。
遠近の距離に応じて2種類のピープの大きさを変更でき、右側面のダイヤルで左右調整が可能。
ストックはA1系のものでA2の固定ストックよりも1インチほど短い。これが自分的には最も構えやすい長さだと思う。
ベトナム戦争当時、アジア人にも扱いやすい小型のライフルとして、南ベトナム軍に供給された。
バット部はA1とは異なり、クリーニングキット収納の蓋は無く、ゴムが張られていて、下方にスライドさせると取り外すことができ、バッテリーを収納できる。
ストック内にラージバッテリーを収納できる。ミニバッテリー用の変換コネクタを使えはミニバッテリーも収納可能。
重量を抑えたいユーザーは社外品の大容量ニッケル水素ミニバッテリーを接続しても良い。
マガジンは最初から190連のゼンマイ給弾式、多弾数マガジンが同梱される。
上部の蓋を開けてBB弾をジャラジャラと流し込み、底部のネジをギリギリと巻くお馴染みのマガジン。
スチールプレスのアウターシェルで耐久性とリアルさを備える。
現在ではスプリング給弾の80連マガジンもオプションとして発売されている。
イーグルフォースのRC1500SCTニッカドラージバッテリーを装着しての総重量は2,895g。
ベトナムバージョンの場合、光学照準機器をつける雰囲気でもないので、このまま使用するとして重くもなく、かといって軽くもなく、というところか。
バッテリーを入れると前後の重量バランスもよく、重さをそれほど感じない。
毎年夏になると、なぜかベトナムスタイルでゲームがしたくなる。G&Pあたりのフルメタルカスタムもあるが高価だし、雰囲気に浸るならばマルイ純正でも十分だ。アホカリプスなどのミリタリーヒストリカルイベントに参加するのにも無くてはならない存在。フルサイズのM16というとハンドガードギシギシ、首回りグラグラのイメージかと思いきや、中古品でも剛性も予想以上に高く、しっかりしているのには驚いた。エジェクションポートカバーがチャージングハンドルに連動して開かないのでホップ調整がちょっと面倒だが、頻繁にいじる部分でもないしそれほど気にならない。ベトナムスタイルでいくならば是非所有しておきたい一丁だ。