台湾のトイガンメーカー、VFC(VegaForceCampany)の電動ガン、KAC PDWを借りることができたのでレビュー。
実銃のKAC PDWはアメリカのナイツ・アーマメント社(Knight's Armament Company=KAC)が2006年に開発したパーソナル・ディフェンス・ウェポン(PDW)だ。
PDWは軍の後方部隊やパイロット、車両操縦士などの軽量&コンパクトな自衛用武器として、それまでの拳銃やサブマシンガンに代わる新カテゴリーとして1990年代より開発されはじめた。ベルギーのファブリック・ナショナル(FN)社のP90をはじめ、ドイツH&K社のMP7A1などがその代表例といえるだろう。
拳銃弾を使用するサブマシンガンの有効射程はせいぜい100m以下とされており、PDWには200~300mでの交戦距離に対応できるだけの飛距離、命中精度、威力が求められた。PDWの特徴としてボトルネックのあるライフル弾を小型化したような専用の弾薬を使用するが、KAC PDWも6mm×35弾という専用弾を使用する。これは現在西側諸国で主流のアサルトライフル弾である5.56mm×45 NATO弾よりもカートリッジ長が1cm短い。また、5.56mmNATO弾より口径が大きい6mmで、弾頭重量も65グレインとわずかに重い(5.56mmNATOはSS109で62グレイン)。マズルエナジーは848ft.lbsと、5.56mmx45 NATO弾を10インチバレルから発射したときと同等の威力がある。作動方式はガスオペレーションによるAK47タイプのロータリーボルトを採用している。
以下は2009年1月に米国フロリダ州オーランドで開催されたショットショー2009でのナイツ社のPDW解説。
VFC 電動ガン KAC PDW 10" スペック | |||||||||||||
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さて、話はVFCの電動ガンに戻って、2006年に実銃が発表されて2008年にははやくもモデルアップされるこの開発スピードは流石。香港や台湾のトイガンメーカーの開発の速さと、ユーザーのニーズを上手く捉えたモデルラインアップの充実さは日本のメーカーにも見習ってもらいたいところ。
VFCのKAC PDWはもともとコンバージョンキットで発売されたが、マルイのメカボックスが組み込まれてコンプリートで販売されているものも多い。
一見してM4カービンのシルエットを踏襲したスタイルだが、リコイルスプリングをレシーバー内に配置したことでリコイルバッファチューブはなくなり、フォールディングストックが装備できるようになった。このあたりはFN SCARやMASADAライフルなど、最新アサルトライフルの作法に則っている。ストック折りたたみ時の全長はわずか491mm。ショートバレルの8インチモデルならば442mmだ。ストックを伸ばしても718mm(8インチは665mm)と非常にコンパクト。
アッパーレシーバーはCNC加工されたアルミ製。マガジンキャッチは左側面にもあるアンビタイプ。梨地加工のしっとりとした手触りが心地よい。セレクターにはKACと刻印があり芸が細かい。セレクターの操作感も重すぎず軽すぎず、クリック感も程よくあり絶妙。マガジンハウジングには米政府機関のTactical Support Work Group=TSWGの刻印がある。
レシーバー右側面。左右どちらからでも操作できるアンビセレクター、そしてトリガーピン、ハンマーピンにはアンチローテーションリンクを装備。
金属製のアウターバレルは軽量化と、冷却効果を高めるためにディンプル加工された実銃のバレルをリアルに再現している。
独特の細かいスリットの入ったスチール製フラッシュハイダー。ハイダーは取り外すことができ、M14逆ネジ仕様となる。
アウターバレルはハンドガードに接触しないフリーフロート構造となっている。
またアウターバレル上部には2本のガスブロックとデュアル・ショートストローク・ガスピストンがリアルに再現されている。
ナイツ社といえばあのM4カービンのRASを開発した会社。ピカティニー規格の4面RASを装備。ハンドガード部分はアッパーレシーバーと一体であり、剛性感は抜群。
ハンドガード左の穴からバッテリー接続用のコードとミニコネクタが出ている。
付属のバーティカルフォアグリップもM4カービン用に比べて短い。
フロントサイトはレール前部に装着されたフリップアップ式。M4同様にフロントサイトピンを上下に調整可能。
左側面のネジを緩めればレールから取り外すこともできる。
チャージングハンドルを引くと連動してボルトが後退、ホップアップ調節ダイアルにアクセスできる。引くことができるストロークは半分程度だが、この時点でボルトにロックがかかり、レシーバー左側面のボルトリリースボタンを押すことでロックが解除、ボルトがスプリングテンションでシャコンと前進する。
ホップアップ調節ダイアルは東京マルイのスタンダードM4カービン系と同様。というか、Ver.2メカボックスが入っているのだから当然か。
リアサイトもフリップアップ式。ウィンデージダイアルで左右に調節可能だ。リアサイト自体にマウントベースが付いているのが面白い。もちろん右側の2本のネジを緩めれば取り外すこともできる。
フォールディングストック。矢印のボタンを押してロックを解除し右側面へとスイングさせる。
ストックパイプも基部もすべて金属製でガタつきは皆無。折りたたみ時は矢印の部分でロックがかかり、不用意にストックがフラフラするようなこともない。
レシーバー後部にはQDスリングスイベルが付く。矢印のボタンを押すことで取り外しでき、左側面からレシーバー後部のアタッチポイントへ付け替え可能。ストックの後部にも取り付け用の穴がある。
KAC PDWの唯一の気になる点はグリップ。実銃がそうだから仕方ないが、つるっとしたストレートグリップでスッぽ抜けそうになる。このあたり、なにか試作モデル感が漂う。もう少し洗練された流線型のフィンガー&ハンドレストのある形状が握りやすくてよいと思うのだが。あるいはHOGUEのHANDALLラバーグリップを着けてもよいかも。
マガジンはプラ製で、120連のスプリング給弾式。ナイツ社のシルクプリントが入る。
実際に弾をこめると100発程度しか入らなかった。大きさはM4のものと同じくらいだが、エッジがラウンドしており、M4のマガジンよりも小さく見える。
なお、VFCのKAC PDWはスタンダード電動ガンのM4マガジンも共用できる。
VFCのAN/PEQ-15 IRサイトのレプリカバッテリー(8.4V 1500mAh)と、HurricanE製のTrijicon Tri-powerレプリカドットサイトを搭載。コンパクトさを生かすなら冒頭のショットショー2009動画にもあるAimpointのT-1ドットサイトもよい。
実測重量は本体とマガジンで2,320g。
レールカバー、バーティカルフォアグリップを装着すると2,400g。
AN/PEQ-15バッテリーとTrijicon Tri-powerレプリカドットサイトを装着しても、わずか2,900gと軽量。アルミレシーバー装着とは思えない軽さだ。
M4カービンとの比較。10.5インチバレルのM4と比べてもレールが短く、取り回ししやすい。
元祖PDW、サブマシンガンのMP5KA4 PDWとの比較。レシーバーがぼってりしたMP5に比べKAC PDWはスリムで扱いやすい。
KSCのMP7A1と比較。さすがに全長はMP7に分があるが、オーソドックスなアサルトライフルレイアウトのKAC PDWはマガジンチェンジ、セレクター操作などあらゆるオペレーションがM4カービンライクであり、M4に慣れた身としてはとても扱いやすく感じる。
PDWの雄であるP90との比較。やはりぼってり感漂うP90に対してスリムなKAC PDW。ブルパップのP90には全長の短さでは及ばないが。
さて、実射性能だが、今回借りたこのVFC製KAC PDW、調子が悪く、まともに弾が飛ばない。したがって、実射レビューは無し。もともとコンバージョンキットなのだから、内部を完全にバラして必要な調整を行えばまともになるだろう。
剛性も高く、外観からするとかなり出来栄えは良く、質感、重量感、荒々しさなど造詣のバランスがとてもよい。思わず欲しくなる。
これで内部がキッチリ動いてくれたらもうこれはゲームでのメインウエポンとしてはかなり秀逸。コレクションとしてもおススメ。価格は日本限定のDXセットが6万円前後とちょっと高価だがそれなりの質感はある。
最近だとD-BOYS製のKAC PDWがメカボックス込みのコンプリートモデルとして2~3万円程度で販売されている。内部ユニットの完成度が気になるところだが、KAC PDWは内部をフルチューンしてでも使いたくなる、そんな魅力を持った軽量、コンパクトなウエポンだ。東京マルイがモデルアップしないかなぁ、なんて。