マルコシ ワルサー P5
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
思えばワルサー P5という拳銃は、日本のトイガンシーンにおいて常に不遇の存在だったと言えるのではないだろうか。最初にトイガン化の計画が持ち上がったのはかれこれもう40年前、1980年にまで遡る。
当時、モデルガンメーカーとして最盛期を迎えていたMGCが、創立20周年記念企画「ニューモデル5」と銘打って、5機種のモデルガンの制作発表を行った。その中に含まれていたのがワルサーP5だったのだ。
他にはニューガバメント(GM5)、S&W M-39、イングラム M11、ニューレミントン M-31RSがラインナップされており、これらは順次発売されたが、結局、ワルサー P5だけは最後まで世に出ることはなかった。どうやら構造的に難点が多く、モデルガン化には問題が多かったそうだ。
その数年後、マツシロからワルサー P5のモデルガンが発売されたものの、いわゆる指(タニオ)アクションでスライドを作動させるタイプだったため、リアルな製品を見慣れたガンファンには受け入れられず、すぐに製造中止。そして次に我々の前に姿を現したのが、一部パーツにマツシロと同じ金型を使用したと思われる、このマルコシ製ワルサーP5だったというわけだ。
しかし、業界の流れはガスブローバック化へと向いつつあり、ディティールや精度の面でも、MGCなどリアル指向の製品には一歩及ばず、そもそも、ワルサーP5という機種選定そのものがすでに時代遅れだったと言わざるを得ない。
とはいえ、あのMGCが断念したワルサー P5を、最後まであきらめずトイガン化し続けたマツシロ~マルコシの情熱には脱帽だ。今度こそ完全な形でのトイガン化、例えばガスブローバックのワルサーP5を見てみたいとも思うのだが、それはかなわぬ夢なのだろうか…。
名銃ワルサーP38をコンパクト化し、フルカバードスライドによって洗練させたのがP5だ。本文中にもある通りマツシロ製モデルガンの型を引き継いでいるため、全体的なフォルムはとてもよく出来ている。このルーツのずっと先に、幻となったMGCのモデルガンがあったのかどうかは神のみぞ知る、なのである。
バレルとスライドの複雑な噛み合わせがちゃんと再現されているが、前方からプラスネジが突き刺さっているのが残念だ。インナーバレルは真鍮製。
グリップ内部から上にのびたガンスタンクのバルブをハンマーが直接叩く。シンプルで効率の良いデザインだが、後方からの眺めは興ざめだ。
テイクダウンレバーやバレルピンはモールドのダミーだが、サムセフティはしっかりと作動する。
フレームは左右分割のモナカ構造。当時、低価格帯のエアガンはこれが普通だった。
ガスはグリップ底部からリキッドチャージする。マニュアルによればガスタンクが肉厚ダイキャスト製のため連射が安定とあるが、確かに低価格モデルとしてはセールスポイントだったのかもしれない。
マガジンはワリバシタイプ。フォロアーを引き下げロックしてからBB弾を装填するが、リップから完全に飛び出す構造のため全弾発射前にマガジンを抜くとBB弾がこぼれ落ちてしまう。
シンプルなパッケージ。上箱には堂々とワルサーの文字があるが、今ならいろいろと問題になるだろう。
シルバーカスタムは数が少なかったようだが、メッキの仕上げはとてもキレイで好評だった。またマルコシは当時既に旧タカトク製品の販売を引き継いでおり、スーパー9シリーズ、スーパーオートマグなどもラインアップしていた。 マニュアル.PDF (6.1MB)
DATA
発売年 | 1989年夏 |
発売時価格 | ¥2,980 (ブラック) ¥3,980 (シルバーカスタム) |
全長 | 実測 183mm |
重量 | 実測 240g |
バレル長 | 78mm |
発射方式 | スライド固定式リキッドチャージガス |
使用弾 | 6mm 専用弾 |
装弾数 | 12発 |
平均初速 | 42.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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