マルゼン ワルサーP38 (シングルショット)
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
マークスマンガバメントからはじまったマルゼンの単発エアコッキングハンドガンシリーズ。その最後発となったのが、今回紹介するワルサーP38だ。
このシリーズはティップアップする短いバレルをそなえていたが、本銃では、バレル付け根部分から独立した単発マガジンがせり上がる仕組みになっている。
デザイン上、バレルが露出したワルサーP38ではこうするしかなかったのだろうが、バレルが固定式となったことで、命中精度向上という副産物が出来たのは興味深いところだ。
とはいえ、すさまじく固いピストンスプリングと重すぎるトリガープル、という構造上の欠点は変わらず踏襲されているため、結果的にはほとんど狙ったところに当たらない。
前作のS&W M59とは違い、BB弾仕様になったのは特筆すべきポイントだが、まだまだ撃って楽しめるレベルにはほど遠い実射性能だったといえる。
それでもこのシリーズが一定のヒットを続けたのは、エアガンとしては実銃とほぼ同じサイズが実現出来た、というところにつきるだろう。
それまで、ピストルタイプのエアガンといえばどれも超オーバーサイズの製品ばかりで、ホルスターに入れることさへままならない、バカでかいシロモノばかりだったのだ。
多少のディフォルメがあっても、単発でも、そしてあまり当たらなくても、ふつうにハンドガンサイズで弾が撃てるというだけで、じゅうぶん価値のある時代だったのである。
なお、本銃は同シリーズのマークスマンガバメントやM59とは違い、チヨダに販売が受け継がれることはなかった。
ハンマーがないことをのぞけば、全体的なフォルムはまさしくワルサーP38そのものだ。若干オーバーサイズではあったが、当時としてはかなりリアルな出来映えだった。
約10mm以上ある大迫力のマズル。奥にインナーバレルがあるが、中心より下に偏心している。
サイトは前後とも固定。スライドトップのシボ加工が昭和を感じさせる。なぜか昔のエアガンはサテンフィニッシュではなくシボ加工が多かった。
スライド側面のセフティレバーはダミー。刻印(プリント)が若干大きく、全体的に大味となっているのは残念。
実際のセフティはここ。トリガーをロックする仕組みのため、どうしてもトリガーの近くに設置せざるを得ない。
フレームはモナカ構造。アウターバレルまで一体で二分割になっているのがわかる。
なんと、グリップまでフレームと一体成形だ。ここはせめてマガジンボトムの再現がほしかったところ。
テイクダウンラッチを押し下げるとバレル根元からチャンバーがせり上がる。この構造により、バレル固定式が可能となった。
発砲スチロールと紙箱というごく一般的なパッケージ。このあたりの製品から、マルゼンぽいデザインを感じる。
同シリーズのM59では「SPORTS AIR GUN」と表記されていたが、P38のマニュアルには「エアーソフトガン」と書かれている。 マニュアルPDF (15MB)
DATA
発売年 | 1983年 |
発売時価格 | ¥4,600 |
全長 | 実測 235mm |
重量 | 実測 502g |
バレル長 | -mm |
発射方式 | プッシュ式エアコッキング |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 1発 |
平均初速 | 50.2m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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