レプリカ ワルサーP88
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ワルサーのオートマチックピストルといえば、何はなくともまずはP38、そしてPPにPPK(PPK/S)といったところで、P5やましてP88となると、不思議なことにガンファンの興味もなぜかパッタリと途切れてしまう。
思うにこれは、映画や日本の商業誌の影響が大きいはずだが、そもそも、実銃にこれといってあまり特徴がないのも原因のひとつだろう。
だからという訳ではないだろうが、レプリカのワルサーP88もエアガンとしては大きな特徴がなく、あまり遊びの要素を感じない。構造としてはごく普通の、インナーバレル後退式の固定スライドガスガンである。
フレームは左右二分割のモナカ形式、テイクダウンレバーやマガジンキャッチはダミーで、かろうじてワリバシマガジンに金属製のリップが付いているところがセールスポイントだろうか。価格がもう少し安ければ、入門用エアガンとしてもっとヒットしたかもしれない。
レプリカというのは、もともとトイガンメーカーではなく、かつて上野にあったマルシン系列の卸売り業者だ。店舗での小売りもしていて、日本のモデルガン創成期をささえたショップのひとつだった。
余談だが、ボクは今から25年以上前、アメ横にあったマルゴーでアルバイトをしていたことがある。その頃はマルシン製品の仕入れのため、レプリカには何度となく足を運んだものだ。
当時、アメ横のガンショップは高架下にホビース商会、CMC、マルゴー、少し離れたところにニューMGCがあった。レプリカはもっと秋葉原寄りの場所にあり、スタッフ全員がとても真面目で、店内がいつもピリッとした雰囲気だったのを覚えている。
トイガンの納品の際、伝票を見ながら現物を確認するのだが、スタッフが一度数えた後、「店長、ダブルチェックお願いします!」と言うと店長が出て来て、シーンとした雰囲気の中、おもむろにもういちど確認作業がはじまる、というやり方がとても印象的だった。
ワルサーP88を見ていて、ボクがあまり遊びの要素を感じないのは、そんなレプリカの真面目な仕事ぶりが脳裏によみがえって来るからなのかもしれない。
本エアガンはメタルフィニッシュ。通常のクロームメッキより手間がかかるため、最近はどこのメーカーもやらなくなってしまったようだ。
右側面は箱の中でずっとオイルが付着していたせいか、全体的に変色してしまっている。ケースハードゥンのようでキレイだが。ヘタに磨いてしまうとニッケルメッキの下地が出てしまう。
フロント部分の構造は独特で、マズルからスライド先端下部までが一体の亜鉛ダイキャスト製となっており、モナカフレームの固定とフロント側のウエイトを兼ねている。インナーバレルはテーパードクラウン加工がほどこされた真鍮製。
撃発メカはシングル&ダブルアクション。ファイアリングピンはダミーで、ハンマーの下のほうに「ガスコッキング」と呼ばれるアームパーツがあり、グリップ内にあるガスタンク上部の解放バルブを叩く仕組み。リアサイトのネジは一体成形のダミー。
デコッキングレバーがセフティになっている。他のレバーやボタン類はすべてダミー。
フレームは左右二分割のモナカ構造で、側面のトリガーバーまで一体成形だ。
マガジンは強く引くだけで抜ける構造。ボトムプレートの裏側にガス注入バルブがある。
グリップ内にガスタンクがあるため、マガジンはどうしても細くなってしまう。「ワリバシマガジン」という言葉も今や死語かもしれない。
金属製のリップでBB弾はしっかりと保持されるため、不用意に飛び出てくることはない。
パッケージの写真とはだいぶ色味が違って見える。レプリカ(マルシン)のメタルフィニッシュは茶色っぽいのが特徴だった。1992年には同シリーズのガバメントと共にヘビーウェイト樹脂モデルもラインアップされた。
本エアガンはマルシン工業が製造しレプリカが販売した。平成時代の製品ではあるが、最後のページのイラストにはかなり昭和の雰囲気が漂っている。マニュアル.PDF (3.8MB)
DATA
発売年 | 1990年新春 (スタンダード) 1990年春 (ニッケル/メタルフィニッシュ) 1992年初夏 (ヘビーウェイトモデル) |
発売時価格 | ¥4,500 (スタンダード) ¥5,500 (ニッケルフィニッシュ) ¥5,500 (メタルフィニッシュ) ¥4,980 (ヘビーウェイトモデル) |
全長 | 実測 186mm |
重量 | 実測 471g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | リキッドチャージ式固定スライドガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 14発 |
平均初速 | 65.8m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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