EMG ガスガン KNIGHT'S PDW M2
レポート:戸井 源太郎
今回のレビューは2014年に設立されたアメリカのブランド、EMGのKNIGHT’S PDW M2ガスブローバックを紹介しましょう。EMGはアメリカのトイガンディストリビューターであるEvikeのトイガン製造部門、Evike Manufacturing Groupの略です。本商品には台湾製を示す「MADE IN TAIWAN」のシールが貼られており、私がみた限り、WE-TECH製のOEMだと思われます。
WE-TECHでは7~8年前からガスブローバックでPDWをラインナップしています。その間にバージョンアップもしており、現在はGen.3になっているとのことです。
しかもこのモデルはうれしいことにナイツ・アーマメント社(Knight's Armament Company=KAC)の正式ライセンスモデルです!
個人的にもPDWはコンパクトでカッコイイし、興味もあったので、その性能とやらは、いかがなものか実際に確かめてみたいと思います。
PDWはKACが戦闘地域の後方部隊や非戦闘員の護身用に開発されたライフルです。
M4に似たスタイルですが、一回りコンパクトで、折り畳みストックとなっています。
2006年のNDIA小火器シンポジウムで正式に発表され、その後、SHOT SHOWでも公開されました。
特徴はM4の5.56mmX45弾ではなく、このために開発された6mmX35弾を使用します。この弾はエアソフトガン化を考慮して...ではなく(笑)、拳銃以上ライフル未満、有効射程距離は200~300mを想定して開発されました。
作動方式はガスオペレーションのAKに近いロータリーボルト方式です。反動もM4と比べて50%も低減しており、撃ちやすくなっているそうです。
しかし、新たな潮流になることはできずに試作だけで終わったようです。
さすがに軍・法執行機関も新規の銃、それに弾も新調となると予算の問題があるのでしょう。
世界的に、このPDWにしてもSR-47にしてもKACで試作のみに終わった銃の人気があるというのはおもしろいですよね。
それではEMGのPDWを見ていきましょう。
■スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||
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EMGのPDWは、主要パーツは全てアルミ製でサンドブラストされたようなフレームは非常にリアルです。またバレル長はロング(10インチ)とショート(8インチ)の2種がラインナップしています。レビューするのは10インチバレルになります。
EMGのモデルではハンドガードがKEYMODになっていますが、KACの実銃に存在しないと思います。しかし、そこはトイガンなので、自由な発想でよいのではないでしょうか。
パッケージのデザインはシンプルですが「KNIGHT’S」を全面にアピールしています。箱には「EMG」の表記がなく、「KNIGHT’S AIRSOFT」なっていて、Knight’s Armament Airsoft(KAA)と、EMGによるダブルブランドで販売されています。もちろん、本モデルはKAC正式ライセンスを取得したオフィシャルガスブローバックガンです。
銃本体はパルプ製の型で保護されています。パッケージサイズは縦27×横82.5×高9cmとコンパクトです。
内容物には、BBローダーと「KNIGHT’S」の正式ライセンスを証明するカード2枚が同封されています。
取扱説明書の類は付属していませんでした。
各パーツの構成、位置はM4と同じなため、このPDWの操作のために新たな訓練の必要がないという利点があります。フレーム左側のハウジングには刻印はありません。右側のハウジングにはKNIGHT’Sのロゴが刻印されています。
マガジンキャッチはアンビ仕様です。もちろんボルトストップもライブです。
右ハウジングにはKNIGHT’Sのロゴがレーザー刻印されています。その左に見えるピンはストックを折り畳んだ時のロックになります。
セレクターもアンビ仕様となっています。右側のセレクターは射撃時に指が干渉しないようレバーが抉られています。
トリガーガードもナイツ仕様になっています。
グリップはM4の物に比べて少し短めのPDW用オリジナルです。グリップパネルは特徴的なボールカット、中央にはロゴ入りメダリオンがはめ込まれています。ガスブローバックなので、グリップ内は空洞となっています。
アッパーレシーバーと一体型のハンドガードなので剛性は高く、また左右と下面はKEYMODとなっています。ただし実銃にKEYMODモデルは存在しないかと思います。
PDWは一体型のレシーバーなので、トップレールに繋ぎ目はありません。レール部は軽量化のためか、真ん中が丸く滑らかに肉抜き加工されています。
フラッシュハイダーはKACのInconnel Flash Hiderを装備し、バレルもボール型に綺麗に肉抜きされており、PDWの特徴となっています。
脱着可能なKACのフリップアップフロントサイトが標準装備されています。
リアサイトはレール付きKACのフリップアップが標準装備しています。このリアサイトはPDW用みたいですが、ピカティニーレールであれば、どの銃にも装着できます。
チャージングハンドルも細かいところの形は違いますが、仕様はM4とほぼ同じものです。
可変ホップダイヤルはエジェクションポート内、バレル基部のチェンバー部にドラム式を搭載しています。スムーズに調節できますが、元々ホップはかなり強めになっています。
シンプルな折り畳み式のパイプストックです。アルミ製でガタつきは一切ありません。
ストック基部の半円形がロック解除ボタンです。これを押しながらストックを右側に折り畳みます。またレシーバーエンドの左と後ろにはQDスイベルのアクセスポイントがあります。
ストックを折り畳むことで、さらにコンパクトになります。ストックを折りたたんだままでもトリガーには干渉せずに射撃可能です。
先に説明したハウジング左にあったピンにストックを固定します。
M4と同じく、1本を抜けば、テイクダウンができます。ピンは脱落防止ピンがありますので、紛失する心配はありません。
テイクダウンすれば、ボルトが取り出せます。このあたりはガスブローバックならではリアルな構造がなせる技です。
ボルトとリコイルスプリングの形状はM4とは全く違うものです。メカ的には、PDWはAKに近い構造です。ガスブローバックでもよく再現しています。
ボルトの裏側です。ボルトもメタル製で重量は231gです。ノズルは樹脂製となっています。
ハンマー周りもリアルでよくできています。ハンマーはローラー付きで、ボルト後退時のフリクションを低減します。
本来、PDWはプラ製のワッフルパターンマガジンですが、EMGのPDWにはM4と同じ形状のマガジンが付属しています。装弾数は32発、重量は369gです。ガスの注入は海外製マガジンでよくみられるように、なんの反応もなく、ガスが入っているのかよくわかりません。
マガジンは空撃ちモードとボルトストップモードをレバーで選択できます。ボルトストップモードの小さなスイッチがみえます。
実射テスト
リアルで美しく仕上がっているEMG KNIGHT’S PDW M2ですが、そのエアソフトガンとしての性能はどうか? いつもどおり実射テストを敢行しました。
使用BB弾は、いつもどおり東京マルイのベアリングバイオ0.2gBBです。
その弾で試射してみたところ...ホップを最弱にしても、いわゆる鬼ホップです。25mを超えたあたりからBB弾がほぼ90°で急上昇です...これではテストになりません。
ハイパー道楽でのレビューでは通常、東京マルイのベアリングバイオBB弾の0.2gに統一しています。そのため、困ったことに、他のBB弾は持ち合わせておらず、一旦テストを中止して出直すことになりました。
このEMG KNIGHT’S PDW M2に限っては、例外的にG&GのバイオBB弾 0.28gでテストしたことをお断りします。
ちなみにG&GバイオBB弾 0.28gでは、平均初速は80.82m/sで0.91Jでした。
前のテスト時に0.2gBBでの鬼ホップ弾道だったこともあり、今回は距離30mでテストしてみました。0.28gBB弾で撃ってみたところ、結構、弾道は安定し、まっすぐ飛んでくれます。それでもホップはほんのわずかにしかかけていません。
距離30m、セミオートで射撃をすると、ほぼ狙ったところにヒットします。距離40mでもボディにヒットできる精度はありますが、たまにフライヤーがでますね。
リコイルはガツンガツンきて、よい感じです。
フルオートでも2、3発の短いバーストでは結構弾道は纏まっており、小気味よいリコイルですが、フルオートで10発以上撃つと途端に安定しなくなります。撃ち続けるとサイクルは乱れるし、後半は生ガスを吹き、ガス圧が低下して、弾道も乱れます。というか飛びません。
9月中旬の気温25℃でもマガジン1本をフルオートで撃ち切れませんでした。
セミオートでも速射で35発連続射撃は少々息が上がりかけで、後半はリコイルも弱くなっていきます。速射しなければ、息切れなく撃ち切れ、ボルトストップもちゃんとかかります。
海外メーカーも最近、トイガンの製作技術は年々向上してきており、特に電動ガンの精度は日本製に迫るほどになってきています。ガスガンも目覚ましい発展を遂げていますが、そのパワーソースがCO2だったり、プロパンだったりと日本で一般的なフロン134aより高圧なものを使用するため、日本でそのまま使用するのには問題があるものが多いです。このEMGのKNIGHT’S PDW M2はまさにそんな症状だという印象を受けました。おそらく製品自体は問題ないのですが、フロン134aでは、性能が発揮しきれないのでしょう。
こういった海外仕様のガスガンを何の調整もなく販売してしまう業者がいることも事実です。こうしたトラブルが発生した場合でもサポート受けられることは稀で、購入者は自力で解決しなくてはなりません。
国内でも海外製ガスブローバックガン用のホップパッキンやバルブ用のスプリングなど各種パーツが販売されているので、日本でもガシガシ動くようにカスタムすることも可能でしょう。しかしそれなりに知識と技術も必要となります。
フルメタルで質感も高く、外観の完成度は文句なしで合格点に達しています。部屋に飾っておいても絵になりますし、毎日、手にとって愛でたい気分になるほどです。メカも実銃に近い構造をしており、カチャカチャと意味もなく分解もしたくなります。
しかし実射性能は日本のパワーソースでは現状、真価を発揮しきれていません。製造メーカーで日本対応モデルを作っていただきたいところですが、現在、日本は世界の潮流から完全に外れており、日本のためだけに対応するのもなかなか難しそうです。
撮影協力:ビレッジ2
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